コンピエニュの戦い・4
「ほ、報告いたします! わ、我が軍のスケルトンは新手の魔法により壊滅。攻撃は、失敗いたしました!」
顔面蒼白になった輜重兵の報告に参謀の誰もが息を飲む。
そんな浮足立つ司令部の空気を変えるように老オークの参謀長はかつての主人に向き直る。
「スケルトンによる攻撃は不首尾に終わりましたが、特火兵による準備砲撃の効果は高いものと推察いたしますが?」
「爺よ。まさか臆したと思うてか?」
オークとは思えぬ端正な顔にニヤリと攻撃的な笑みを浮かべ、参謀諸氏を見渡す。
オルク王国にはカレンデュラという凶悪なオークがいたため影に隠れてしまっていたが、彼もまたその傍系に相応しい旺盛な攻撃精神を宿していた。
その証拠にウルクラビュリントを奪還しようと侵攻してきたガリヌス公爵軍に対し、彼は数的劣勢にありながらも戦力集中した右翼を指揮してその突破を成功に導いた実績がある。
「輜重兵を退避させろ。彼らは義務を果たした。次は銃兵に義務を果たしてもらおう」
「よろしいので? 敵の新魔法のこともありますが」
「敵の新魔法は恐らく対スケルトン用のものであろう。もし生者にも効果があるのなら友軍のドラゴニュート騎兵にも損害が出ているはずだ」
参謀長のわざとらしい質問にエルヴは丁寧に答える。
彼は老オークの期待に応えて誰もが疑問に思う不安を彼は堂々たる口調で粉砕してみせた。
もちろん未知の魔法に怯える気持ちがエルヴにないといえば嘘になる。
だが立ち止まったところで勝利はない以上、攻撃によって活路を見出す他ない。なにより北部軍にはまだ戦力に余裕がある。
例え一個連隊と引き換えになっても未知の魔法を解明できるのであれば安いものと彼は判断したのだ。
故に彼は参謀達に芽吹いた勇気を補強してやる。
「ふん、敵が如何に新たな魔法を弄しようが全ては悪あがきにすぎん。大勢はかわりない」
そもそも損害を受けたのは備品のスケルトンであり、農園への攻撃に割り当てられた一個連隊――二千名は未だ無傷のままだ。特火兵にも損害はなく、装備を維持している。
「なにより敵が強大であっても全て叩き潰す。それこそ我らがオルク王国第二師団の流儀である。そうだろう、えぇ?」
「そうだ! 師団長閣下のおっしゃる通りだ!」
「不退転! 我が師団に後退の文字はなし!」
「師団長閣下! 御命令を! 我らに攻撃の御命令をッ!!」
それは第二師団が息を吹き返した瞬間だった。
確かに人間には幾度と苦汁を舐めさせられてきた。特にウルクラビュリントを人間に奪われた際はオルク王国の行く末に誰もが不安を覚えていた。
だが今や失われた故郷を取り戻し、ガリアへ逆侵攻をする力を得たのだと誰もが自信を持っていた。
それをエルヴは思い出させると力強く宣言した。
「改めて隷下の全部隊へ達する。所定の作戦通り断然攻撃せよ! 魔皇陛下万歳ッ!!」
美丈夫のオークが命令を発すれば、司令部に万歳三唱が轟く。
するとほどなく勇ましい信号ラッパの響きと共に前線が動き出した。
攻撃命令を受けた二千のオークは銃剣に傾き始めた陽光を映し、たったの五百二ばかりが守るちっぽけな農園に向けて進軍を始めた。
そんな戦列に対し、奴隷の少女達は懸命な反撃を試みるが――。
「っ、耳が……。みんな! 敵がくるわ! 戦って!!」
「もういや! 怖い!」
「ママ! ママ!!」
準備砲撃は物理的な効果を生み落とすことはできなかったが、それでも奴隷達の精神に直撃弾を与えていた。
再びあの破壊の鉄槌が降ってくるのではないかという恐怖に塹壕から頭をあげることができない。
それでも敬愛する主人が託した燧発銃で心を支えながら健気な抵抗を試みる。
しかし先ほどと違い、どのような攻撃がくるか知ってしまったオーク達に混乱はなく、ついに燧発銃の有効射程である五十メートルまで接近を許してしまった。
「構え! 狙え! 撃て!!」
オークの指揮官がサーベルを振ると、赤い戦列が白い煙に包まれる。そこから飛び出した鉛が農園の壁や塹壕の淵を削る。
ここにきても普請によって奴隷達の被害は微々たるものだったが、いよいよその命運は尽きようとしていた。
「攻撃目標、前方の農園! 突撃にぃ! 進めッ!!」
バタバタと巨躯のオーク共が喊声と共に銃剣の切っ先を輝かせて駆けだす。線の細い奴隷達にとっては絶望の状況であろう。
そんな塹壕の中で「御主人様達が!」と悲鳴があがる。それは今まで混戦に陥っていた騎兵のうち、ガリア王国の騎士達が丘に撤退を始めたところだった。
その様を見ていたハーフエルフの奴隷少女は唇を噛みしめ、御主人様がこの農園の守備を自分に任せてくれた意味を考える。
「御主人様は一分でも、一秒でも長くこの農園を私達が守ることを望まれている……。なら、撤退よ! 農園に撤退!」
「え? 貴女、なにをいって――!? 逃げるということ!?」
「違うわ! この穴の中にいても幾ばくも時を稼げないわ。ここを放棄して農園に立て籠もりましょう!」
ハーフエルフの少女はこの行為を死守のための転進と心から信じていた。
そのため主人を裏切ると一瞬でも思わないため奴隷の首輪は沈黙したままだ。
周囲の奴隷達もその言葉を信じようとするが、心のどこかで逃げることにあたるのではという想いがかすめ、塹壕から出ることはできない。
「みんな! 早く!」
「だ、ダメ、いけない……! っ! か、構わずに行って」
「でも――」
「早く! でも、御主人様には、勇敢に戦ったって伝えて」
涙を流す戦友にハーフエルフの少女は立ち止まるが、早くという言葉にせかされて塹壕を離れて行く。
敵と味方の蛮声と悲鳴が交錯し、奇妙な合唱になるのを聞きつつ、彼女は最後の寄る辺である農園に向けて駆けだすのだった。
◇
銃兵の接近に気づいたガリア王国軍の騎兵隊がにわかに浮足立つ。
そんな中、オドルは愛槍――ロンギヌスを振るいながら【勇者】ジャンヌを探す。
すると戦場の彼方から「オドル様!」と黄金色の髪を靡かせた【勇者】が駆け寄ってきた。
「啓示です! 敵が動くと」
「ま、だろうな」
オドルは周囲に乱れる騎士達を見やり、自分達が十分時間を稼げたが自問する。
とはいえ、無我夢中の戦闘で時間の感覚は失われていたが。
「とはいえ、考えている暇はない、か。それじゃ撤退! 撤退!」
オドルは胸元に下げられた笛を吹くと、それを聞いた騎士達が馬首を返す。
とはいえ、乱戦の最中で合図が耳に入らず、ドラゴニュートと切り結ぶ騎士も多く、その撤退は三々五々としたものだった。
だが逆にそのぐずぐずな撤退劇にドラゴニュート騎兵を率いる指揮官はそれを敗走であると誤認していた。
「敵は崩れたぞ! このまま押しつぶせ!」
ガリア軍の撤退に取り残され、孤立した騎士を潰したドラゴニュート騎兵一千は素早く攻撃陣形を組み上げると、猛然と丘を目指して駆けあがる。
元来、オルク王国発祥の新式軍制よりも以前に編制されていた騎士団を母体に編制された連隊は伝統に裏打ちされた精強さと、陸戦最強種の一柱であるドラゴニュートによって構成されているとあってその衝撃力は人馬一体のセントールにも劣らぬものを発揮することができた。
「横列を崩すな!」
すでにガリア王国軍の騎兵は尻尾を巻いて逃げた後であったが、丘めがけて登りつつ彼らは密集陣形をとりながら得物であるサーベルを高らかに掲げる。
そして頂から下り坂に達した時だった。
「魔皇陛下に勝利をッ!! とつげき、い?」
眼下には予想通りガリア王国軍の主力が布陣していた。
その主力は民衆を強制徴募して作られた国民衛兵隊二万のうち予備兵力として温存されていた一万はいくつもの方陣を組みあげており、その方陣の中に先ほどまで追っていた騎兵達が入り込んでいく。
そして方陣の列の前には横一列に砲金に輝く大砲達が整列しており――。
「しまッ!?」
罠だと気づくも愛馬達はすでにトップスピードに入り、さらに下り坂という立地から加速は止められない。
そんな進退窮まったドラゴニュート騎兵に待ち構えていたガリア軍特火兵が一斉砲撃を浴びせかける。
それは不運な数騎を肉塊に変えたのみで騎馬の足を止める代物ではなかったが、今まで勝利の原動力であった大砲が自分達に牙をむいたことにドラゴニュート達は計り知れない衝撃を受けていた。
「くっ、皆! 怯むな! 怯むな!! 我に続け!」
運よく砲撃をかいくぐった指揮官が愛刀を煌かせて馬の腹を蹴る。
突撃というものは衝撃力を高めるため密集した陣形をとるためすでに馬首を返すスペースもなく、例え急停止しても後続の馬が追突されて大惨事は避けられない。かといってゆっくり止まろうものなら眼前の敵から袋叩きにあうのは目に見えている。
だから自分の運命を知りつつも彼らは突撃を続行せざるを得なかった。
そこに方陣に逃げ込んでいたオドルが叫ぶ。
「放てッ!!」
五百人で一つの方陣を組んだ国民衛兵隊が一斉射撃を敢行する。
もっとも三人に一丁の割合で配布された燧発銃の射撃密度はお世辞にも効果を生むものではなかった。
だが残りの人員が装備する長槍といった長柄武器によって槍衾を組んでいるため容易に手出しできない。
しかも、ここまで接近したことでドラゴニュート達は国民衛兵隊がその首に奴隷の首輪を嵌められていることに気がついた。
「く、くるな!」
「い、いやだ! 助けてくれ!」
「あぁ! かみさま! かみさま!!」
恐怖に顔を歪めながらも一歩も引くことができない、そんな敵兵の異様な姿を見たドラゴニュート達は戦慄を覚えていた。
そしてまごついているうちに装填を終えた燧発銃射手による攻撃で攻め寄せてきた騎兵は段々とその数を減らしていくのだった。
◇
「なんとか、防げたか」
帰趨を見守っていた本陣ではルイが安堵のため息をつく。
現状、全てが上手くいっている。
そのことに諸将も喜色に顔を緩め、勝利を祝っていた。
そのことに胸をなで下ろしていると先ほどまで騎士の指揮に当たっていた【勇者】ジャンヌとオドルが本陣を訪れた。
「ジャンヌ! オドル! ご苦労! 初戦は我らの勝利といっていい。よくやってくれた」
破顔するルイにジャンヌも嬉しそうに笑みを浮かべたが、オドルのみ表情筋が一切動いていなかった。
それに訝ったルイが彼に声をかけようとした時だった。鐘を操っていたマリアが駆け込んできた。
「大変! 農園が魔族に――」
するとオドルが弾かれたように本陣を飛び出していく。
マリアはその背中を追おうとするが、すぐに振り返って膝をつくと本陣の最上座で沈黙を保っていた父に向き直る。
「ご無礼をお許しください」
「許そう。それで、農園が危ないのか?」
「危険なほどに。すぐに援軍を送る必要があります」
「そうか、分かった。ルイ、手配せよ」
ルイはすぐに頭を垂れるといくつかの国民衛兵隊と騎士に出陣を命じにかかる。
それにマリアも加わろうとするが、ガリア王ルイ十三世はそれを遮った。
「マリア、お前は改めて話がある」
「父様?」
「先ほどのあの鐘はすごかった。朕は誇らしいぞ。ルイも、シャルロットも、朕の想像をはるかに超えてくれた。トカゲがドラゴンの子を産むとはこのことだろう」
蒼白な相貌に慈愛に満ちた笑顔を浮かべた父にマリアは首をひねる。まるで要領を得ないが一体――。
「マリア。お前の功績を以って勅令に反したあの鐘――。いや、大砲を作った工房や職人達は特別に許そう。だがお前は許さん」
「……え?」
「我が娘とて勅令への叛逆は許さん。おい、謀反人をパリシィに連行せよ」
「な、なにを!? まさかわたくしだけ戦場から逃がすおつもり――。いや、放して! 放してったら――」
マリアは駄々をこねるように口火を切るが、それを遮ったのは今までに感じたこともない大音響と地響きだった。
その衝撃でテントの柱は傾き、付近の軍馬は棹立ちになって暴れる。
思わず彼女は本陣の外に飛び出ると、そこには農園の方角から青空に向かって火柱と黒煙が浮かんでいた。
◇
大音響が響く少し前。
農園は砂糖に群がる蟻の図のような有様になっていた。十重二十重に包囲されたそこは奴隷の首輪がなくても逃げ出すことはできなかったろう。
すでに塹壕は蹂躙され、農園を囲う壁も突破され、ついに建物の一室一室を巡るという最終局面を迎えていた。
そこでハーフエルフの少女は頭から血を流しながら力無く床板が剥がされ、むき出しとなった大地に座り込み、他の傷ついた仲間を抱きしめながらその時を待っていた。
「大丈夫、大丈夫よ」
自分でも何が大丈夫なのか分からないまま、どこからともなく聞こえるすすり泣く声を慰める。
それと共に、眼前の扉が大きくたわむ。ありったけの家具でバリケードを作っていた扉も、もう役目を終えそうだ。
「私の人生もこれでお終いかぁ」
思えば親に売られ、人生の大半を奴隷として過ごしてきた。
時には自分に苦痛を与えることでしか快楽を覚えられない主人の物となり、そこで主人の気が召さなくなれば捨て値で売り払われ、そしてオドルがその手を差し伸べてくれた。
今までにない、普通の人が過ごすような幸福な時間を与えてくれた主人に、彼女は心から忠誠を誓っていた。
「優しい御主人様……。出来れば、また優しく撫でてくれたらなぁ」
エルフとの混血児だからか、射出武器系に補正を与えるスキルがあったらしく燧発銃と彼女は相性がよく、解放者の中でも随一の使い手になった。
そのためオドルからよく褒められ、そしてより長射程のライフルを託されるまでになった。
「今まで、この耳のせいで酷い目にあってきたのに、ふふ。最期にそれが誇らしくなるなんて」
薄らと笑みが浮かぶと共に、ついに扉が破壊され、憤怒の形相を浮かべたオークが乱入してきた。
「この悪魔共め! 地の底に落ち――。なにを笑っていやがる? それに、その地面から伸びた紐は――!?」
「貴方達も地の底へ一緒に逝くのよ」
ハーフエルフの少女が握るその紐が導火線であり、その先が埋没された火薬樽であることを認めたオークは憤怒から一転、顔が青くなる。
オークは慌てて燧発銃をハーフエルフの少女に撃ちかけるが、それも彼女はしっかりと火の魔法を詠唱しきった。
「こ、このッ!! お、お前達はまだ殺し足りないのか!? 悪魔! 悪魔めぇえええッ!!」
「悪魔? 違うわ。私はオドル様の奴隷よ」
瞬間、地面に埋没され、逃げ場を失くしていた火薬の力が農園を包み込んだ。
その奔流は農園の石壁を易々と破壊し、窓や天上などの抵抗の弱い箇所から溢れ、彼女達の命の輝きを見せつけるように高々と火柱を立ちのぼらせた。
その熱線と衝撃波は農園に群がっていた一個連隊のオーク達をなぎ倒し、辺り一面に極彩色な赤と緑の世界を創ってしまう。
この凄絶な自爆に北部軍は衝撃を受けていた。
北部軍司令部では慌ただしく参謀や伝令がいきかい、状況を報告してくるがそれらの情報はプルメリアの右耳から左耳にそのまま抜けてしまう。
(ここまで抵抗するか。いや、考えれば分かることだった。ガリアと我らがしているのは戦争ではなく、異種族間の生存競争だ。だから双方とも際限なく殺し合わねばならない――)
これまで目を背けてきた現実にプルメリアの喉は干上がっていた。
だが現実は彼女の精神状態を待ってはくれなかった。
「閣下! 閣下!」
「……なんだ、参謀長」
「大丈夫ですか? お顔色が」
「大事ない。それより再度、状況を報告してくれ。今度は聞く」
それにオークの参謀長は頷く。
すでに中央戦線では総兵力八千を誇っていたオルク王国第二師団は第一次、第二次攻撃によって戦力の半数を喪失し、再編成にとりかかっているが、消耗が許容値を越えているため後送か援軍の投入を求める旨の報告が上がっていた。
だが第二師団を後送させては戦線が崩れてしまう。なんとしても第二師団には踏みとどまってもらう必要があった。
「こうなれば左翼のコボルテンベルク王国第四師団にコンピエニュ離宮への攻撃中止と二個大隊規模の兵力を中央に回させるよう伝えてくれ」
「お言葉ですが、その、先ほどコボルテンベルク王国からの伝令によるとコンピエニュ離宮の掌握にのめり込み、すでに戦力の三割を喪失しているとのこと。援護に回す兵力は存在しません」
「っ!? 陽動だと命じたはずなのになにをしているのだバカかあの者は!! コボルトには首輪をつけねばならぬのか!?」
ドラゴニュートの逆鱗に触れてしまったかと参謀長は首をすくめる。
だがすぐに彼女は自分がどれほど愚かな行為をしているか自覚し、咳払いをした。
「忘れてくれ。それより、中央が崩れてはいかん。すぐに増援を見繕ってくれ」
「は、はい。では小康状態の右翼からさらに兵力を抽出し、軍特火と共に――」
だがその言葉は駆け込んできた伝令によってかき消されてしまった。
「伝令! 伝令! プルーサ王国第五師団より伝令!」
「ちょうどいいところに。なにようだ?」
「ハッ! 発プルーサ王国第五師団司令部。宛北部軍司令部。我、ブリタニア連合王国軍より攻撃を受く。軍特火の援護を求む。以上であります!!」
サッとプルメリアの顔から血の気が失せる。
誤報ではないかと彼女は考えるが、すぐに否定する。むしろ半ば予想していたことだ。アイツなら火事場泥棒くらい躊躇なくしてみせる、と。
だがそれでも内心にあの麗人の顔を思い浮かべて叫ばざるを得なかった。
あの二枚舌ッ!!
だが罵っていても仕方ない。この代償は必ず払わせると彼女は朱に染まった瞳で地図を睨みつける。
このままガリアが戦線中央にぽっかりと空いた”穴”を見過ごすはずがない。むしろこの機会に中央突破を図り、右翼と左翼を分断。さらにブリタニアと右翼を挟撃して包囲殲滅を図ることだろう。
むしろそれ以外にガリアの勝ち筋は存在しない。
逆に言えばこの攻撃を凌げばガリアが掴もうとする勝利の芽を逆にこちらが摘めるはず。
この状況を打開する手はないか。
そう地図を凝視するが、指せる駒はどこにも見当たらない。どうすればと思う中、再び伝令が司令部を訪れた。
「伝令! 伝令!」
「はぁ。今度はどこの部隊だ?」
半ば自棄になりながらも、彼女は地図から視線を司令部の入り口に向ける。
そこにはセントールの将校伝令が控えていた。
あれ? と彼女は疑問を浮かべる。北部軍にセントールは配備されていないはず。そう思うと共にまさかという喜色が浮かんでくる。
「く、ふはは。か。やはり神は現れなかったか。だが、この世界は中々よく出来ている」
そして彼女は腹の底から笑い声を爆発させるのだった。
次回より魔族側の反撃です!
ちなみに農園の爆砕シーンですが、たぶん黒色火薬オンリーだと現実的じゃない量の火薬が必要と思われます。そのため誇張表現とか、私のファンタジー世界だとピクリン酸並の破壊力を持っているとか脳内補完をお願いします(丸投げ)。
それではご意見、ご感想をお待ちしております。




