怒り
「………………。……あの、今、なんと、申された?」
ガリヌスの話を聞いていると、気づけば夜が明けてしまっていた。
俺ももう二十八と徹夜をするのがきつくなる年齢のせいか頭が上手く働いていないのを感じつつ、そう問えばディーオチ・ド・ガリヌスは神妙な面構えでいった。
「では今一度申しますが、第一王子ルイ殿下とそちらの前魔王の弟君であるローゼ殿下が通じていたのです。我が家が雇った間諜の情報によるとまず間違いないかと。ルイ殿下はヌーヴォラビラントを魔族より割譲される代わりに三年間の不可侵を結んでいたようなのです」
ばかな……。そんなばかなこと、あってたまるか。
確かに種族も国も違うが、魔王様に忠誠を誓い、その見返りに自治権を賜った友邦だぞ。
そんなオルク王国の都を人間に割譲だと? そんなばかなこと……。
「オドルという餓鬼は農法改革と耳心地良く謳って農民から共有地を取り上げたのです。その結果、多くの農民が職を失い、路頭に迷うことになりました。そして土地にあぶれた農民に与える土地をルイ殿下は外地に求めたのです」
「それがオルク王国であった、と?」
「えぇ、副官殿。ルイ殿下は甘言を弄して陛下を騙し、侵略戦争を企てたのです。それと時を同じくして魔族側の密使が殿下と接触したようで、そこで先の密約が結ばれたようなのです」
「そんなバカな……」
だが、今思えばウルクラビュリント失陥後の魔族国の対応は腑に落ちないところがある。
そもそも魔族国諸邦は魔王様に忠誠を誓った代わりに魔王様の庇護を受けることになり、いざ戦端が開かれれば魔王様を中心にした諸侯の連合軍が編制されることになっている。
だが、ウルクラビュリントの時はそうしたものが一切なかった。
確か、ユルフェ叔父上が魔王様に掛け合って援軍を要請したはずなのに、手元に来たのは弔慰金だけだ。
自国が侵されているというのに、金で済ますなんてありえるか?
「我がガリヌス家はガリア王国建国期より王家に忠誠を誓ってきた誉れ高い家柄であると自負しておりますが、これほどまでに王国が堕落した例は他に記録がありません。まさに暴走していると言えましょう。農民達が心血を注いだ土地を奪い、我欲を満たすために隣国に攻め入るなど言語道断!! その上、この異端騒動を扇動しているのがテッラ大聖堂のケラススとそのオドルなのです! 恐らくケラスス女史もオドルに篭絡されてのことかと」
「なんと……! オドルとはかくも邪悪な者がいたとは……。恐ろしい限りです」
「えぇ。しかも婚約を取り決めていた我が最愛の姫たる第二王女マリア殿下をも手込めにし、今やガリア王国で奴に逆らえる者はおりません。しかしここで屈しては先祖に顔向けできぬというもの。逆臣の咎を受けようとガリヌスは王国のため、涙を呑んで自ら刃を抜いて忠罰を下す所存なのです!!」
……あ、そういえば魔王位継承戦争において逮捕されたローゼがなにかいってなかったか? そう、密約がどうたらって。
つまり、つまりそういうことだったのか。
はは、今まで信じていた大地が割れ、崩れ落ちそうだ。
「副官。すぐに文を出す。ワイバーンを用意しろ」
「は、はい! 失礼いたします」
そしてディーオチという人間に向き直り、この話の真偽を確認するまでその身柄を拘束することを告げると、彼は鷹揚に頷いた。
彼としてもそれは織り込み済みだったのだろう。それから彼を(一応)将校向けのテントに移動させようとしたところ、参謀長が競歩でもしているような足取りでやってきた。
「失礼いたします、閣下。少々よろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「ここではなんですので、どうかお外に」
つまりディーオチに聞かせられない類の話か。まさかピオニブール攻略戦においてなにかマズイことでも起こったのか? くそ、頭の痛い問題がまた増えるなんて――。
そう思っているとディーオチが「大量の荷車について、でしょうか?」と試す様に参謀長を見やる。彼に視線を向けると、無言でうなずきが返ってきた。
「それは我が家が仕立てた輜重隊です。ご安心を。それにしても先触れを出したはずですが?」
「……はい、南方の街道に十数台の馬車を視認したと守備隊から連絡があり、それと時を同じくしてガリヌス公爵家の使いという者も現れたとか。使者は守備隊が拘束しておりますが、いかがいたしましょう?」
輜重隊、ね。
どういう了見か訊ねるとディーオチはこともなげに言った。
「なに、友好の証ですよ。戦場ではなにかと不足するもの。麦、肉、それに女……。我が所領で集められるものを持参した次第です。もちろん無償で魔族の方々に提供いたしましょう」
「協力には感謝いたしますが、なにぶん我らは敵であった時間の方が長い。積荷を検めても?」
「もちろん。それは正当な権利です。なんなら毒見もいたしましょう」
どうやらこの男は本気で国を売るつもりのようだ。
一度裏切った奴はまた裏切るというが、先の話の件もあって信用できるかなんともいえない。
だが、もし、この男の言葉が正しいのであれば……。
「参謀長。荷車の件、任せた。念のため、荷を検めるまで兵達には警戒を解かせるな」
「はい、了解いたしました。して閣下は?」
「プルーサ王国に確認したいことができた故、文をしたためるから寝室用のテントにいる。なにかあればすぐ報せろ」
「仰せのままに」
それからディーオチのテントを出ると、眩しい朝日に寝不足な頭がくらついた。
なんだか妙に疲労と空腹を感じているせいか、足取りが覚束ない。ふらふらと指揮官が歩くのはいかがなものかと真っすぐ歩くようにするが、気づくと進路がそれてしまう。これはいよいよいけないようだ。
早くローゼの所業について確認を取るようプルーサ王国の外交官に手紙を書いて、少し寝よう。仮眠が終わったら参謀長と今後の作戦指導についてスッキリした頭で感情抜きの議論をして……。
そう思いつつやっとテントにつき、その扉を開ける。
あー。やっと一人になれたな。
「……こんな、こんなことあってたまるかあああッ!! 俺が、俺達がなにをしたっていうんだあああッ!! そんなにィ、そんなにニートをして、家を燃やしたのが悪かったのかッ!? ここまでの、こんな、こんなあああッ!! 馬鹿野郎ッ! 馬鹿野郎ッ! ふざ、ふざけやがって、くそ、くそがあああッ!! ぶっ殺してやるうううッ!! ぜったいに、ぜったいにぃ殺すうううッ!! ろおおおぜえええッ!!」
目の前が真っ白になり、そして気づけば俺のテントは倒れ、机やベッドは粉々。周辺には衛兵が二人ほど倒れ伏し、数人がかりで羽交い締めにされていた。
◇
その日、ピオニブールは最後の日を迎えようとしていた。
それを街の中心たる城館に籠もる冒険者ギルドマスターであるガーベラ・ド・エルザス辺境伯婦人は悟っていた。
市街地に突入した魔族達にエルザス騎士団や冒険者、そして有志による民間防衛隊はやってくるであろう王都からの解囲軍の到来まで一日でも、一時間でも時間を稼ごうと頑強に抵抗を見せた。
特に近接戦闘では魔族を凌駕する騎士や冒険者は住居一つ一つを拠り所に立てこもり、遠距離武器の利点と数的優位を封殺して幾つもの部隊を潰走させることに成功した。
中には建物の中に隠れて魔族の一隊をやり過ごした後に後方から奇襲をしかけたり、下水道を利用して戦線後方を攪乱するなど敢闘の限りを尽くしてきた。
その甲斐あって魔族の侵攻は鈍化したが、その歩みを止めるまでは至らなかった。
魔族は対抗策として騎士や冒険者が立てこもる拠点に重砲の直射を浴びせて建物ごと抵抗拠点を破壊し、下水道に通じる出口を瓦礫で塞ぎ、亜硫酸ガスによる化学戦を展開するなど地道ながらも徹底的な掃討戦が行われた。
そして――。
「伝令! ギルマス!! 魔族が、魔族が城館の門を破ったって!」
「……そうかい」
「そうかいって、なにを呑気な! もうどうしようもないんだ。脱出しよう!」
「あんたはそうしな。元々、あんたは根無し草の冒険者なんだからね」
それはギルマスも同じでしょ、と今まで副官をしていた冒険者が叫ぶ。
だがガーベラはそれを無視するように若い頃に愛用していたショートソードを手に城館の正面玄関に向かう。そこには辺境伯位に相応しい調度の良い家具達が乱暴に扉の前に積まれ、バリケードとなっていた。
こんなことならもっと安い家具を揃えれば良かったと彼女は思いながら悪運の強い騎士や冒険者、そして民間防衛隊の顔という顔を見渡し、叫ぶ。
「あんたら聞きな! あんたらはよく戦った! 誰もが後ろ指さされることがないほど天晴れな戦働きをした! だから、ここに居る者の全ての軍役を解く! これからは好きにしな。脱出するなら食堂に行くんだよ。そこに隠し通路がある。運が良けりゃ、魔族から逃げ出せるかもしれない。さ、解散だよ、解散! さっさと行っちまいな!!」
まるで遊びは終わり、家に帰るように諭すギルドマスターに騎士や冒険者は顔を見合わせ、乾いた笑いを浮かべる。
「逃げるたって、どこに逃げろと?」
「そうだ、そうだ。どうせ魔族は逃がしちゃくれないだろう」
「それをおっしゃるなら辺境伯夫人も脱出されては?」
と、ヤジが飛ぶ。それにガーベラは「辺境伯夫人が逃げ出せるかい」と剣を掲げて破顔する。
しかし疲れ切った表情を隠せない民間防衛隊の幾人かが気まずそうに彼女の下にやってきた。
「あ、あの、申し訳ないのですが――」
「良いよ。今までよく頑張ってくれたね。感謝するよ。碌なものはないけど、城の美術品とか持っていける物は持っていきな。生活の足しになるだろうさね。でもあんまり持っていくと重くて身動きできなくなるからね。ほどほどにしな。そら、もう行った! 行った!」
目尻に涙を溜めた市民達は頭を下げて彼女の前を去っていく。
それを見送った騎士や冒険者は余念なくバリケードの構築に励み出す。
「まったく、立派な奴らだねぇ」
そう感心していると、扉の外からけたたましい銃声がいくつも木霊した。それは二階に配された弓兵等を狙っているようで、一階に展開した残存兵力は恐々と運命の時を待つ。
一秒が一時間にも、十時間にも間延びしたように感じた時、銃声とは比べものにならない轟音と共にせっせと積み上げたバリケードが一瞬で吹き飛ぶ。
一〇三ミリ野戦砲の直射により易々と風穴を開けられた城館は濛々と粉塵が舞い上がり、目も開けられない有様だ。
「げほッげほッ! あんたら、気をつけな! 来るよ!!」
その言葉と共に煙の奥に人影が続々と現れる。
煙が晴れると共に、騎士や冒険者はそれが魔族ではないことに気がついた。最初は人間かと思った。だが、違った。
そこに立ちはだかったのは、死者の軍勢だった。
「こ、こいつらアンデッドだ!」
「スケルトンに、ゾンビ、それにデュラハンまでいるぞ!?」
「くそ魔族め! 死者を辱めやがって!!」
するとスケルトンとゾンビが急に走り出す。それらはネクロマンサーの命令に従って握っていた擲弾の導火線に火縄を押し当て着火するや、手近な生者へ向かってゆく。
「こ、この雑魚モンスターが!」
冒険者の一人がスケルトンに切りかかると、それは簡単に頭蓋骨を割られて地面に倒れ伏す。まさに弱小モンスターめと彼の心に勝利が芽生えた瞬間、導火線が燃え尽き、盛大な爆発が冒険者を、それも周囲の者ごと襲った。
それは爆発の衝撃だけではなく、爆発によって内封された鉄片やスケルトンを成していた骨などが高速で飛び散り、柔らかな生者の肉を抉っていく。
「く、近寄らせるんじゃないよ! 近づく前に対処しな!!」
自立誘導機能を有するスケルトンやゾンビによる自爆特攻に城館の防衛線は瞬く間に崩壊していく。
そんな自爆攻撃が終わると今度は高位アンデッドによる切り込み隊が突入を始める。
これまでの低位アンデッドと違い、デュラハン等の高位なアンデッドは生前でも高い身体能力を有している者ばかりで、寄せ集めの騎士や冒険者では歯が立たない。
だが、そんな中で自爆攻撃を生き延びたガーベラは若い頃と色あせない剣技で攻め寄せるアンデッドを斬り伏せる。
しかし――。
「け、【剣聖】だ! こいつ【剣聖】だ。間違いない! うあああ」
悲鳴と共に騎士が袈裟懸けに斬られて倒れ伏すと、そこには土気色の顔をした白銀の剣姫がいた。
ガーベラは思わず逸らしそうになる視線を、あえて【剣聖】に向けて古びた愛剣を力強く握る。
相手はSランク冒険者に匹敵する【剣聖】だ。ガーベラも元は夫に並んでSランク冒険者であるが、肉体の衰えと実戦を離れて久しい身でどこまで戦えるか、と考えていると「危ないギルマス!」という叫び声とともに体当たりを受ける。
「な、なんだい……!」
体当たりによろめいたかと思うと顔面に生暖かいものが吹き寄せてきた。それとともに崩れる副官に、それを斬りつけたアンデッドと視線が交錯した。
「……あぁ、なんてことだい」
そこに立っていたアンデッドは見覚えのある顔をしていた。いや、見覚え程度ではない。そこに立っていたのは――。
「ジャン……。あんた、アンデッドなんかになっちまうなんて……!」
エルザス辺境伯にして元Sランク冒険者であるジャン・ド・エルザスその人が、そこに立っていた。
デュラハン等の特別なアンデッドは生前、高いステータスを誇る者がそうなりやすい。その要件を同じく元Sランク冒険者であるジャンは満たしていたのだ。
「あなた……」
思わず手を差し伸べるが、ジャンから返ってきたのは鋭い突きだった。それは過たず首を穿ち、引き抜く。
こうして首領を失った騎士や冒険者は統制を失い、この後に突入してきた銃兵の攻撃もあって間もなく城館は魔族の手に落ちることになった。
まだ各地で孤立した騎士や冒険者が抵抗を見せるエルザスであるが、神星魔族帝国軍南部軍はこの日、ピオニブールの攻略を宣言。翌日には魔皇リーリエ並びにナイ大司教によってハルジオン・エルルフェルスト・フォン・エルザスは公爵に叙任され、エルザス公国の独立と神星魔族帝国の領邦となることが宣言された。
こうして七十年に及ぶガリア王国のエルザス支配は終焉を迎えたのであった。
◇
エルザス公爵の叙任式のパーティーをそそくさと抜けだし、副官のゴブリンと共に南部軍司令部へ足早に向かう。
すると副官は名残惜しげに背後にそびえるピオニブールを一瞥して言った。
「畏れながら閣下、今宵の宴は戦勝記念だけではなく外交儀礼の意味が多分に含まれております。それを途中で離席するなど前代未聞かと。それも魔皇陛下も臨席なされる大事な――。閣下? 聞いておられますか?」
しかしその言葉を無視して南部軍司令部に戻り、テントを開けるとむっとしたアルコールの臭気が鼻をついた。
そこには戦勝祝いも兼ねてか、作戦書類や地図の上にワインやエール、蒸留酒など数々の酒類が並び、顔を赤くした幕僚達が大騒ぎをしていた。
「おや? これは軍司令官閣下。城での宴はいかがしたのです?」
参謀長のドラゴニュートがワインの注がれたグラスを手に聞いてくる。周囲を見渡せば誰も彼も楽しい宴をしていたようだが、幸い酔眼になっているものはいない。
「そんなことより参謀諸氏に命じる。宴をやめ、速やかにガリア内地への攻勢作戦の立案にあたってくれ」
「こう、せい? ですか? お言葉ですが、攻撃目標は? パリシィですか?」
周囲の幕僚達は手を叩き、陽気に「さすが軍司令官閣下! お供いたします!」と笑い声をあげる。
そんな面々を出来るだけ冷静に見渡しながら告げた。
「よく言った。その通りだ。北部軍と呼応してパリシィを叩く。北部軍は今頃アーラスあたりか? パリシィまで二、三百キロメートルといったところだな。急がねばならぬぞ」
参謀長が周囲の幕僚を見返し、自分が酔っているせいで幻聴が聞こえたかと確認をとりだした。
彼には、そして参謀達には悪いが、俺は確かに攻勢作戦の検討を指示したのだ。
それにノームの特火参謀が恐る恐ると「作戦の検討については明日にでも行いますので、閣下はお休みください」と言ってきた。
もしかして俺が酔っているとでも思っているのだろうか? だから酔いが覚めるのを待って命令の撤回を望んでいるのだろうか?
「なにを勘違いしている? 今、すぐに、作戦の検討に取り掛かれ」
「お、お言葉ですがピオニブールには未だ残敵が潜んでおり、掃討戦の必要があります」
「うむ、知っている」
「な、ならば治安情勢が安定化するまでは南部軍による軍政が必要なのもご存知のはず。それにこれ以上の攻勢を行う物資の備蓄がございません」
「糧秣であればこの間、ガリヌス公爵が寄越したものがあろう」
「それを含めてもパリシィまでなど到底たりません。本国からの補給の割り当てが定数通り届いたとしても攻勢には到底足りません! なにより我々が動く理由はありません。ご再考を」
理性的に考えれば、そうだろうね。まったくもって攻勢の必要性はない。
だがその意見に鋭い頭痛が走った。
そう、これは本能が求める攻勢なのだから。
「参加兵力はピオニブールの安定化策に不要な騎兵や騎馬特火、あと法兵を中心とした混成部隊を作る。それと軍直轄の第五〇一装甲擲弾兵大隊も連れて行く。速度を第一にした部隊編制が必要だな」
「兵数が少なすぎます! いくらガリアの野戦軍を撃破したとはいえ、敵の支配領域に斬り込むには寡兵かと。特に要の銃兵が足りないとなれば――」
「足りない銃兵戦力はスケルトンを用いればよかろう。スケルトンなら輜重の負担を減らすこともできる。あと星字軍遠征軍団と共に行動すれば二万の大軍となる。先ほど軍団長のナイ殿には共同作戦の了承を取り付けてきた」
むしろ星字軍としては異端討伐のため軍を進めることを願っており、この申し出は即座に了承された。
あとは南部軍の準備が整えばいつでも攻勢を開始できる。
「なんの問題もない。即座に作戦の立案に取り掛かってくれ」
「………………」
すると参謀長以下、幕僚達は水を打ったように静まりかえってしまった。
まぁせっかくの宴を邪魔したあげく、白けさせてしまったのは申し訳ない。
しかし、しかしだ。
プルーサ王国に派遣した外交官経由でローゼが服毒自殺したという報せが宴の直前に舞い込んだのだ。
ローゼは魔王位継承戦争で敗北してより離宮に幽閉されていたため毒を入手することなど出来ようはずがない。
それがこのタイミングで自殺したというのだ。疑いようがない。そういうことだったのだ。
こんな不条理が、こんな絶望が、悲しみがあってよいものか?
「主よ、照覧ください……」
ナイ殿はおっしゃられた。主は七日で世界を創り、”よし”とされた。この世に不条理があるのも、絶望がるのも、悲しみがあるのも、全て主がそれを“よし”とされたのだ、と。
ならば俺の復讐も、”よし”である。
街は焼いたので今度は村を焼きに行きます。
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