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海賊とブリタニア王

 ガリア王国の西端――ブーレスト軍港から北に五十キロメートルというブリタニア海峡の外れ。外洋の荒波に木の葉のように翻弄されるガレー船があった。



「船長! ダメです、追いつけません!」



 二本マストに一杯の向かい風を受ける『マリア』号は全長五十メートル、全幅八メートルとガリアきっての新鋭大型ガレー船であり、漕ぎ手を含めて二百五十人もの乗組員を運んでいた。

 そんなガリアの海軍力を象徴するガレー船を指揮するのはまだ年端もいかぬ少女であった。

 その少女はオース会戦で戦死したカーマセ侯爵の息女であり、襲爵して早々にガリア王からの勅命で不審船取り締まりを言い渡されていた(オース会戦での責を負って左遷されたと見ることも出来よう)。

 そんな若き船長は自慢のロールヘアを怒らせて叫んだ。



「航海長、弱音なんて聞きたくないわ。もっと速度をあげなさい」

「しかしかれこれ三十分は全力で櫂走しているのですよ。もう限界です」



 潮風に焼かれて赤ら顔になっている初老の航海長とは対照的にお嬢様然とした白い頬を怒りに染めてカーマセは乗組員の怠慢だと罵る。

 そんな横柄な態度に航海長は出航してから三日間抱き続けた辟易を再燃させてしまう。

 やれ飯が不味い、やれ退屈だなどいうのはまだ良い。湯浴みをしたいと海のど真ん中でのたまわれた際には開いた口が塞がらなかった。

 前の当主もたいがいであったが、あの親にしてこの子ありを地でいく様に彼は本気で反乱を起こして海賊になろうかと考えるほどだ。

 むしろ今や海賊稼業に転職し、人質経済で裕福に暮らす無法者が増えつつあり、抗いがたい誘惑があった。



「相手は帆船なのよ。向かい風ならこちらの方が早いでしょうに」

「帆船とはいえ、ありゃキャラック船っていうイスパニアの新鋭船ですよ。追いつくのは難しいかと」



 彼女等の追い回す船はずんぐりとした船体に四本の帆柱を生やした帆船であり、全長も『マリア』号と同等の五十メートルほどだが、全幅は十六メートルと倍もある肥満児であった。

 しかし四本のマストに掲げられた帆を組み合わせることで柔軟に風を捕らえることができるため見かけに似つかわしくない船足を発揮でき、その中でも最後尾のマストに張られた三角形の帆を使うことで向かい風でも前進することができた。



「く、海賊の分際で……!」

「まだそうと決まった訳では……。船尾にはイスパニア国旗が掲揚されておりますし、航路からしてブリタニアを経由した北方交易船なのでは?」

「ならどうしてわたくしの停船信号を受諾しないの?」



 『マリア』号のマストに掲げられた信号旗がむなしく風になびいて一時間になろうとしているが、キャラック船は止まる気配を一切みせない。

 そもそもことの発端は外洋最大規模の軍港であるブーレスト港沖を哨戒中だった『マリア』号がブリタニア方面から南下してくる件のキャラック船を発見し、その臨検のために停船を勧告したもののキャラック船はそれを無視。『マリア』号は反航戦を決意して接近するもキャラック船はそれをかわして逃走を開始し、『マリア』号が反転して追うというのが現状だ。



「間違いなくあれは海賊よ! あの船倉には汚らわしい阿片が山積みになっているに違いないわ! それを捕らえるよう陛下から命じられているのよ。ここであの船を見逃すということは陛下の御心に背くということ。それがどういうことか、分かっているの?」



 昨今、ガリアでは宗教改革の名の下に星職者の不正を糾弾し、正しき信仰に立ち返ろうという復古運動が盛んになっているが、誰もが改革を受け入れたわけではない。改革を押す新教派と保守的な旧教派に分かれた諍いが各地で小競り合いを生み、国内治安に暗い影をおとしていた。

 そんな隙につけいるように反社会的組織の活動が活発化し、外洋沿岸を中心に麻薬汚染が広まりつつあった。

 その中でもたちが悪いのが海賊と貴族が繋がり、密輸を黙認する代わりに莫大な謝礼金を得る者までいるという始末だ。

 そのためガリア王は即座に海賊の取り締まりを命じ、犬猿の仲のブリタニアにも応援を要請するなど事態を重く見ていた。



「カーマセの名において陛下に叛意ある者を忠罰する権利がわたくしにはあるわ! それは海賊に限らず、『マリア』号の船員に対しても、よ。命令に従えないというのなら――」

「は、叛意などこれっぽっちもありません! で、ですが漕ぎ手も限界です。風使いもそろそろ魔力切れでしょうし、これ以上の追跡は難しいと言わざるを得ません」



 『マリア』号は四人で一本の櫂を操り、それが五十本もある大型ガレー船だが、ガレー船の例に漏れず全速力を発揮できる時間は三十分程度が限界であった。

 その上、二本のマストに対し風魔法に秀でたマジックキャスター達が風を送ることで向かい風ながら速度を保ってきたが、その船足はみるみると鈍りつつある。



「使えない犯罪者共ね」



 内海――リーベルタース王国のガレー船の漕ぎ手は一攫千金を夢見る商人達の人気職種であるが、ガリアでは海軍力の整備という観点から多数の漕ぎ手を必要としているため犯罪者をこれにあてていた(商用でないこともあり、志願者が少ないのだ)。

 そのため刑期が終わるまで漕ぎ手は奴隷の首輪をはめられ、船に束縛されることになる(それ以外の船員や兵士は専門職のため別途雇われているため奴隷ではない)。



「お言葉ですが、船の性質が違いすぎます。外洋航行に適したキャラック船には勝てないかと」



 いつもより疲労を抱きながら航海長はこの小娘に蛆の沸いたビスケットを出したらどうだろうかなどと薄暗い妄想を抱いているとマストに上っていた見張り員から「不審船、回頭した!」という叫びを聞く。

 それに弾かれるように彼がキャラック船を見やると鈍重な船体をよじらせるように大きな旋回半径を描きながらその船首をこちらに向けてきた。 彼我の距離は目測で百メートルほどだろうか。帆に風を受けたキャラック船がぐんぐんと迫ってくる。



「………………? ……は!? しまった! 風上をとられたッ!!」



 悲鳴と共にキャラック船の船尾に掲げられたイスパニア国旗が降納され、代わりに黒地に白い髑髏が描かれた旗が力強く青い世界に翻る。

 不吉な死のイメージにそれを見た船員から悲鳴が漏れるとともに胸元に五芒星を切って主の慈悲にすがろうとするが、その間もなくキャラック船の舷側の一部が跳ね上がり、そこから鈍色に輝く筒達が突き出された。

 それと共に帆を張り上げ、増速しながらキャラック船は『マリア』号へと迫る。



「衝角によって櫂をへし折る気か!?」

「な、なら早く避けなさい!」

「面舵一杯!! 急げッ!!」



 航海長の命令が反復されるとともに操舵手達が懸命に舵をきり、右舷側の漕ぎ手が櫂をあげる。するとガレー船はキャラック船よりも機敏に旋回し、両船は間一髪ですれちがった。

 しかしキャラック船はそんな努力をあざ笑うように舷側から突き出た八十二ミリメートルという小口径砲五門が連続して火を噴く。

 そこから放たれたのはブドウの房を思わせる鉄球を詰め込んだ麻袋だった。その袋は発砲の衝撃で破れてしまうが、孕まれていた鉄球達は与えられた運動エネルギーのままに宙を駆け抜ける。

 もっともその多くは五十メートルという近距離攻撃にも関わらず海面を叩く結果になったが、一部は『マリア』号の船体を抉ると共に不運な乗組員や索具を破壊することができた。


 また、攻撃はそれだけに止まらずキャラック船の舷側からマジックキャスター達が次々と現れるや炎系の魔法を浴びせかけてくる。

 キャラック船は三角帆によって向かい風でも帆走できるためマジックキャスターの魔力を温存することができたが、『マリア』号のマジックキャスターは帆に風を送るだけで魔力を使い果たしており、対()戦闘も覚束ない。

 そんな『マリア』号を後目にキャラック船は悠々と再回頭し、船尾から接近するやその右舷に体当たりする。



「きゃああ」

「くそ! 総員、斬り込み隊に備えーッ!!」



 キャラック船の乗組員は即座に鉤付きの縄で『マリア』号と自船を固定するや、瞳をぎらつかせたドラゴニュートに半魚人族(ディープ・ワン)などが飛び乗ってくる。

 その中でも腐った魚のような生臭い体臭を放つはげ上がった頭に落ち窪んだ鼻、左右に広がりすぎた目を有するというこの世のものとは思えぬ異形の亜人――ディープ・ワンを見たカーマセは小さく悲鳴をあげてしまった。



「なに、あれ!?」

「半魚人族ですよ! 海上での戦いじゃオーガよりも強いって噂の奴らです! あぁ、くそ……!」



 ひょこひょこと不格好に甲板を歩む姿とは裏腹にその魚面に宿る邪悪さに抑えようのない気持ち悪さを催すカーマセであったが、その水掻きのようなものがついた手に握られたサーベルに戦うしかないと覚悟を決める。



「わ、我が名はガリア王国、カーマセ侯爵家が当主――」



 口上の途中、キャラック船から乗り移ってきたディープ・ワンが放ったクロスボウの矢が彼女の喉を抉る。

 名誉もしきたりも無く、ただ破壊と略奪を至上とする海賊達は蛮族に相応しい行いで瞬く間に『マリア』号の船員と、その船を手に入れるのであった。


 ◇


 ブリタニア連合王国の王都ロンディニウムにそびえるヨーク・プレス宮の一室にてクローバー八世は美麗な横顔に退屈を滲ませながら眼前で頭を垂れてガリア王からの勅書を読み上げる特使に時折、鷹揚に頷いてみせる。



「――この海賊が跋扈する現状を許しては両国の通商に莫大な損失が――」



 そういえば、と彼女はこの前解任した枢機卿から買収したこの屋敷に残る財宝を調べきれていないことを思い出す。新たな夫とあらかた探索をしたつもりだが、もう一度調べてみたい部屋があることに気がついたのだ。



「――よってガリア、ブリタニア両国の繁栄のため、密輸の絶えぬ阿片の取り締まり並び海賊討伐は喫緊の課題であり――」



 もう秋が深まり出した頃合いだが、オルク王国に嫁いでしまった彼女は元気だろうか? 向こうの冬はブリタニアより早く訪れるだろうし、体を壊していなければよいが……。やはり手紙を出してみようか? いや、あれほど彼女の夫に不敬を働いてしまった上、袂を分かってきたのだからどの面下げて手紙を出せるだろう。やはり手紙はなしだ。



「――これを謹んでブリタニア王にしてエリン太守であらせられるクローバー陛下に送る。ガリア王ルイ十三世」

「まこと大儀である。返書をしたためる故、別室にて待たれよ」



 クローバーは手元の鈴を振るとそれを合図に従者が現れ、ガリアからの特使を退室させる。

 今度はそれと入れ替わりに着飾ってこそいるものの、その顔には醜悪な欲望を張り付けたリザードマンが入ってきた。

 潮風に痛めつけられた赤毛に刀傷を受けた鱗を頬に張り付けるその姿はまさにリザードマンのそれだが、下卑た笑いに黄色く汚れた歯を見せるその姿は王の前に現れるには粗野すぎるだろう。



「ご機嫌麗しゅう陛下」

「うむ。キャプテン・ドレイク。大儀である」



 目上の者が呼びかけるまで口を開くことを許されぬブリタニアの社交界のルールを最初から無視する男は大仰に頭を下げ、それをクローバーは苦笑しながら「首尾は?」と問うた。



「上々にございます。今月だけですでにガリア船を三隻拿捕し、捕虜の数は五百人を越えます。中にはあの『マリア』号も含まれ、名の知れたガリア貴族もおりますが、残念ながら死んでしまったので御命令通り塩漬けにしてあります。こんなんでも売れるんですかねぇ?」

「死体でも買い取ってくれる宛はある。褒美をつかわそう」

「ありがたき幸せ。これも全て陛下から私掠船許可状を賜ったおかげ。感謝の念に耐えません」

「魔族国から仕入れた阿片の売れ行きも良いそうだね。船長の働きをぼくは大変評価している」



 クローバーはオルク王国で絶賛栽培中の芥子――阿片を買い取り、それを(非正規に)ガリアに売りつけることで莫大な利益を得ていた。

 その上、ガリア船籍の船に対してのみ海賊行為を全面的に黙認する代わりに収奪品の一部をブリタニア王に上納するという私掠船許可状を発行し、ガリアの海上輸送網に打撃をあたえていた。

 もっともブリタニアとガリアとではガリア王位を巡るブリタニア=ガリア戦争の休戦協定を結んだばかりであるが、所詮は休戦であり、未だ戦争状態にある。そう解釈しているクローバーは次の戦のための阿片によってガリアから吸い上げた金貨で軍資金を集め、海賊を使った非正規戦を展開していたのだ。



「しっかし良いんですかい? さっきの人間(さるもどき)はこちらの働きを不満に思っているようでしたが?」

「確かにガリアからの要請は聞いてやったよ。で、一体全体どこにその言い分を履行してやる義理があると?」

「――! ははっは! さすがは国王陛下! ははっは!」



 ブリタニアを統べる王の御前であるというのにドレイクは破顔し、傑作だと手を打ち鳴らす。

 そんな様子にクローバーは気を悪くするどころか笑みを浮かべながら「船の調子はどうだい?」と訪ねる。



「そちらも問題なく。さすがイスパニアから輸入しただけはありやすぜ。クラーケンや人魚の跋扈する外洋向けに造られただけあってこの分なら海の尽き果てるそこまで航海できそうです」

「それは頼もしい」

「ですがねぇ。小回りが利かないのはいけませんね。船体もでかいんで浅瀬じゃ座礁の危険がありやすし、立っ端(たっぱ)があるんで横風に巻かれると転覆するやもしれません。でも横幅があるんでガレー船やコグ船に比べりゃ積載能力が段違いでさ。外洋交易ならこれ以上の船はねぇと断言できやす。戦闘だけに使うのはもったいないかと」

「陸にいるより海にいる方が長そうな船長の言だ。イスパニアに再発注をかけると共に我が国の造船所でも建造させよう」



 ブリタニアでは長年ガリアとその沿岸地域やガリア王位を巡って係争が絶えなかった。

 そんな中、南ガリア最大の港町であるロシェルを舞台にした海戦においてブリタニア艦隊は惨敗を喫し、その戦力の大部分を喪失してしまった。

 そのためブリタニアでは海上戦力増強のため自国の造船所をフル稼働させるに飽きたらず、海洋先進国であるイスパニアに商船を発注したのだ。



「あの国は異教徒に侵されながらもたくましくその技術を吸い取ってくれた。そこにエルシスの力が入ったのだからあの国は勃興するだろうね。この調子なら島の発見に留まらず新しい世界を見つけてくるかもしれない」

「あー。確かにイスパニアは良い船を作ったが、諸手をあげて喜べねーんですよ。こちとら昔、イスパニアの船に襲われて船長や同僚皆殺しにされてるんですぜ」

「だがそれでもイスパニアの船に乗るのだろ?」

「良い船に罪はねーですから。それより船に恋敵の国の武器を積んだり、その女の名前を船につける方がどーかと思いますがね?」



 イスパニアから購入したキャラック船にはその戦闘力向上のため既存の投石機やバリスタに代わってオルク王国から輸入された八十四ミリ野戦砲を基に作られた国産鋳鉄砲――鷹狩で使われるハヤブサの名にちなんでセーカー砲と名付けられたそれを十門搭載し、その名を『プルメリア』号と名付けられていた。



「良い船ならなんでもよいのだろ?」

「はぁ、それは……」



 ドレイクはここにきて初めて不快を浮かべた王に潮流が変わったか、と雑談を切り上げて次の航海に向けての事務的な話に入る。

 必要な経費。海賊稼業の傍らで行われる通商について寄港地の選定。乗組員の募集状況。それらを話し合い終わるとドレイクは再び慣れぬ所作で芝居がかった礼をして退室しようとするが――。



「あ、最後に」

「はい、国王陛下」

「『プルメリア』号はなにが何でも沈めないように。もし()()が沈むようなことがあれば――」

「わ、わかっておりやす。万事心得ておりますので」

「……ガリアに対しての海上封鎖と阿片売買の全てが上手く行けば君を叙勲の上でプーリマス市長の席につけるよう万事を整えてある。もちろん君が望めば艦隊司令長官――提督の席も用意できる。くれぐれもぼくを失望させないでくれたまえ」

「御心のままに」



 椅子の上でふんぞり返ることしかできない変態女め。金と地位で全てを手にしていると思い違いをしているクソ(あま)! テメェごときが海の自由を手にしていると思うんじゃねぇぞ!

 そう罵倒を抱きながらドレイクは再び海に向かうのであった。

 それに対し、クローバーは玉座に深くもたれ掛かりながら一人ため息をつく。



「やれやれ。足りない海上兵力を無法者で埋めるのはやっぱり無理があったかな?」



 彼女が今、一番恐れているのは彼女の宗教政策の結果で袂を分かった教皇庁が異端討伐の名の下に星字軍を組織し、海を渡ってくることだ。

 いくら地力が強いリザードマンとはいえ、大挙として押し寄せる星字軍を撃退できるとクローバーは考えていない。ただでさえ豊かとはいえない国土なのに北ブリタニアでは種族性の違いから独立の気配まである。おまけに王位を簒奪しようとする貴族も後を絶たない。

 そんな情勢下一兵でも敵が上陸してくれば間違いなく連合王国は瓦解する。


 だからこそ海上で星字軍の侵攻を阻止しなければならないが、その兵力はロシェルを巡るガリアとの小競り合いですり潰されてしまった。

 そのため私掠船許可状を発行し、海賊を手懐けようとしているのだが、自由を愛する者達を飼い犬にすることはできないようだ。



「ま、あの船は使えるようだし、今はそれでいいか」



 イスパニアが生んだキャラック船の性能評価として購入した『プルメリア』号に自国産大砲を試験的に積んだ名実ともに実験船の評判は思いのほか良い。

 だがセーカー砲の評価はいまいちだ。この大砲は真鍮より安価な鉄によって作られているためベースとなった魔族国の八十四ミリ野戦砲に比べ摩耗や熱に強いという特性をもっているが、鋳鉄は高度な技術がいるため製造所が限られるし、青銅より鉄は脆いため砲身を肉厚にしなければ強度を保てないため重量がかさむというデメリットを抱えていた。

 その上、鋳鉄の不備から腔発事故を連発するわ、ただでさえ命中率の悪い砲を揺れに揺れる海上で扱うのだから命中などほとんど期待できないし、なにより小口径故に破壊力に乏しいため威嚇程度にしか使いようがないという有様だ。



「陸戦ならあるいは……。いや、冶金技術の改良が必須なのはいうまでもないが、火薬の質も重要か……? やっぱり技術習得のために魔族国への留学は必須か。ならプルメリアに口利きしてもらうしかないけど……。はぁ。あんな啖呵を切ったのにぼくときたら……」



 それに忌々しいガリア王へ返書をしたためなくてはならない。これでは新しい夫との逢瀬はあとまわしだなと彼女は執務に向かうのであった。


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