それぞれの冬
リーベルタースは教皇庁の最奥――教皇執務室の扉の前に立ったナイは臆せずその豪奢な扉を叩く。
するとほどなく入室の許可が下り、彼女は執務室へ入ると眼前には書類にペンを走らせる四十も半ばの男がチラリと目をあげてきた。緑の祭服に夜空を表す濃紺の帯――パリウムを肩掛けにしたその男こそ星神教の最高指導者たる教皇ヨハネス十八世その人であった。
「ナイ司教か」
「猊下よりの召喚命令に応じ、参上いたしました」
ヨハネスは興味なさそうに再度書類に目を向け、ナイは糸目を緩めて彼の言葉を待つ。部屋の片隅で熱を吹きだす火の魔石がくべられた暖炉の温みがゆるく滞留するその部屋が沈黙で埋まろうとした時、ヨハネスが口を開いた。
「大司教選挙は残念だったな」
先だって行われた魔族国大司教区の長を巡る選挙に出馬したナイはエルザス系の司教や司祭を抱き込んで票田を作り上げていたが、対抗馬に圧倒的な票数で負け、これからオルクスルーエ教会へと帰るところであった。
もっとも落選した当の本人の顔は緩く弧を描いた目と口があるだけで感情を読み取ることはできない上、残念というヨハネスも残念そうとは言い難い表情をしていた。
「いえ、これも主の御導きです。まだその時ではない、ということなのでしょう」
「本気で異教徒の娘が大司教になれると思っているのか?」
「なってみせますよ。教皇猊下。いえ、父上」
「………………」
ヨハネスの瞳が書類から跳ね上がり、ようやく双眸が愛娘を捕らえる。見開かれたその目で見た娘は記憶の中の存在より戦地でたまたま拾った異教徒の女に似てきていた。その肌の色や髪の色がではない。目元と鼻立ちがどうしようもないほどあの女に似ているのだ。と、思えば顎のラインは自分に似ている。似てしまっている。それが堪らなく、堪らなく憎かった。
もしあの時、あの女が死んだあの時! 自分が情をかけずにスラムに捨て置いておけば――。いや、それはありえない。
例え生まれ落ちた娘が人をたぶらかす邪悪な蛇であっても、彼はあの女の忘れ形見であるナイを見捨てることはできなかったろう。
「まさかこの大司教選挙で万が一にも勝てる見込みがあったか? お前がなにをしようと、それこそガリアの司教を幾人かそそのかした程度で人望が覆ると思っていたか?」
「いやいや、まさか! わたしはこれでも身をわきまえているつもりです。対立候補のアレッサンドロ司教は今年で三十九歳、人格も優れていると聞き及んでおりましたし、天地がひっくり返ってもわたしが勝てるなど思っておりませんでした」
「……負け惜しみではないな。織り込み済みの敗北か。何が目的なのだ?」
薄く張り付いた笑顔がこくんと傾き、わざとらしい疑問を投げかけて来るが、今度こそヨハネスの瞳は書類に傾いていた。
今、教会は夏ごろから起こり出したガリアの暴走に手を焼いていた。それも暴走を主導するのが司教位を中心とした星職者達であり、それに民衆もガリア王家も追随しているのだから手に負えない。
そのおかげでガリア出身者を中心としたガリア派閥の枢機卿の立ち位置が崩れたり、宗教改革の名の下にガリアの暴走がリーベルタースに波及する兆しが見て取れており、各派閥のパワーバランスが大きく変わろうとしていた。
その矢先に行われた大司教選挙にナイがなにを仕掛けて来るかと彼は考え続けていたのだが、目の前の女は白を切るばかりで目的が露わにならない。
「フランシスコ枢機卿はルイス枢機卿に並ぶ優秀な男だ。それをお前は辺境のガリアから救い上げた恩があるとでも思っているのだろ? だが島流しにあう程度は優秀な男ではある。お前の危険性などとうに気づいているだろう。あの人はもうお前に手を差し伸べはしない。まぁ此度の票数を見れば分かる事だろうがな」
「もちろん。フランシスコ枢機卿にはよくしていただきましたが、それだけだと思っております。ただわたしの魔族国宣教に尽力してくださった恩を忘れるつもりはありません。あの方は今でもわたしの良き師ですから」
その言葉にヨハネスの握っていたペン先がぐにゃりと歪み、インクが醜い染みを作り出す。
そうか、コイツの目的は大司教選挙で昇進することではなく、この大司教選挙を使って名を売るために出馬したのか、と納得する。
彼女は終始自分が魔族国通であることを枢機卿や大司教に触れ回り、彼女が作り上げた貧弱な票田も魔族国に彼女ありと判を押したような同じ内容の推薦状を送り付けてきていた。
そしてフランシスコ枢機卿だ。彼は魔族領域における宣教活動の先触れとしてナイを派遣したという実績を持っており、彼が枢機卿団に君臨する限りその評判はついて回る。
「目的は売名か」
「なんのことやら」
「ガリアでの信仰秩序が乱れている今、それを掣肘する星字軍遠征の派遣は現実味を帯びた問題だ。お前の狙いは星字軍の軍団長になることだな?」
教皇の意向を受けて信仰秩序の回復に努める星字軍の長は慣例的に教皇の代行たる大司教がその任についてきた。
もし対ガリア星字軍が編制されればその主力は魔族国が担うものとなる。その際、魔族国事情と軍事事情に長けた人物が軍団長に就任するのは想像に難くなく、その人物こそ最初期から魔族国において宣教活動を行ってきたナイしかいない。
その上、彼女は魔族国の軍政の一切を手中に収めたオークと個人的なパイプを持っている。これほど軍団長に適任な存在はどこを探してもナイ一人だけだ。
今回の大司教選挙ではそれを枢機卿団に嫌というほど分からせたことだろう。
「お前も法ではなく戦にて身を建てる、か」
かくいうヨハネスも宗教的研鑽をつんで今の地位についたのではない。彼もまた星字軍遠征の軍団長として大司教に就任し、それを足掛かりに星神教のトップに上り詰めた男だ。
故にナイが行おうとしていることが自分への当てつけ――復讐であることを即座に理解していた。
何を隠そう彼が戦地で捕らえた奴隷女こそ、彼女の母親なのだから。
「猊下でさえもう止められはしませんよ。フランシスコ枢機卿は中央へ渡られてしまったのです。もっとも新任のアレッサンドロ大司教猊下は着任して日も浅い上、あの方の前職は神学校で教学研究を主にしていた学究の徒。軍事面に関してはわたし以上の素人です。事がおこれば枢機卿団は満場一致でわたしを軍団長に推挙してくださることでしょう。誰も降りかかる火の粉は浴びたくないものですし、わたしは蜥蜴の尻尾に適した存在なのですから。クスクス」
「やはりフランシスコを呼び戻したのは早計だったな。ルイスの危惧は的中していたよ」
「ルイス……。あぁ、たしかケラススの御父上の――」
「“父”ではない。お前もそうだ。お前らに“父”はいないのだ。故に――」
「委細承知しております。教皇猊下」
星職者の妻帯が禁じられているため、彼らは公には親と子という関係を隠す。特にナイのような後ろ暗い誕生を持つ者は特に。
そうした者は教会の孤児院に収容され、多くは修道士として、中には神学校に進学して叙階を受けて星職者となる。ナイもまたその一人であった。
「もうよい。下がれ。当分お前の顔は見たくない」
「クスクス。仰せのままに。しかし再会は避けられませんよ。では父上に星々の恩寵があらんことを」
そうしてパタンと扉の開閉音と共に静かになった執務室に大きなため息が漏れるのであった。
◇
「それで、ぼこぼこにされた上、賊には逃げられた、と?」
ホテンズィエ侯爵の詰問に頷く。
それよりも昨日から腫れが一向にひかない。そのせいか、部屋の暖炉の熱がしみて痛い。
「オークロード卿! とんだ失態だぞ。陛下の御所在をよもやエルシスに漏らしてしまうなど言語道断! どう責任をとるつもりだ!」
「まぁまぁ。ファルコ殿。オルク殿は身を挺して陛下をお守りになられたのだぞ。それに陛下からはオルク殿を処罰せぬよう仰せつかっておるのだ。それを無視するわけにはいくまい。それよりも前にも増して男前があがったのではないか? ハッハハハ」
この狸爺め……。こっちは口の中を切って痛くて喋りずらいからって好き勝手言いやがって。
だがハピュゼン様からの追撃を抑えてくれるというのなら怒る道理はない。
てか昨日は最悪だった。必ずあの猿獣人を殺してやると思ったのに返り討ちにあった上に陛下とローズマリー様にその様をばっちりと目撃されてしまったのだ。
もう目も当てられない。いや、物理的に瞼が腫れて視界がやぼったいのだけど。
それにしても、だ。あの男――オドル、だったか? あの顔つきはどう見てもモンゴロイドのそれだった。
前々から少しおかしいと思ってたんだ。プルメリアが急に四圃式農法が――とか新しい盤上遊戯だとかいって将棋を紹介してきたり……。
つまりは奴も俺と同じで前世のような先進的な知識を持っていたのだ。見た目的に転生したとは考えにくいが、前世の知識を持っているのは確かだ。
まぁだからといって仲良くしたいとは思えないが。
「それで、陛下の御容態はどうなのでしょう?」
「あぁ、侍医からは外傷もなく至って健康という所見を得たが、昨日の今日だ。過労もあるだろうし、寝所から出られることはないやもしれんな」
「では同盟は?」
「ひとまず調印式には欠席するほかあるまい」
そして三人そろって今後の事務的な話をしていると重々しい音を響かせて扉が開き、そこに目元を腫らしたリーリエ陛下の御姿が現れた。
え? 今日は寝ているのでは――!?
「へ、陛下! まだ横になられていた方が良いのでは!?」
「ありがと、カレン。でも大丈夫」
ゆっくりと歩み寄って来る小さな姫に気おされ、思わず赤い絨毯の引かれた床に平伏するとその小さな手がゴツゴツとジャガイモのような不出来な顔に伸びて来る。
「な、なにを――!?」
「……まだ痛む?」
その細くて冷たい指先が腫れた瞼を撫でて下さる。慈愛に満ちた瞳に涙を溜め、それでも泣くまいと振る舞うその姿にハッとさせられる。
俺はこの優しさを知っている。部屋に閉じこもった俺に毎日欠かさずご飯を届けてくれた母の慈しみと同じ優しさだ。
こんな醜男に手を差し伸べ、傷をいたわってくれる幼女に俺は何をできた? あの夜、ローズマリー様が傍におられなかったら、間違いなく俺はオドルに今度こそ殺されていただろう。
そう思うと頬に熱いものが流れ出していた。
「ご、ごめんなさい! 痛かったですか?」
「いえ、いえ! ただ陛下の御身を守れなかったこの身の不徳を恥じ入るばかりです。どうか、どうか伏してお願い奉ります。改めてどうかこの身に罰を――!」
あぁ、かみさま――! かみさま――ッ!!
せっかく前世の知識があるというのに。せっかくオーガにも負けぬ巨躯に生まれ落ちたというのに! どうして俺は人間一匹から陛下をお守りする力がないのでしょう!?
「……宰相」
「はい、陛下」
「今回の一件、不問に出来ぬであろうか?」
「はは、何を仰せなのです? 陛下は昨日まで病に伏せられておられただけではありませんか。何も問題は起きていないのですから罰を与える者もおりません。オルク殿もそれでよろしいですな?」
だがそれでは俺の気が済まない。……とはいえ、陛下の望みがそうであるのならば従う他にない。
「ファルコ。今後の予定は?」
「はい、正午に同盟締結式典を執り行うことになっておりますが、昨日の事もあります故、調印は日を改めて、と考えておりますが――」
「いえ、今日行います」
いつになく強い言葉に三人で顔を見合わせる。いつもの子供然とした無邪気さは一体どこに消え失せたのだろうか?
「陛下、畏れながら申し上げます、昨日の今日です。本日はお休みになれた方がよろしいと俺は思いますが」
「昨日の今日、だからです。もう、カレンも、オークもゴブリンも、魔族国の民がにんげんにきずつけられてはいけない。それには国を強くしないといけないでしょ? なら余は一刻も早く同盟を結んで国を強くしたい」
な、なんと! なんとご立派なお考えか!
いや、わが身の不甲斐なさから陛下がそう決意せざるをえなかったというのは複雑だ。
俺はこの子に子供としての幸せを享受する時間を奪い、魔族を統べる王へとさせてしまった……。
ならばその臣たる俺は陛下の御心を安んじ奉る義務がある。
「陛下の御決意、このカレンデュラ、身の引き締まる思いにございます。これより一層の忠義を尽くし、陛下の宸襟を悩ますガリアを掃滅し、魔族国一万年の安泰を守るべく鋭意邁進する所存であります」
「うん、よろしくね」
そして今度はホテンズィエ侯爵に向き直ったリーリエ陛下は「婚約のお話だけど」とどこか罰が悪そうに口元を歪められる。
それに対し、ホテンズィエ侯爵は朗らかな笑みを浮かべ、陛下の前に平伏する。
「ご心配なさらずに。お相手のヒュアツィンテ皇太子殿下は音楽と書を愛する好エルフと伺っております。陛下の御容態をひどく憂いておられたとか。きっと良き夫婦になると思われます」
「うん。あいさつができなかったので、改めて席を設けて」
「御意に。ただ、陛下。そう急いで大人になる必要はございませんよ。まだ貴女様は我らの姫にございます。お辛きこと、耐え難きこと、お怒りになられることもございましょう。その時はこの老いぼれの背中に隠れ、お泣き下され。それくらいの大きさはあるかと」
ポンとたるんだ腹を鼓のように打ち鳴らすとクスリと笑い声がもれる。
力なく笑う横顔が今度はハピュゼン様へ向く。それに彼は背中の羽をバサリと改めてしまい、膝をついて頭を垂れる。
「国境策定こうしょうはどう?」
「……依然難航しております」
「できるだけ国益を損なうことがないよう求めます。ですが、同盟に障らないよう譲歩も考えて」
「………………陛下のご意志のままに」
「ごめんね。余が弱いからファルコが、ハピュゼン王国が苦しんだよね。ごめん」
「陛下! 陛下自ら臣に謝罪を口になされてはなりません。陛下はこの世のあまねく者を治めるべき尊きお方。そのような方が非を認めてはならぬのです。ですが……」
ハピュゼン様は唇をくちばしのように尖らせて言葉を紡ごうとするが言葉にならないのか空気ばかりもれる。
それに呵々とホテンズィエ侯爵が腹を再度打ち鳴らす。
「陛下。このハピュゼン殿も、そしてオルク殿も、そしてこの私も陛下のことを終身お支えする所存です。陛下はより陛下らしくお振る舞いくだされ。ただそれでも、時にどうしようもなく子供に戻りたい時もあるでしょう。その時はどうか我々を頼りくだされ。それが大人の勤めですゆえ。そうそう、大人になられるのであれば侍女を困らせる遊びはご卒業されたほうがよろしいかと」
「ありがと。ありがとう……」
そして小さな姫は目元を強く拭うと「公務に参りましょう」と力強く微笑んでくれるのであった。
◇
リーベの街はリーベルタース王国、エルサス=ベースティア二重帝国、魔族国の三国同盟に湧く住民で溢れ、いつもの倍以上の喧噪が入り乱れていた。
もっとも住民の誰もが同盟の内容など知らず、ただ目出度い目出度いと騒ぐ始末はいささか滑稽であった。
ただ彼らは日々の鬱憤を晴らすようにエールを飲みあい、同盟万歳と高らかに笑う。そんな陽気な空気の中、ただ二人だけ泥に漬かったような暗い顔の人間達がいた。
オドルとマリアは人の流れにあわせて開放されたリーベ城の中庭に歩を進める。そこには三国の国旗が木枯らしに揺れており、オドルは自分達の行動が全て無駄に終わったのだと悟った。
魔族の計略を打ち砕くという目的も潰え、仲間だと思っていたハルジオンから決別宣言を受け、そしてリーリエさえも奪われてしまった。
(いや、それはただ僕が甘かっただけだ。でも、それでももっと別の道はなかったのか?)
リーリエも、ハルジオンも笑って暮らせるような道が……。
その時、わぁっと民衆が活気づく。それに気づいて目線を上にあげると壮麗な宮殿のバルコニーに次々と人影が現れだした。
その中にヒョコリと顔を出した赤髪の幼子にオドルは胸が締め付けられる思いだった。
頭には重そうな宝冠を戴き、キッと口元を噛みしめるその幼女の瞳には昨夜まで確かにあった天真爛漫な輝きが失せていた。
「オドル。行きましょう」
「……うん」
まるで昨日の出来事が嘘であったかのような様変わりにオドルは人知れず拳を堅く握りしめていた。
何が間違っていたのか? いや、間違っていたのは僕のほうだ。
ヌーヴォラビラントの夜襲でもそうだ、あのドラゴニュートの少女を見逃したがために魔族は軍勢を立て直し、剣聖エトワールを救う手だてを考える時間がなくなってしまった。
(何が転移者だ、何が救国のために異世界から召喚されただ)
その時、オドルの手がぎゅっと握られた。その隣には力なく微笑むマリアがいた。
「思い詰めちゃだめよ」
「でも――」
「わたくしも、兄様も認識が甘かった。突然飛び込んで会議を妨害しようとしても、その程度で大国が動くわけないのにね」
「それでも、僕達は――」
「しょうが、ないよ……」
たった二人の、それも子供の域を出ない二人に何ができたというのか。
例えBランク冒険者として大人顔負けの無双を誇る二人でも国を動かすなど不可能なのだ。
そんな無力を噛みしめながら人の流れにそって宛もなくリーベを歩いているといつしか大路を外れ、裏通りに紛れ込んでしまった。
そして彼らはたまたまとある一軒の商会の裏手に出た。
「早く荷を詰め込め! 同盟締結は一大商機だ! 急げ荷役ども! 燧発銃の詰め込みを急げ!!」
甲高い声でうるさくまくし立てるゴブリンが一匹。それに肌の浅黒い奴隷達が冬だというのに粗末な薄着で酷使されていた。
それにオドルがむっと口を出そうとして、やめた。醜悪な小人は確かにゴブリンであり、冒険者ギルドから討伐対象になっているモンスターだ。
だが成金趣味に仕立てられた黒の外套に金糸の刺繍を施した彼はモンスターではあると同時に商人としての成功者なのだろう。
もうオドルは一概にモンスターを悪であり、敵であると思えなくなっていた。
「おい、バカ野郎! 使えないうすのろめ! 火薬の取り扱いは慎重にしろと何度も言ったらわかる! いいな、くれぐれも――」
ん? といううなり声とともにオドルの足が止まる。
今確かにこのゴブリンは”火薬”といった。
気がつけばオドルはそのゴブリンの元に歩み寄っており、マリアが止める間もなく話しかけていた。
「あの、先ほど火薬っていいましたよね?」
「な、なんだあんた?」
ギョロリとした目が無遠慮にオドルをなめ回すが、彼はそれに気を止めることなく出荷作業を進める奴隷達を見渡し、そして木箱に詰められようとしているソレに目が止まる。
「あの、それ、それを見せて欲しいのですが!」
「――! あ、あぁ、お客様でしたか。これはこれは。ようこそ、ナリンキー商会へ。ささ、ここではなんです。奥へどうぞ。おい、おまえ達! さっさと仕事をしろ! さもなけば飯抜きだぞ!! ささ、お客様、どうぞどうぞ」
そして二人はゴブリンに誘われ、商店の奥に消えていくのであった。
いけなーい! 遅刻、遅刻!
新元号が発表されたので初投稿です。
また、このお話にて今章は終了となり、次話から新章スタートとなります。
それではご意見、ご感想をお待ちしております。




