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新型野砲とネクロマンサーの悩み

オース会戦より二ヵ月。夏に差し掛かろうとしているのにどんよりとした雲が低く垂れこめる中、空を割らんばかりの砲声が轟く。

 濃密な発砲煙から姿を現した大砲は特火兵の標準装備となっている八十四ミリ野戦砲ではなかった。

 既存の野戦砲よりも一回りは大きいそれ――新型野戦砲を自慢げに披露するのは銃砲寄合の長であるティターンだ。彼はノームらしい短躯なれどがっしりとしと身体をしているが、その口ひげは他のノームと違って几帳面に整えられており、緩んだ口元には自信が満ちていた。

 どうもかなり気合が入っているようだ。



「如何でしょう。この試製一〇三ミリ野戦砲は? これは既存の八十四ミリ野戦砲を拡大発展させたものとなっており、口径は名の通り一〇三ミリに増大。全長も四十センチ伸びて二メートルに。重量は倍近い五百八十キログラムとなりましたが、既存のものと同じく馬四頭で牽引できます。また薬室の増大により五キロ弱の球状砲弾を八百メートル先まで放つことができるようになりました。もっともこの数字は有効射程であり、精度を度外視すればさらに射程を伸長することが可能です」

「確か八十四ミリ野戦砲の有効射程は七百メートルであったな。砲弾重量が増しているのに射程を伸ばすとはよくやった」

「お褒めにあずかり恐悦至極に存じます」



 オルクスルーエの郊外に広がるオークの野原(オルクカンプ)演習場にて新型野戦砲のお披露目会に招かれた俺は前日まで降り続いていた雨によって泥濘に龍革のブーツを汚しながら改めてティターンが提示した一〇三ミリ野戦砲を検分する、ふりをする。

 まぁ実をいうとこの新型野戦砲、お披露目会の招待状が届いた段階ではまったく採用する気がなかった。

 そもそも銃兵を支援しうる八十四ミリ野戦砲は我ながらに傑作野戦砲であり、これまでの戦歴から更新する必要性を感じていなかった。


 もっとも先のオース会戦において猿共のマジックキャスターを性能的に凌駕できないことが分かっていたが、火薬の質を向上させたり、何かしらの方法で砲身の仰角を増すことができれば射程を伸長できるだろうと現場指揮官からの報告を受けていた。

 そのため八十四ミリ野戦砲に小改良を加える程度で敵マジックキャスターに対抗可能であると考えていた(そのため新型野戦砲の採用よりも対マジックキャスター戦を想定した砲術研究部隊を発足させるつもりでいた)。

 それに新しい大砲を開発するより既存のものを改良したほうが安上がりだしね。


 そんな思惑とは別に遡る事およそ一年と半年ほど前。ティターンには第二次ウルクラビュリント奪還戦の戦訓に基づいた新型の攻城砲の研究を命じた際、彼は二種類の仕様書を提出してきた。

 その一つは破壊力に重点をおいた新設計の攻城砲であり、もう一つが既存の八十四ミリ野戦砲を拡大発展させた新型野戦砲であった。

 それら二つを吟味した結果、後に三十二センチ臼砲と呼ばれる破壊力を第一とした前者の設計を採用することになり、後者の新型野戦砲計画は凍結されることになった。


 だが、どうやら選定試験後もティターンは細々と後者の研究を続けていたらしい。

 そんな折に八十四ミリ野戦砲の能力不足の噂をどこかからか聞きつけた彼は商機と思ってかこの新型野戦砲を売り込んできたと言う訳だ。

 彼曰く『八十四ミリ野戦砲は試作の域をでないため性能的にすぐ陳腐化する恐れがあり、後継砲の試作をしていた』とのこと。

 まぁ俺が伝えたグリボバール砲システムを基に八十四ミリ野戦砲をそのまま作っただけなので職人として納得はしていなかったのだろう。



「こちらの一〇三ミリ野戦砲は射程の面で三十二センチ臼砲より七百メートルほど短くなり、破壊力も劣りますが総合的に見れば遥かに使い勝手の良い火砲となっております。恐らくオルク王国――ひいては魔族国において標準的な野戦砲となることでしょう」

「ふむ、確かに八十四ミリ野戦砲を代替しうる兵器であるようだな」



 破壊力にステータスを全振りした三十二センチ臼砲は代償として使い勝手が悪すぎた。

 そもそも砲の自重だけで千五百キログラムもあるため兵達からの評判は散々ななものが多い。移動も馬六頭で牽かないといけなくて不便だし、装填も三十分くらいかかる代物なので流動的な野戦では不便過ぎて使い道がない。


 いや、でも城を攻撃するなら口径お化けの方が効果的じゃん? それに大きい兵器って強いはずだから三十二センチ臼砲も大活躍すると思ったんだ……。

 きっと榴弾の開発が間に合っていれば八面六臂の活躍をしたと思う。うん、きっと。

 そんなことを考えていると一〇三ミリ野戦砲に取りついていたティターンの弟子達が再装填を終え、再び砲火が迸る。



「では――!」

「この一〇三ミリ野戦砲は正式採用に値しうるな。まずは三十門ほど増加試作を発注し、部隊運用の状況を鑑みて正式採用としよう。その性能評価後、魔族国軍として全軍に行きわたるよう発注をかける」

「ありがたき幸せ!」



 あー。買っちゃった。絶賛軍拡中の魔族国でも軍費は有限であり、無駄な買い物はできないのだが、ティターンには個人的に()()()()()()()()()()ので採用せざるをえないのだ。

 いや、今考えても五ランクある免罪状のうち四ランクのものが買える額を積まれたら誰だって頷くだろ。男爵とか下級の貴族では手が出ないような額の免罪状が買える額だよ。ほんと、そんな金額を差し出すなんてもうね、彼は善人以外の何者でもないよね。そんな善人からの施しを拒むなんてありえないし、そんな人には何かこう、善意のお返しをしたいじゃん? それで俺には軍務伯という権限があるわけだし、それを活用して彼のお願いを聞いてあげるのもやっぱり人助けでしょ? 

 それに誰も不幸せになっていないから実質これは善行なのだ。



「あとは俺に任せておけ。全て良きように取り計らう」

「ははぁ! さすがは閣下!」



 いやぁ人助けをすると気持ちが良いなぁ。いや、でも蓄財は罪だからな。日々清貧に生きねばならないのだからあのお金は免罪状に変えてしまおう。そうすれば主もお喜びになるだろうし、冬には同盟締結のためにリーベルタース王国に出向く用事があるからその際に教皇庁で直に免罪状を買おう。きっと教皇猊下もお喜びになられるはずだ。



「して、新型野戦砲の採用はよいのだが、隣のその大砲は?」

「はい、こちらはまだ試作段階ではありますが、三十二センチ臼砲の設計時に仰せつかった新型砲弾用の専用砲となっております」



 一〇三ミリ野戦砲の隣に鎮座しているのはかなり小ぶりな砲だ。砲車自体は既存のそれを流用した一軸の車輪に箱型脚(ダブルブラケット)型の砲架という標準的なものだが、そこに戴く砲身は異様なまでに短かった。



「この砲で使用する砲弾――我々は柘榴弾と呼んでいるのですが、こちらを使用します」



 ティターンが徒弟に命じて運んできたのは既存の鉄球砲弾と同じ形をしていたが、頭の部分に円柱状のくぼみがある代物だった。



「この砲弾は内部が中空になっており、そこに火薬が仕込んで――。いや、閣下にそこまで説明は不要でしたな」

「要は擲弾と同じ絡繰りだろ。で、肝心の信管は?」



 すでに砲弾の内側に炸薬を込めるという発想は銃兵の火力を増強するために擲弾として採用されている。

 だが問題はその炸薬への着火方法だった。これまでは導火線に火をつけてから砲弾を装填していたが、その火によって砲身内の装薬に引火して暴発したり、着火のタイミングを誤って砲身内で爆発する事故が頻発して使いようがなかった。それに砲弾も発射の衝撃で砕けしまうようなこともあって実用に足らなかったのだ。



「こちらになります。この信管は導火線をブナの木で作った木栓の中に封じており、これを砲弾の窪みに木槌などで押し込みます。この木栓の長さを調節すれば爆発時間を調整できるという代物になっております」

「肝心の着火はどうするのだ?」

「発射時の爆圧で自動的に着火できますのでこれまでのような腔発事故は激減するかと。ただ砲弾の耐久力の向上は技術的、費用対効果的にも難しく、長い砲身によって加速を得る――高初速で砲弾を遠隔地に投射する既存の野戦砲では砲内の圧力に弾殻が負けてしまうのが現状です。そのため試作砲では思い切って短砲身にし、初速を下げることにしました」



 ティターンの説明によると砲身を短くしたため射程、低伸性でこれまでの野戦砲に劣るものの、砲全体を軽くすることができる上、大きさもコンパクトになるため運用や生産の面で利があるとのことだ。

 まぁ期待の榴弾――いや、柘榴弾だ。さっそく装填してもらい、その真価を見たいところだ。そのため早速一発撃ってもらったが――。



「――? おい、今発射したのに砲弾が爆発せんぞ」

「ふ、不発、のようです。最近の長雨のせいで地面が緩くなっていたせいか、砲弾が泥に潜ってしまったのかと。そうなると信管の中に設置した導火線が鎮火することもあり――」



 柘榴弾を撃ったのだが、その砲弾は放物線を描いたかと思うと地面に噴煙をあげて叩きつけられてしまった。これでよくもお披露目会にもってこれたものだと口を開こうとした時、その噴煙を突き破るように新たな爆発が生まれた。



「不発ではなかったようです、閣下」

「……そのようだな。だがもっとまともに動く信管を製作せよ」

「仰せのままに」

「さて、もうよいか? では一〇三ミリ野戦砲の購入手続きと移ろう」



 ぐちゃぐちゃと泥を踏みしめて演習場の片隅に広げられた天幕に向かうと背後からバタバタとティターンが慌ててついてきた。



「閣下! お待ちください。先の失態は開発段階であればよくあることで――」

「失敗なぞ気にしておらん。それより柘榴弾が如何に重要な兵器であるかこの俺が一番理解しているからな。研究費が足りないなら遠慮なく申せ。だが柘榴弾も重要事項ではあるが、年明けにはリーベルタースやエルシス向けに銃砲の輸出が始まる見通しだ。くれぐれも品質には注意せよ。各国が注目しているのだからな」

「仰せのままに。我が銃砲寄合の総力を挙げて製造する所存です。閣下の御英断によって結成を許された銃砲寄合では度量衡を統一し、製造には我が弟子を各工房に監督役として派遣しておりますので規格化された品を安定的に製造できます。これも閣下の御慧眼あってのこと」

「よせ。世辞をいわれなくても研究費くらいだしてやる」

「いえいえ。そのような。これからも閣下の御贔屓になれればこの上ない幸せです」



 ティターンは銃砲寄合の長についてから各工房の囲い込みを行い、それに反発する勢力は魔族国で鍛冶が出来ないよう手配してやった。

 そのため製品の規格統一がなされ、安定的な戦力を供給することができるようになったが、その反面価格競争がないので経済的には停滞を生み始めていた。

 でも身内で争っても仕方ないからね。それより高性能な兵器が出来るなら多少高くても俺は買うし、他の国主にも買わせる。

 全てはガリアの猿共を一匹残らず絶滅させるためだ。そのためなら財貨は惜しまないし、主も“富んでいる者が星々の元にはいるのは、むずかしいものである”と仰せだ。清貧に生きねばならないのだから金を手元においておくのはよろしくない。



「ん? あれは――」



 ふと、視界の端に演習中と思われるスケルトンの群れが映った。

 術者の命令によって一糸乱れぬ行進を見せる骨の化物達だが、それを操っているのはオークなどではなく、土気色の肌をした女と、その背後で様子を伺っているイトスギがいた。



「ちょっとすまない。先に行っていてくれ」



 行進訓練をする死霊術教導大隊のもとに向かうと十人ほどのネクロマンサー――それも明らかに生者とは思えぬ者達がスケルトンを操っているようだ。

 すると死人の女――リッチというのだろうか? が敬礼をしてきたのを皮切りに訓練中の他のリッチも敬礼をしてくる。そんな中、ただ一人不機嫌そうなイトスギがだらだらと仕方なさそうに挙手の敬礼をするのだった。



「皆、ご苦労。訓練を続けるように」



 答礼を返してイトスギを呼びつけると、やはり不機嫌を露わにしている。コイツはウルクラビュリント奪還戦やオース会戦で手に入れた死体から起き上がった死者――リッチやデュラハンの指導を任せてからずっと不機嫌なのだ。



「捗っているようだな」

「デュラハンの方は騎兵の人達に任せっきりだから知らないけど、まぁぼちぼちと。リッチ達は元々魔法への適性が高かったからかオークに教えるよりだいぶ楽にやれてるよ。それに湿気が気になるけど、雨続きのおかげで気温があんまり上がらなくて助かってるかな」

「それはなによりだ。で、何に腹を立てているんだ? 怒らないから言ってみろ」

「いや、どうせ怒るでしょ……」

「ふむ、どうやらまずはその減らず口をもぎ取って従順な口に付け替えるべきか?」

「………………。……いやだって可哀想じゃん」



 チラリとリッチ達を見やるイトスギの瞳には憐憫が宿っていた。

 可哀想って、リッチ達のことか?



「そうか? 死んだと思っていたのに第二の生を得られたのだぞ。むしろ嬉しくはないか?」

「いや、まぁ考えようによってはそうなんだろうけど、せっかく死ねたのに生き返るのって残酷じゃない?」

「うーむ。少なくとも俺は嬉しかったぞ」

「……? ……?」



 おい、何言ってんだコイツって顔やめろ。

 だけど俺としては前世でのことを清算できると思って喜んだものだ。実際、清算できているのかは……分からないけど。



「それじゃ聞くけど、あのリッチ――私たちも含めてだけど、その人格というか精神って誰のだと思う? 生前のそれと同一だと思う?」

「ん? 生前の記憶があるのだろ? なら同一だろ。記憶は唯一無二のものだからな」

「でも『神聖病論』って医学書には脳心説といって頭に精神が宿ると書いてあった。で、死ねばその精神は肉体を離れてしまうけど、脳そのものは残っているわけじゃん? で、アンデッドというのは死体に蓄積した魔素(マナ)が身体を動かす現象な訳で、魔素(マナ)が脳に蓄積された記憶を読み込んだ結果、疑似的に魂のような役割を果たしているだけにすぎないのではないかと――」

「待った! お前いつもそんなこと考えているのか?」

「――? 自分って何かって考えないの?」

「え?」

「え?」



 こいつ、もうネクロマンサーやらせるより哲学者か宗教家になった方が良いのでは?

 てか、そんな重いことを考えてるとは思わなかったわ! 知っていたら絶対に不機嫌の理由を聞かなかったぞ。だってそんなこと考えたことなんてないもん!



「ま、まぁお前の考えは分かった。で、可哀想というのは?」

「いや、分かっていないでしょ。つまりアンデッドというのは魔素(マナ)が身体を動かす延長線で脳を使っているに過ぎないのだからまさに人形だよ」

「それのどこが悪いんだ?」

「良いか悪いかじゃなくて、特に“かみさま”ってのを信じているのであれば問題であることがよくわかるでしょ。アレが救うのは魂であって魔素(マナ)じゃないんだから」



 うーん。確かに教学上、主は俺達の魂を御救いになられるというが、魔素(マナ)に関して星書にはそんな記述はない。

 でも魂の解釈範囲を広げればいけそうな気もするけど、勝手に解釈してしまうと異端といわれるかもしれんし……。



「いやいやいや。そんなこと考えた事もなかったから正直わからんわ」

「……それに人ってそれぞれ生きる意味ってあるでしょ? 何かの使命を果たすために生きているというか」



 「あー。それは考えたことある」と言おうとしてやめた。

 いや、なんか夢を追いかける若者が言いそうなことだし、それってどうも中身がないようで口にすると虚しくなりそう。

 何より前世ではそういうことばかり考えて、考えるだけで終わってしまった。

 そんな黒歴史を語る筋合いはない。それもイトスギに語るなんて、弱みを見せているようでなんか嫌だ。



「私たちは魔素(マナ)の集合体のようなもので、魔素(マナ)が切れれば元の死体に戻ってしまう。謂わば人の真似をしている人形に過ぎないし、そんな私たちに生きる意味ってあるの? そう思うとやるせないし、人間と違って子供を作って子孫に命を繋ぐこともできない。ただ生きる――動いているだけなんて、そんな苦しみを覚えるのは私たちだけでいいやって思っていたから」

「……だからお前、スケルトンの製造には協力していたが、特別なアンデッドのことを黙っていたのだな?」

「………………。まぁ」



 はぁぁと大きなため息をつくとイトスギは殺気を感じ取ったのかビクリと肩を跳ね上げ、数歩後ずさって顎をガードする。

 警戒する理由もわかる。だって特別なアンデッドのことをもっと早く知っていたら絶対量産するよう命令を発していたし、そうなればスケルトン部隊の運用方法だって変えた。少なくともネクロマンシーの訓練がなされたオークよりもリッチのほうに適性があるのだからもっと数を揃えていた。そうなれば銃兵の損害を減らせるからだ。対して死体なら殺しただけ増えるからジャンジャン死体を作れるような戦い方をした。

 だというのに特別なアンデッドのことを黙っていられたのは損失以外のなにものでもない。まさに業腹だ。



「い、言っとくけど聞かれたら話すつもりだったよ。でも聞かれなかったし、教会から連れ出した時に言われたのはネクロマンサーを教育しろってことだったからね、義務は果たしているでしょ!」

「やはりお前と出会った時にその減らず口を叩く顎を落としておくべきだったようだな」



 じりじりと間合いをつめるが、それと同時に彼女も後ずさりして間合いを保つ。数歩そうした攻防を続けた後、興が削がれたのでやめることにした。



「もうよい。曇りとはいえ、動くと暑い。終いにしよう」

「それは同感だね」

「……それに、生きる理由なんて生きている者でも分からんものだろ。死んだくらいでそんなものが分かるか」

「ふーん。主の導きが――。とかっていうかと思っていたけど? それにあんた()は生きる理由がハッキリしていてうらやましいと思っているんだけど?」



 生きる理由? もしかして主の道に生きる事か? そう思って訊ねると復讐のことじゃないの!? と逆に聞き返されてしまった。

 いや、それもあるんだろうけど。いやいや、そんな理由なんてきっとないんだろうな。生きるのに理由があるのなら前世はニートになって家を燃やすような末路は辿らんだろうし。



「まぁ復讐に専念したいとは思う。思うが、俺はオルク王国を治める大公で、子孫にこの領地と爵位を継がせなければならないし、主がお示しになられた十戒を守り、最後の審判に備えねばならない。それにメリアと共に生きていきたいとも思う」



 「それはごちそうさま」という呆れにイトスギが深い溜息を吐き出す。



「なんにせよ、生きる意味など流動的で不可視で、定まったものではない。お前が生きたいように生きればいいのではないか?」

「……まぁそれも考えようだね」

「この減らず口め。お前は意見を聞くだけで顧みないとはな。そんなお前のような奴は死ぬまで生きる意味でも考えていればいい。いや、もう死んでいるのか」

「ま、そうさせてもらうよ。なんか、愚痴ってわるかったね」



 さて、と日陰を目指して歩き出した時、ふと歩みが止まる。



「そういえば“あんた()は生きる理由がハッキリしていてうらやましい”といったな? 等とは俺以外に誰の事だ?」

「え? あのエルフだよ。なんだっけ? ハルジオン? だっけ? あれも中々生き意地の汚いやつのようだよ」

「あー。確かにな」



 あのエルフも確かに国を追われて七十年。未だに故国の復古を願っているのだから大したものだ。エルフとはそういうものだろうか?

 そういえばアイツも軟禁状態だが、そろそろ事を進めさせよう。冬の同盟締結の席にはあいつも座っていないといけないし、俺も同盟締結の席につくことになっているから色々と下準備をせねばな。

戦闘シーンのあとは宗教哲学シーンを書きたくなるのは自然なことですね。

ちなみにイトスギのいう『神聖病論』とはヒポクラスの脳心説をもとにしております。



それではご意見、ご感想をお待ちしております。

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