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オークに転生したので人間の村を焼いていこうと思う  作者: べりや
第二章 ウルクラビュリント奪還戦
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ガリアの思惑

 ガリア王国の心臓たる王都パリシイ。その中央を流れるセヌ河の畔に建設されたルヴル宮殿はガリアに王権が誕生した数百年前から増改築を繰り返してきており、様々な年代の建築様式が見て取れる荘厳な姿を横たえていた。

 そんな歴代王朝が居を構えてきた王宮のとある一室にて好青年然とした男――ガリア王国第一王子ルイ・デュードネ・ド・ガリアは早朝に届けられた書簡を読み直し、端正な顔を歪める。

 そこには魔族国に潜入させた間諜(スパイ)からの一連の報告が記されており、端的な内容は自分がしてきた対魔族国工作が失敗したと書かれていた。



「……ッ。はぁぁ。蜂起は失敗、ローゼの解放は叶わなかったか。これで今までの苦労は水の泡だな……」



 質素であるが品のよい調度品の整えられた私室に苦渋の声が響くと共に重厚な彫り物のされた机に拳が直撃する。

 しかし職人が丁寧に作り上げた机はミシリとも軋まず、ただ静かにその一撃を受け入れてくれた。

 ルイはしばらく怒りで顔を伏せていたが、すぐに呼吸を整えるや次の一手を考えるべく思考の取りまとめにかかる。



(考えろ……。考えろ……。これで魔族側が持ちかけてきた三年間の不可侵は白紙に戻ってしまった)



 そもそも事の発端は前魔王の王弟であるローゼ・リンドブルム・フォン・ドラゴから秘密裏に不可侵条約の締結を持ちかけてきたことに起因する。

 これは協調外交によって外憂に悩まされることなく国力を増強したいローゼの思惑があり、彼は最低でも三年間の平穏を欲していた。

 それと同じくしてルイは異世界よりもたらされた先進的な輪栽式農法を実施するにあたって広大な土地が必要であることを痛感していた。

 こうしてローゼは三年間の不可侵条約をガリア王国と結び、ルイはその見返りに魔族国南西部の小王国であるオルク王国の一部を割譲されることになったのだ。



「そのローゼが幽閉されたままでは話にならんぞ」



 もっとも両国の蜜月は長く続かなかった。

 不可侵が締結されたはずなのに併合したオークの迷宮――ヌーヴォラビラントへはそのオークから大規模な攻撃を受けた上、この密約の推進役であった当のローゼが魔王位を巡る継承戦争に敗れて幽閉されてしまったという。

 そのためルイは秘密裏に集めた犬系の獣人やリザードマンといったコボルトやドラゴニュートに似た傭兵を魔族国に送り、反乱を助長させたのだがそれも失敗したと先ほどの報せに載っていた。



「何もかも上手く行っていたのに……! それにオドルの新式農法にはどうしても土地がいる」



 オドルがもたらした新式の輪栽式農法――彼はノーフォーク式農法と呼んでいたそれは既存のような休耕地を作ることなく絶え間なく作物を作り、それによって家畜を増産し、その家畜を使って田畑を広げることができるという画期的な農法だ。

 ルイはその話を聞けば聞くだけどうして今までそのような農法が考えられなかったのか首をひねるほど感銘を受けたほどであり、外海を隔てた島国であるブリタニア連合王国の一部にも伝わっているという。



「それだというのにあの貴族どもは……!」



 殿下、騙されてはいけません。机上の空論でしかありませんぞ。

 殿下、土地の集約化と申されますが、共有地を取り上げては職にあぶれる農民がでます。

 殿下、その農法が万が一に上手くいくとしても麦の取れ高が減ってしまい、減収は避けられません。ご再考を。



「何が殿下、殿下、殿下だ。やりもせずに否定だけしおって! 確かに税収は下がるが一時のことではないか」



 従来の三圃式農法は冬穀、夏穀、休耕地の三つをローテーションさせるため収穫ができるのは畑全体の三分の二になる。

 対して輪栽式農法は冬穀と夏穀に加えて土壌改良のためのカブやクローバーといった中耕作物を植えるため四分の二しか穀物が取れなくなってしまうため短期的に見れば税収は低下してしまう。

 その上、効率化を図るため村民の共有地や複雑に入り組んだ農地を統合して広大な農地にそれらを集約する必要がある。そのため共有地に依存していた零細な農民が土地を奪われることにもなる。


 だがデメリットばかりではない。

 中耕作物によって家畜の飼料を増産出来るため本来では冬の前に屠殺するしかなかった家畜を越冬させることができ、それを労働力にして新田開発に着手させることもできる。

 そうなれば翌年以降も農地を広げることができるため各作物の生産量も上がり、好循環を生むことが目に見えていた。

 土地を追われた農民も魔族より割譲された新天地の開墾という職をあたえることで失業対策もできる。



「全て、上手くいっていたのに……!」



 既得権益にしがみついた貴族の妨害にめげず、輪栽式農法の普及に取り組んできたルイはくやしさで口の中が溢れていた。

 とは言え、全ての望みが絶えた訳ではない。

 不可侵こそ有耶無耶になったが、魔族から土地を得る事は出来たし、防衛拠点となりうる大都市も手中に収めることはできたのだ。

 悲観するばかりではない。

 それに彼は望みを新興のエルザス辺境領に託していた。


 彼の地は元々エルフの小王国――エルザス公国があったのだが、ガリア王国と魔族国に挟まれてしまうという地政学的な不運を抱えてしまい、幾たびも領有権争いに巻き込まれ、ついに七十年前に亡国となってしまった。

 そんなエルザスは三十年前に冒険者であるジャンによって平定され、その功績を称えて辺境伯領として彼に下賜されていた。

 その領主であるエルザス辺境伯ジャンは今でこそ年老いてしまったとはいえ、歳による硬直的な思考を持たず、元Sランク冒険者に相応しい柔軟な対応力を未だ持ち続けていた。

 そのためルイはジャンに命じて輪栽式農法のテストケースとして大々的な新式農法を導入してもらっていた(もっとも冒険者上がりであるジャンに内政的な知識がないため手当たり次第に農法を試しているという向きもあるが)。



「だんだん農民達もコツをつかんできていると報告が来ていたのに。これで農地を増やしてより作物を増産することに成功するはずが……!」



 魔族国と取り付けた不可侵条約の期限は三年、その間に輪栽式農法によって食料の増産に成功すれば魔族国――ひいては周辺諸国よりも抜きんでた国力を有する強国へとガリアは変貌するはずだった。

 特にガリア王国は東西に内海と外海へと接しているため、作物の増産がなった暁には貿易大国として君臨できるとルイは確信を得ていた。

 そうなれば内海交易によって富を荒稼ぎするリーベルタースや外海交易に力をいれる低湿地同盟とピスキス王国、それにブリタニア連合王国を押さえて海洋覇権を確立することもできるだろう。

 それに北方の雄たる帝政ルーシアと異教の宗教国家オストル帝国からの圧迫を受けて消耗を強いられている落日の帝国たるエルシス=ベースティア二重帝国などすぐに追い抜くことができることだろう。

 その上、北方の雄とはいえ厳寒のやせ細ったルーシアでは逆立ちしてもガリアに対抗できるはずがない。



「だからこそ不可侵が必要であったのに……!」



 もっともルイの絵図にはガリア全土での輪栽農法の普及が前提であり、さらにいえば輪栽式農法の成功も例え魔族国との不可侵が確約されていてもその道のりは遠いと言わざるを得なかった。

 絵に描いた餅を食せぬのは道理であり、予期せぬ現実の前にルイの壮大な構想は早々に頓挫してしまったといえる。

 そんな折り、部屋の扉が叩かれる。現れたのは城付きのメイド侍女であった。



「失礼いたします、殿下。陛下がお呼びです。なんでもヌーヴォラビラントの件について、と」

「分かった。すぐに向かおう」



 ルイの壮大な構想の中で残ったのはエルザス辺境伯領が獲得したオークの迷宮であった。

 彼の地には数多くの入植者を送り、輪栽式農法の実験場として機能していた。そこで輪栽式農法の有用性を証明し、ガリア全土でそれを行わせようとしていたのだ。

 ――が、入植一年目にしてカブの育成に失敗し、醜態をさらす結果になっていた(農民がカブの育成に不慣れだったからというのが原因だ)。

 そのため補助金を下賜したり、掃討を果たしたはずの魔族やスケルトン、狼などの獣害に対処するための冒険者の雇い入れなどで大きな負債を作る羽目になっていた。

 そうした事の申し開きをするよう召喚されたに違いない。

 そうルイは考えながら王宮の中庭に向かうとその一角にやせ衰えた壮齢も後半の男が腰掛けについて庭園を眺めていた。その周囲には屈強な近衛騎士達が周囲を固め、どこか物々しい。



「父上」

「おぉ。きたか。ごほ、ごほ」

「父上! 大丈夫ですか? お部屋に戻られた方が良いのでは?」

「なに、今日は気分が良い。それより風にあたりながら一局指したいと思ってな」



 腰掛けの隣に置かれたテーブルには縦横九マスに区切られたボードが鎮座しており、その上には小さな軍勢達が布陣を終えていた。



「ショーギですか」

「たまにはどうかね?」

「望むところです」



 すると侍女がどこからかルイの分の腰掛けを運んでくる。それとともに侍従が現れ、二つのグラスを並べるや、そこに氷魔法によって冷やされていたリンゴ酒(シードル)が注がれた。



「先手は譲ろう」

「ではお言葉に甘えて」



 パチリ、パチリと木製の盤面に駒となった歩兵が駆けていく。これも異世界から召喚された高校生――鳩楽踊(ハトラク・オドル)によってもたらされた盤上遊技であり、ガリアの貴族を中心に流行を見せていた。

 二人は無言で駒を差していたが、ある時ルイの父たるルイ十三世が顎に手をあてながら唸る。もっともルイとしてはただ遊技に付き合わされているのではなくヌーヴォラビラント情勢に関しての申し開きをするために呼ばれたのでは? と首をひねる。

 しかし父は一向にそれを問わず、真剣な面もちで盤面を睨んでいた。



「……父上。ヌーヴォラビラントの一件のことでお話があると思うのですが」

「ん? あぁ。そうだな。宮廷伯達がな、少し問題があるのではと言っていたぞ」



 少しばかり、ではないだろう。

 宮廷伯や有力諸侯の中にはあからさまなエルザス重視の政策をおもしろく思わぬ者は多い。特に領主であるジャン・ド・エルザスは辺境伯位を得ているが元はただの冒険者――平民でしかない。

 そんな成り上がりに国境防衛の重責を任せることを妬いていない貴族はいないといって良い。



「その上、な。エルザスからもヌーヴォラビラントの維持に限界を迎えつつあると報せを受け取っておる」

「それは聞き及んでおります。しかし今、オドルを中心に対策を練っているところであります」



 ヌーヴォラビラントを脅かしたオークの軍勢は”じゅう”という未知の兵器を使用し、冒険者を苦しめたという。

 本来ならばその対策に頭を悩ませるところだが、その”じゅう”というものをオドルは知っていた。故にその模倣を行い、魔族に対抗しようとしていた。



「オドルの話では”じゅう”は扱いが容易いとのことですぐに取り扱いを習熟できるとのことです。これが開発されればヌーヴォラビラントの守りは万全となるはずです」

「それは朗報じゃが、肝心の“じゅう”はいつ開発できるのだ?」



 うっ、とルイが言葉を詰まらせるとともに盤面の急所に駒を置かれてしまった。

 ちらりと父親の顔色を盗み見るとそこには若輩の王子をたしなめるというより本当にどうするのだという疑問が読みとれた。おそらく宮廷伯の誰かにそう唆されたのかもしれない。

 彼の父は下々の者の話に耳を傾ける善君ではあったが、逆に意志決定ができないという欠点を抱えていた。



「ご心配になられるのは分かります。確かに現状、”じゅう”の開発の目処はたっておりません。その上でヌーヴォラビラントを警護するエルザス騎士団の負担も急迫した問題であると認識しております」



 ヌーヴォラビラントに兵を派遣するエルザス騎士団とて平時の勤めとして街道の警備や街の治安維持など多岐にわたる仕事がある。それを押してヌーヴォラビラントの警護をしているため過労や駐留経費の増加などの問題が表面化し始めていた。

 かといって警護兵の数を減らしては次のオークの襲撃に対抗できない可能性もある。

 だがピンチは逆に最大のチャンスでもある。

 ルイは難しい戦況の中で逆転の一手を模索し、実行する。すると父の顔がわずかに歪んだ。



「そこで一時のしのぎではありますが、近衛騎士団を派遣してはいかがかと」

「近衛をか?」



 近衛騎士団は貴族の子息や子女が集った精鋭騎士団であり、本来は王家護衛の最優の戦力だ。

 その実力は十二分であり、冒険者でいえばBからAランク帯の戦力がそろっている。



「その上で剣聖も派遣したいと思います」



 ちょうどその時、侍従が恭しく礼をしながら「剣聖殿が面会を求められております」と告げてきた。それをルイは通すよう伝えると大理石の床を規則正しい足音が迫ってきた。

 その足音の主は剣を振り抜いたかのような鋭い雰囲気をまとった銀色の少女であった。

 流れるような髪は銀色に輝き、身につけた白銀(ミスリル)の胸甲鎧は一点の曇りもない。

 武人でありながらも優美なよそおいの美少女――剣聖エトワール・ド・ダルジアンはコンパスのように規則正しい歩調で二人の前に歩み寄るや、腰につられた宝剣を鞘ごと抜いて膝を床についた。

 王の前で唯一帯剣を許されている彼女は胸甲を押し上げるふくよかな胸の前に宝剣をかかげ、深々と頭を下げる最敬礼をする。



「エトワールか。よく来てくれた」

「ハッ。この度は陛下にお目通り願い、恐悦至極に存じます。この度は殿下の召喚に応じ、参城いたしました」



 地に頭を付きそうなほど堅い物言いにルイは苦笑を浮かべて父を見る。彼もまた同じことを思ってか、微笑を浮かべながら「面を上げよ」と呼びかける。



「ハッ」



 ぴりっと引き締まった表情に銀の髪が流れ落ちるが、彼女はそれを払いのけることもせず彫像のように固まる。その体幹の良さにルイは舌を巻くが、父たるルイ十三世は彼女の両親や祖父母の面影を重ね、この家の者はみな一様に同じ表情をしているのだなと改めて思い知らされていた。

 現在、エトワールが頭首を勤めるダルジアン家は古くからガリア王家に仕える家柄でありながら政治の表舞台に出ることなく粛々と王の剣であるよう努めてきた。

 いつ、いかなる時も王家の守護人であらんとするその実直な家に育った彼女は昔から剣の申し子というべき才を有しており、今では齢十七にして剣聖の称号を有していた。



「父上、この度はエトワールを長に近衛騎士団を派遣し、ヌーヴォラビラントの治安維持に当てたいと考えております」

「しかしな、剣聖を派遣するのは穏便ではないだろう」



 剣聖は何も称号だけではない。

 それはダルジアン家のみに授かった超希少スキルである【剣聖】スキルを有するが故であり、冒険者ランクに当てはめれば最高峰のSランクの中でも上位にはいる。

 その実力はガリアが誇る最高戦力である勇者と双璧をなす存在であり、近接戦闘であれば勇者に引けを取らないほどの実力をエトワールは習得していた。

 もっともその力はスキルによるものだけではなく彼女が無窮の鍛錬を積んできたことにも起因し、その力は歴代のダルジアン家当主の中でも飛びぬけていると評判であった。


 だからこそガリアの切り札の一枚である剣聖を派遣するということにルイ十三世は眉をひそめてしまう。

 それを予想していたルイとしては優柔不断な父を説得するための口上をすでに準備しており、一気に畳みかけることにした。



「しかし事態はそれほどの事と考えております。魔族共が操る”じゅう”は非常に危険であることが予想され、再度の暴走攻勢(スタンピード)が起これば被害は未曾有のものとなることでしょう。そうなればオドルがもたらした輪栽式農法の実績を証明しつつあるヌーヴォラビラントは莫大な損失を生んでしまいます。そのため十全に対抗策として剣聖を派遣するしかありません。どうか勅をもって近衛騎士団の派遣を号令していただきたく思います」



 サッと頭をさげた王子と剣聖の姿からルイ十三世は事態が自分の勅令を発するのみの状態になっていることに気が付いた。



「だがなぁ。今、リーベルタース――ひいては星神教会との問題を忘れておるわけではあるまい」

「それは重々。しかし教会との問題は教会側に原因があるからではありませんか!」



 ヌーヴォラビラントが攻撃されたおり、星神教会が魔族と内通しているという疑惑はほぼ間違いないようであった。その上、魔族国から教会に莫大な金が動いているという報せも入ってきている。

 そのため冒険者を中心に背教運動が盛り上がりつつあり、それを危惧した教会とリーベルタースがガリアとの国境地帯に兵を集結させつつあった。



「信仰の自由を守るといいつつ、それは内政干渉です。それに教会は教会税に星字軍遠征の強制的な協力や戴冠式にまで口をだすなど増長が激しいです。この機に決別すべきだと思います」

「しかしなぁ……。実際に軍を進められて、こちらはその対処に勇者を派遣しておるのだ。その上で剣聖を王都から外に出すのはなぁ」

「なにを弱気になっておるのです! 先のブリタニアとの戦も我が方が優位な和平を結べたのです。今、リーベルタースを除いて外患は魔族国のみです。ならば今こそ剣聖を派遣できる機会ではありませんか」



 うぅむ、と渋る父にルイは業を煮やすが、その空気を両断するように剣聖が「畏れながら」と凛とした声を響かせる。



「しょーぎと同じで駒は切るべき時に切るからこそ効果があるのだと自分は思うのであります」

「それが今だと言うのかね?」



 矯めつ眇めつルイ十三世は将棋盤の傍らに並んだ駒を手に取る。「確かに盤に置かねば意味もないか」と呟くと侍従を呼びつけた。



「分かった。勅書を作る。道具を持ってきてくれ」

「父上! ありがとうございます!!」



 魔族国との密約が破棄されたとはいえヌーヴォラビラントは未だルイにとって希望の土地であり、エルザス辺境伯領で行われている実験的な輪栽式農法の効果を実証する大事な理想郷だ。

 効果さえあげれば既得権益に凝り固まる貴族とて説得できるというもの。

 だからこそその防衛には万全を期したい。



「そういえばエトワール。マリアとはどうかね?」

「はい、陛下。先日、お会いすることができたため、互いの近況を語り合いました」

「そうか、そうか。あれも歳が近い友が少ない。仲良くしてやってくれ」

「はい、陛下! 昨日はマリア殿下と久しぶりに稽古いたしましたが、殿下のご成長は一段と――」

「ふむ。いくら継承権が低いとはいえ姫の身分で冒険者家業というのはどうかと思っていたが、剣聖のお墨付きがでてしまったか……」



 困った、困ったとため息をつく王に剣聖はわたわたとマリアのフォローをいれる。そんな空間に和まされながらルイは盤面に新たな一手を指すのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読み直して気づいたのですが、剣聖を派遣する場面で指されているのがチェスやオセロ(じゃなくてリバーシ)とかでなく、世界の主要ゲームで唯一、「取った駒の再利用が可能」な将棋なのは面白いですな。…
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