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第二次ウルクラビュリント奪還・3

 一方的な攻撃に混迷が続いていたヌーヴォラビラントの城壁では逃げ遅れた者や敢えて踏みとどまった勇者が迫り来るオークの軍勢に気がついていた。



「おい、誰か生き残っている遠距離職はいないか! オークが来るぞ! 攻撃しろ!!」



 悠々と前進する赤服のオークとスケルトンとの距離は五十メートルを切ろうとしている。短弓でも十分射程内だ。

 その上、どうぞ狙ってくださいというような派手な服装をしている。

 だが冒険者が驚いたのはそのオークの前を行くスケルトンの一団だった。



「なんだあれ? 野生のスケルトンじゃないぞ!?」

「まさか連中が使役しているのか? オーク・メイジってやつか?」

「オークの上位種の? でもオーク・メイジがネクロマンシーを使うなんて聞いたことないわよ」



 砲弾の洗礼を生き延びた冒険者パーティーが怖々と迫り来るモンスターを見て感想を口にする。

 世界に偏在する魔素(マナ)が肉体に蓄積すると死後、その魔素(マナ)によって死体が起き上がり、アンデッドとなる例はある。そうしたアンデッドの魔素(マナ)をコントロールするのがネクロマンサーの秘術だ。

 その原理こそ彼らは知るものの、それをオークが身につけている事に驚きを隠し得なかった。



「それよりラッキーだ。連中、槍は持っているようだが梯子を持っていないな」



 パーティーのリーダーである剣士が口元に笑みを浮かべる。

 彼らにとって未知攻撃とはいえ、砲弾は城壁を破壊し損なっているのだ。城門も堅く閉じられているし、オークやスケルトンの進入口はない。だからといって城壁を乗り越えるための攻城塔や梯子もない。



「それじゃ今度はこっちの番だ」



 中距離職のレンジャーの青年が短弓に矢をつがう。遠距離には弓を、近距離には剣で戦う万能職であるレンジャーの真価を発揮するように彼は狙いを定めると共に矢へ風魔法を付与する。



「くらえ!」



 小気味良い音と共に矢が飛翔し、誤らずに一体のスケルトンの頭にそれが吸い込まれる。



「よっしゃ!」

「それじゃ私も! 【風の刃(ウィンド・スラッシュ)】!」



 杖を持った少女が魔素(マナ)を体内の魔術回路で魔力に変換し、それを魔法式(ことば)によって風の刃へと変換する。

 その真空の刃もまた数体のスケルトンを切り刻み、バラバラと骨の塊に戻していく。



「やった!」



 歓喜の声と共に隊伍を組んだオークの鼓手が打ち鳴らしていたリズムが変わる。

 それと共にオークとスケルトンは右肩に担いでいた一メートル五十センチもある槍に似たそれを構え直し、右側面に取り付けられた撃鉄を引き起こす。

 銃口が一斉に城壁上に見える人間を指向し、「撃て!」の号令一下、引き金が絞られる。

 バネの力を受けた撃鉄が落ちると共に撃鉄に取り付けられた火打ち石や火の魔石が当たり金を擦り、火花が散った。その火花が当たり金の下――火皿に盛られた点火薬(黒色火薬)に降りかかると共に凄まじい燃焼反応が起こる。

 それは即座に銃身の奥底――薬室に納められた火薬に延焼し、黒粉に秘められたエネルギーを解放させる。


 轟音、火花、白煙。


 猛獣の咆哮を思わせるいななきが世界を包み込み、城壁から顔を出していた不運な者の頭が噛み砕かれる。

 声もなく脳漿をまき散らした仲間にいよいよ生き残った冒険者の士気も崩壊し、まともな反撃が途絶えてしまう。

 だがそれでも銃兵達は攻撃の手を緩めることなく腰に吊られたポーチから油紙にくるまれたカートリッジを取り出す。

 それを噛み千切り、撃鉄を半分だけ引き起こして火皿に油紙を傾ける。するとさらさらと黒い粉が注ぎ込まれ、撃発の衝撃で起きていた当たり金を倒して封をする。

 次いで残った火薬を銃口から注ぎ込み、カートリッジに残った鉛弾を油紙ごと銃口に押し込むや、銃身の下に取り付けられた込め矢(カルカ)を引き抜いて弾丸を薬室まで押し込む。

 適度に火薬を突き固め、込め矢(カルカ)を戻して銃を構える。



「構え!」



 指揮官の命令に従い、撃鉄を完全に引き起こすとバネによりロックがかかる。



「狙え!」



 筒先が城壁を睨む。



「撃て!」



 眩い発砲炎と共に燃焼ガスが吹き出し、世界を白く包み込む。最早スケルトンだけではなく赤い軍服を着込んだオーク達も城壁に猛射を浴びせると共に発砲の白煙が彼らを包み込もうとする。

 だが彼らが着込むアカネという植物の根から抽出された深紅の軍服はその中でも目立ち、互いの存在を見失わない。

 それが三射目、四射目を迎えると城壁からの攻撃も完全に途絶えてしまった。


 それを機と見たオルク王国軍は一斉に総攻撃に移り、後方に待機していた残りの二千の軍勢が動き出す。

 彼らは元々諸侯配下の私兵や傭兵であり、相応の訓練を積んだ者達が梯子を担いで進軍し、次々と無抵抗の城壁へと攻め寄せる。

 それに対し冒険者は未知の攻撃にさらされて士気が崩壊しているところにオークの軍勢が乗り込んできたのだからたまらない。

 ほとんどの冒険者は力で勝るオークによる蹂躙を許し、碌な抵抗ができぬまま倒れていった。中には攻撃を受けたのとは反対の城門から脱出を試みようとする者まででる始末だという。

 ここに至り、ヌーヴォラビラントの組織的な抵抗は幕を閉じると共に城門もまたあっけなく陥落してしまうのだった


 ◇


 久しぶりに故郷の城門をくぐると世界が一変していた。

 見慣れぬ建築様式の家々が立ち並ぼうとしているそこはオークの街などではなく、人間の街へと変貌を遂げている最中であり、見覚えのあるのは大路くらいしか残っていなかった。



「そんな……」



 これが恋いこがれたウルクラビュリントなのだろうか?

 そう思うと目頭が熱くなってくるが、その時オーク伯がやってきた事でなんとか涙だけは堪える。



「どうした?」

「戦況の報告に参りました。大丈夫ですか?」

「問題ない。で?」

「ハッ。我々は城門一帯の制圧に成功し、人間共は南門及び東門から次々と敗走しているようです。ただ兵力が足らず、ウルクラビュリント全域の支配はまだ……」

「そうか……」

「閣下、お疲れなのではありませんか? このグロリオサ、閣下に代わり陣頭指揮を執る所存でありますが――」

「良い。平気だ」



 もしかして俺の事を気遣ってくれているのだろうか?

 だとすると案外良い奴なのかもしれない。



「オーク伯。俺は大丈夫だ。案じることはない」

「ハッ。差し出がましいことを申しました。お許しください」

「許そう」



 ゆっくりと制圧した大路を歩くと背後から伯がついてくる気配を感じる。

 右を見て、左を見ると砲弾の流れ弾を受けたらしい真新しい家々が見て取れたが、特に感慨も浮かばない。

 もしかするとこれが浦島太郎の心境なのかもしれないな。

 そう思っているとオークの兵士の一団に囲まれた人間達がやってくるのが見て取れた。その人間達の多くは冒険者のように甲冑姿だが、その鎧には五芒星が描かれており、それを着込んでいない者は黒い法衣を着ていた。



「閣下! 報告いたします。星神教の者が閣下にお会いしたいと」

「そうか。ご苦労」



 兵士の背後から六十代くらいの皺が深く浮き出た法衣姿の男が前に出てくる。



「お初にお目にかかります。ヌーヴォラビラント教会のフランシスコ司教です。閣下のお話はナイ司祭からかねがね」

「こちらこそ初めまして。オルク王国大公カレンデュラ・オークロード・フォン・オルクです。司教殿。お会いできて光栄です」



 互いに握手を交わすとフランシスコ司教はふと眉をひそめる。



「時に閣下。教会施設への攻撃は――」

「もちろん教会施設への攻撃は全兵に禁じており、これが破られた場合はその者を極刑に処すと布告をだしております」

「ならば言うことはありません。ただ閣下のお耳に入れておいた方が良いお話が」

「なんでしょう?」



 フランシスコ司教の話によるとオルク軍の進撃に対し、この地の領主であるエルシス辺境伯軍一万が街の防衛のために迫りつつあると言う。到着までは未定だが、早くて明後日頃にはやって来るらしい。

 一万か……。



「閣下。信じますか?」



 オーク伯の言葉に振り向く。



「……なぜ伯は司教殿のお言葉を疑う?」

「いや、確証もなくそれを鵜呑みにするのは――」

「星々の代理人たる司教殿が嘘をつく訳があるまい!」



 彼を気遣おうと思っていたのもつかの間、頭にズキズキとした痛みが走り抜ける。

 燃え上がりそうな怒りが募る中、冷静な自分が「早く対策を考えろ」と言ってくる。

 対策か。それはもちろん攻め寄せる猿獣人を一人残らず殺してやれば良い。だがそれは魅力的な策ではあるが現実的ではない。

 ここで最後の一兵になるまで敢闘して玉砕するより退いて体勢を立て直した方がより多くの猿獣人を殺せることだろう。むしろその方がウルクラビュリントの奪還にも繋がる。



「オーク伯。諸侯を集めよ。全軍のオルクスルーエへの撤退を令する」

「しかし閣下! 我らは勝利を納めたではありませんか! それなのに撤退など――」

「撤退だ!! 今の兵力では一万の兵に対して持ちこたえられん」



 頭痛を吹き飛ばすように叫ぶと少しだけスッキリした。そんな中、ふと新たな策が思い浮かぶ。



「そうだ。撤退と共にウルクラビュリントに()()()()()()

「は? はぁ!?」

「どうせ手に入らぬのだ。いっそ燃やしてしまおう。そうすれば連中は今度の春に砦を作るなど出来なくなるだろうしな。それに……。それにこの街並みを見ろ。我らの王都たる姿がここにあるか? 否だ。ならばこんな不愉快な街、灰燼に帰してしまおう」



 これは案外良い考えなのではないか?

 この遠征の主目標はウルクラビュリントの奪還ではなく新たな砦が築かれるのを阻止するところにある。ならば街の奪取に固執する必要はない。その上、猿獣人の拠点を焼き払えるのだからこれほど胸のすくことはないだろう。

 く、フハハ。

 我ながらに良い考えだぞ。もうニヤケが止まらん……!



「司教殿もお早く避難なされた方がよろしいでしょう」

「な、いや、それは少し、やりすぎなのでは? 主も無辜の民が戦禍に巻き込まれることをよしとはしないでしょう」



 たらりと冷や汗のような物が司教殿の頬を伝っている。一体何を緊張しているというのだろう?

 そうだ。ただでさえ強面と言われているのだ。司教殿の緊張をほぐすためにも敵意が無い事を示すためにも口元を意識して笑みの形にする。



「ならば主に許してもらえるよう、免罪状を買わねば。おいくらでしょうか?」



 ご、ご冗談を、と司教殿が口元に笑みを浮かべるが、しばらくすると顔を青くしてしまった。

 うーん。自分では笑っているつもりだが、もしかするとうまく笑顔を作れていないのかもしれない。難しいな。今度練習しよう。

 そして全軍に撤退が布告されるや、野戦砲の発射薬として用意していた黒色火薬を家々に撒いたり、各家に貯蔵されていた油やボロ布を集積して燃えやすい環境を整えてやる。



「行くぞ」



 かけ声と共に一軒の家に松明を投げ込む。

 すると家内に撒いた火薬に引火し、凄まじい勢いで燃焼が始まる。

 誤解されがちだが黒色火薬は圧力を加えておかないと爆発しない。特に粉としておけば派手に燃えるだけでそれほど危険性はない。



「閣下! 危のうございます!」



 オーク伯の言葉に頷くも燃え上がるその家から目を離せなかった。火薬から家具へ燃え移ったそれが木の壁を舐め、黒煙を吐き出しながら延焼していく。



「ここはブレダの家だったのにな……」



 ブレダという同い年の友の家は代々パン職人であり、いつも美味しそうな匂いを漂わせていたものだ。

 だが今は窯も壊され、なにかしらの酒場のような店になっていた。その上、ブレタ共々その家族の行方が知れず、今もどうしているのか分からない始末だ。考えたくはないが、恐らくもう……。



「あっちの店は頑固な靴屋だったな。よくお弟子さんが叱られていた。その向かいは老夫婦が営んでいた宿屋で、客は少なかったが二人はよく笑いながら店番をしていた。それからこっちは……」



 そう思い出しながら一軒一軒に部下から手渡される松明を放り込んでいく。

 全ての家に火薬を使うことができず、中には不発に終わる家もあるだろうが、着々ときな臭さが広まってきている。



「このまま燃やせ。全てを燃やせ、ありとあらゆるものを燃やせ。ここはもう我らの街ではない。猿獣人の巣窟だ。各自、浄化を開始せよ」



 その命令通り俺に続くように次々と家々に火がかけられていく。

 一応、教会に配慮して教会の所在する地域から離れた占領地を中心に火をかけ、それが終わり次第粛々と撤退行動に移る(その前にフランシスコ司教に情報をくれた謝礼と免罪状代として一年は遊んで暮らせる額の金貨を譲渡している)。



「次こそは取り戻してみせるぞ」



 再び燃える故郷を背に、ふと家を燃やしたのは二度目か、と感慨が浮かぶ。

 燃やされたのを含めれば三度目。どうやらそうした星の下に生まれてしまったようだ。



「く、フハハ。燃えろ、燃えろ」



 そういえば自ら故意に家を燃やしたのは初めてだ。


 ◇


「な、なんだ、これは……!?」



 豪奢な鎧を着込んだ壮年の男が馬上で呻いた。頬に生々しい傷跡を残す彼こそエルサス辺境伯その人だ。元々はS、A、B、C、D、Fの六ランクある冒険者のうちSランクに上り詰め、ガリア王国北部を脅かしていた魔物やモンスターを討伐して今のエルサル領を切り開いた元冒険者。それがジャン・ド・エルサスという男だった。



「街が、炎に包まれておるではないか」



 ヌーヴォラビラントから救援要請を受けて三日。彼はエルサル領の領都であるピオニブールから一万の兵を寝る間も惜しんで全力で進撃したが、目前には黒煙を吹き出しながら燃え上がる新都があるだけだった。



「エルサス様!」

「ん? おぉ! ハトラク!? それに姫様も!」



 すぐに馬から降りたエルサスは黒髪の少年と二人の少女の顔を見てハッとする。三人とも全身が煤にまみれ、衣服も所々焦げている。



「なにがあったのですか?」

「たぶん、火災旋風です」

「かさいせんぷう?」

「大規模な火災が起こると希に起こるんです。炎で暖まった空気が上空に昇ってしまうので、そこに新たに空気が流入して大きな風が起こるんです。そのせいで火勢が増してどんどん燃え広がる現象を火災旋風って呼ぶんです。それが起こってしまって……」



 エルサスはオドルの言葉を半分も理解できなかったが、とにかく大火が起こっていることだけは理解できた。



「必死に水魔法で消火しようとしたのですが……」



 そしてオドルから言葉を引き継いだマリアにエルサスはその努力が無駄であったことを悟る。

 それと共に彼は家臣に命じてマジックキャスター隊に同時詠唱による水魔法の行使を指示する。もはや大規模な水魔法の使用か可燃物を全て燃やし尽くさねば火勢は衰えることはないだろうから。



「それにしても誰がここまで火を……?」

「たぶんオーク達です。あいつらは新兵器で城壁を制圧してヌーヴォラビラントに侵入してきました。ですがすぐに火を放って撤退したんです。でも炎はすごいし、他の冒険者は避難民に混じって逃げる者ばかりで追撃どころでは……」



 だろうな、とエルサスは内心呟く。

 そもそもヌーヴォラビラントの警備は騎士団などではなくギルドが冒険者に委託しているが、冒険者も玉石混淆でパーティー内の結束こそ強いものの、パーティー間の結束となると疑問符がつく。



「個々の資質は高いが、所詮は烏合の衆か」



 傭兵と冒険者の違いはここにあり、エルサスが領主となった際に一番苦労したのが自身のパーティーを騎士団に改編することであった。

 そもそも冒険者の多くは金を稼ぐためにクエストを受けてモンスターと戦っているのであり、命を賭してでも戦い続ける者は稀有なのだ。特にベテラン冒険者となればどこまで命を賭けるかの見定めが出来るだけあって如何に不利な状況でも戦わねばならぬ局面で必ず逃げに転じてしまう。

 それが採集や討伐クエストであればギルドに失敗の違約金を払うだけで済むのだが、誰かの逃亡が敗戦に繋がりかねない戦争ではそうはいかない。

 だからこそ彼は冒険者ギルドに対して冒険者を騎士団代わりに使うのは危険だと忠告もしていた。もっとも全て無駄になってしまったが……。



「だがそれにしても妙だな。せっかく街を占領したというのに焼き払ってしまうとは」

「相手はただのオークじゃないですか。理由なんかなくてただ暴れたかっただけなのでは?」

「それにしても妙だ。どうせ逃げに転じた冒険者では追撃もままならぬのだから街を焼くまでしなくてもよかったろうに。まるで援軍としてわし等が駆けつけることを悟って逃げたようではないか」

「まさかそんな……」



 だが、とオドルもイヤな予感が脳裏をかすめる。

 相手は銃や大砲を扱う兵士然としたオークだ。それがせっかく占領した街をみすみす焼くだろうか?



「……勝てないと見て、追撃されないように街を焼いた?」

「それもそうだが、重要なのはエルサス騎士団の接近に気がついていた、とも考えられる」

「そんな感の良い奴が?」

「そのような博打的なものなら良いが、むしろ内通者がいると思った方がしっくり来る。次の春には新たな砦建設の話も決定していたし、それを牽制するための攻撃だとすると唐突な攻勢に納得できる。それにこちらの内情を把握しているならエルサス騎士団の接近を予期することもできる」



 まさか、という思いをオドルは飲み込む。なんと言ってもエルサス辺境伯の言葉通りなら全ての辻褄が合うからだ。

 それと共に彼は火の手が街の中心を避けるように燃えだしたのも覚えていた。その街の中心にあるのは――。



「まさか星神教会が内通者なんじゃ? 教会なら街の運営にも口を出してきているってギルドから聞いてましたし、砦の話も知っていたんじゃ?」

「オドル。そういえば教会の星字騎士団は結構な戦力があるはずなのにオークからの防衛戦にまったく参加していなかったわ。それは前にオドルが免罪状や教会税のことで教会の不正を訴えていたからその報復だと最初は思っていたけど、もしかすると――」



 免罪状を買わねば地獄に落ちると説いていた教会に対し、オドルはそんな詐欺紛いのカルト商法が人々を救うためではなく、教会が私腹を肥やすために行っていると批判していた上、その証拠を掴んでヌーヴォラビラント教会の不正を訴えたのだ。

 その結果、重い教会税や免罪状に苦しめられていた貧しい人を救う事が出来た。



「魔族と通じていたから防衛戦に参加しなかったってことか?」

「分からないわ。でも、状況を見ると教会が黒いのは確かね」

「姫様。そういえば魔族の領域に教会が建ったという噂を耳にしましたが……」



 全ての証拠が教会を黒と示すが全て状況証拠でしかない。



「とにかく王様に色々話さないといけないことが増えたな」



 教会のこともそうだが、オークが使った新兵器――銃や大砲の事を伝えて対策を練らねばならない。

 そう思うとオドルは自然と天を仰ぎたくなった。

 大学受験していた方が楽だったな、と。

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