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黄赤の鱗に覆われた巨体でイヨウを包むように寝そべり、まるで犬のように首や頭を擦り付ける。
三つ指の先にある分厚く鋭い爪を体の下に敷き、甘える仕草は見た目とのあまりの差に一行を驚かせた。
(=゜ω゜) 「この子はとても賢いからね。ほら、そんなに離れなくても何もしないよ」
馬が頷くように鼻息を鳴らす。
(=゜ω゜) 「じゃあ手短に、簡単な紹介だけしてしまおうか。落ち着いたらまたゆっくり時間をとるとして」
イヨウが暖炉の周りの三人の女を手を向ける。
(=゜ω゜) 「妻のデレだ」
三人の中では一番年齢の高そうな女が軽く頭を下げる。
ζ(゜ー゜*ζ 「大変だとは思うけど後少しだけがんばってね」
声は明るく、淡い光から照らされた顔も若々しい。着ている着物も薄暗い中にあっても、鮮やかな色であると伺える。
しかし、一行の思い描いていた身分のある者の妻の想像よりはいくらか地味な身なりでははあった。
(´∀`) 「……きれいだモナ」
モナーがぼそりと声を漏らす。周囲の誰にも聞こえない程小さい声だったが馬だけが少し反応したように見えた。
(=゜ω゜) 「こっちが娘のスナオね」
川 ゜ -゜) 「よろしくお願いします」
デレの隣の女が立ち上がり頭を下げた。一行が恐縮して立ち上がり深く頭を下げると、両手で座るように促す。
身なりはデレと同じような質のよさそうな着物ではあるが少し地味な印象を受ける。
顔立ちもデレに似ているがうっすら見える目はイヨウにそっくりだった。
( ^ω^)「娘って言うことは……、デレさんは結構な年齢だお」
モナーは深く考え込んでいるようで、難しい顔をして足元を見つめていた。
(=゜ω゜) 「そしてうちで働いてくれてるツンだよ。まぁこんなに小さな頃からうちにいるからもう娘も同然なんだけどね」
ξ゜⊿゜)ξ 「ツンだ。イヨウ様の元で働かせて頂いて五年になる」
続きを待っていたがそこで話しが終わりだと分かるまでしばらくの、青年達は聞く体勢のままじっとツンを見ていた。
(=゜ω゜) 「それからこっちが僕の馬。騎士にとって馬の名は特別なものだからまだ教えられないんだけどね。仲良くしてやってよ」
首を二、三度上下させる馬は話の内容を理解しているように見えた。
( ^ω^)「あの、すいません」
ブーンが弱々しい声をあげる。
(=゜ω゜) 「なんだい」
( ^ω^)「あの……ブーンの後ろにいるのは、何だお」
恐怖で引きつった顔の後ろには、荒い息を立ててしきりにブーンの匂いを嗅ぐ馬がいた。
|/゜U゜| 「あぁ、それは私の馬だ」
( ^ω^)「しかし、馬ってほんとにでかくて強そうだお」
ブーンの周りを真っ黒な馬がぐるぐる回っている。最初こそ恐怖を感じていたが、今はもうその巨体に視界を塞がれても手で軽く押してどかしてやる程になれた。
それを見ていたオトジャが誰も話していないのを待って切り出した。
( ´_ゝ`)「あの……、お二人とも歩いて村まで来たんですよね。馬がいるのなら、それに乗って移動した方がもっと早かったんじゃ」
(=゜ω゜) 「いやぁ、馬じゃとてもあの森は走れないからね。どうしても遠回りになってしまうし、何より目立っちゃうよね。あまり目立つのさ、ね」
イヨウが馬の背を軽くたたくと、体を少し持ち上げて前足を外へ出す。たしかに、あの根が盛り上がり苔でぬかるんだ森を走るのには不向きに見えた。それからすぐに、森の一件が頭に浮かぶ。
(=゜ω゜) 「それに帰りは、有望な若者達と一緒のつもりだったからさ、じゃあ徒歩でいこうかって」
( ´_ゝ`)「なるほど」
(=゜ω゜) 「さて、じゃあそろそろ行こうか。完全に夜が明ける前には帰りたいからね」
イヨウが腰を上げると、それに習うように一行が立ち上がった。部屋に緊張が走ったが誰もそれに気がついていない様に振舞う。
川 ゜ -゜) 「ほらお母さん」
スナオが着物の裾を踏んでしまってうまく立ち上がれないデレの手を引きあげる。
ツンは部屋の隅から大く平たい板を二つ、部屋の中心辺りに重そうに運び出していた。
ξ゜⊿゜)ξ 「じゃあ、これを馬に着けるから。あなた達も手伝って」
(´∀`) 「これはなんだモナ」
(=゜ω゜) 「足跡を消すために馬に引いてもらうのさ。列の一番後ろの馬が板を引きずれば僕らのも馬のもまとめて消せるだろ?」
( ´_ゝ`)「なるほど、なるほど」
(=゜ω゜) 「僕らがこの村にいるって事が知られたらまずいからね。皆に迷惑をかけちゃう」
( ´_ゝ`)「──あの、これ道具二個ありますよね」
オトジャが少し考えてから口を開いた。
(=゜ω゜) 「そうだよ。僕の手作りの、この世に二個しかないお手製だ」
( ´_ゝ`)「全員で一列になって、一番後ろの馬が引けばいいならこれを着けるのはどちらか一頭でいいんじゃないでしょうか」
イヨウが嬉しそうに笑った。
(=゜ω゜) 「そうなんだよね。どっちか一頭がつければ十分なんだよ。重いし、あまり時間を掛けるのは良くないから一つにしたいんだけど」
イヨウが二頭の顔を順番に目をやる。馬はその目を見ようとはせずに首上下させ頭を震わせていた。
(=゜ω゜) 「嫌がるんだよ。自分だけ着けられるの不公平だって思っているんだろうね。いやぁ、賢い。馬も君も」