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(=゜ω゜) 「足元に気をつけるんだよ。できるだけ私達が歩いたところを歩くようにね」
( ´_ゝ`) 「歩くようにって……、足跡全く見えないんですけど」
(´∀`) 「足跡がどうのって事よりも、前も全然見えないモナ」
|/゜U゜| 「昼でも日の光はほとんど届かないからな」
ニンジャが上を指す。
その先には隙間を無くすように葉が重なりあい一面緑の天井を作り出していたが
今の一向には夜の闇が普段よりもずっと近くにあるように感じるだけであった。
(=゜ω゜) 「それから苔もところどころに生えているからね。転ばないようにって言ったって無理だと思うから、いつでも転ぶかもしれないって頭の隅に置いておくと良い」
イヨウが足を盛り上がった木の根に足を乗せると、左右に滑るように移動させる、
(=゜ω゜) 「そうしておけば、転んでも大けがにはつながらないからね。いつでも手を出せるように意識して、頭は守るようにしよう」
一向は一刻前にそれだけのやり取りだけをして、国境を跨ぐ「フタワ森」へ入った。
フタワ森は三国の戦の時もほとんど戦場にならず、古いものから新しいものまで大小様々な木々が隙間なく枝葉を伸ばしている。
過去に一度だけ下総が安房を攻める際、不意を付くためにフタワ森を抜けて軍を進めようとしたが
まともに進軍がままならず命からがら引き返した話は有名であった。
重装備をしてこの森に入る事は自殺行為であるが、いかに軽装かつ少数であるとしてもこの森を抜ける事は容易ではない。
しかし、森に沿って迂回するのと比べると遙かに掛かる時間は少ない上、敵に見つかる心配もほとんど無いため
下総の軍がここを無事突破していたら、歴史は変わっていたかもしれなかった。
湿気を含んだ風が体にまとわりつく。
それが不快で何度も手で扇ぎ、風を着物の中へ送り込む。
それも歩き始めてからどれくらい経ってからか、少しでも余計に体を動かすのが億劫になってからは止めていた。
空が明るくなった様子は無い。まれに一瞬見える空に、小さな光がぽつぽつと浮かんでいる。
( ^ω^)「まだ夜のようだお」
ブーンは小さく呟いたが、後ろの二人は反応しなかった。
森に入ってからは、一度も立ち止まる事はない。誰かが転んでも、それに気がつけばほんの少しだけ速度を緩め、立ち上がればまた元に戻す。
それを繰り返して、時間の感覚を失わせる森の中を進み続けた。
森に入る前と後、どちらが慎重に進むべきかというならば間違いなく後者、森に入ってからだろう。
だが、今の速度は村を出たばかりと同じか少し早い位だった。
それも森に入ってからすぐよりも、今の方がより速度は上がっている。
(´∀`) 「なにか、焦っているのかモナ」
ブーン達三人は感じていたが誰もそれを口にしていなかった。
後ろの三人組の一人が転び、一向の速度が落ちたところでモナーは二人にだけ聞こえるように呟いた時、二人はすぐに頷く。
後ろの様子を伺うために振り向いたイヨウの顔は、村で見た年よりも若く見えそうなものでなく年相応が少し上くらいに見えた。
月明かりの中、ブーン達と目が合うとそれが気のせいであったかの様にイヨウの顔は再び生気を帯びていった。
それが不自然さを感じる三人に、わずかに安堵を与え下ばかり向いていた顔を上げさせる。
( ´_ゝ`) 「何にしても……今は歩くしかないですね」
ブーンとモナーは頷くと再び歩く速度を速めていく。
前の二人の背が徐々に近づいては、また離れる。それを繰り返して一向は、夜の闇より暗い中を走るような速さで進む。
(=゜ω゜) 「止まるよ」
イヨウが口に指をあてて静かにするように求める。
ニンジャが音を立てないよう、慎重に足の置き場を探してイヨウの前へ進む。
(=゜ω゜) 「音を立てない、動かない」
二人は目くばせをしながら、小さな声でやり取りをしている。
(=゜ω゜) 「だめだね。今さら他の道を進むことなんてできないし……。何よりこんなに近づくまで気がつかないなんて」
|/゜U゜| 「この暗さに加えて、こっちは少数といっても後ろに何人も連れているんです。目も耳も大して利かないのなら仕方ないかと」
(=゜ω゜) 「そうだね。うん。まぁここで気がついただけ、良かった。でも、相手には悪い。本当にね」
|/゜U゜| 「彼らも覚悟はしているのでしょう。騎士にせよ兵士にせよ。もしそれが無いとしたら、それこそが問題。遅かれ早かれいつかは」
ニンジャの話はこれまでよりずっと起伏のない口調だった。
イヨウは何も見えない空を見あげ、大きく息を吐く。