4-3
/^o^7\ 「騎士に目をつけられたら、無茶な理由をつけて店や家を潰されかねない。そうなると表立っては悪い事は口に出来ないだろ」
小声で話しながら、目は忙しく辺りを警戒している。
/^o^7\ 「実際に何度か俺も見たしな。そりゃ嫌われるさ。俺が見た中で一番ひどかったのは、そうだな……。商家の騎士と同じ商品を、周りより安く売った商人の店が襲撃された事かな」
(^ω^ )「……襲撃ですかお」
/^o^7\ 「あぁ、しかもな。この街の中でだ。おかしいだろ? あんだけ出入り口を厳重にしているのに、どこからならず者どもが入ってきて出て行ったのか」
(^ω^ )「じゃあ、街の中の人がやったんじゃないんですかお」
/^o^7\ 「そうなると同じ区画の人間だけだな。夜は移動が出来ない。普通はそう考えるし俺もそう思っていた。だが騎士はすぐに、これは外から何者かが侵入したんだとって言って門にいた兵士を処分してこの一件を終わりにしちまった」
(^ω^ )「それはひどいお」
/^o^7\ 「あぁ、ひどい。でも逆らえないんだな。世襲の公家なんて気位ばっかり高いし、商家はとにかく金に汚い」
七号は騎士の部屋をちらりと見る。
(^ω^ )「騎士はそんな事をして許されるんですかお」
/^o^7\ 「騎士はたとえ十位でもな、自分の領地なら王以外には指図を受けずに振る舞える。知らなかったのか?」
ブーンは迷ったが小さく首を縦に振った。
/^o^7\ 「騎士を信じて何代か前の王が考えた法だが、今じゃ一番の悪法かもな。大抵のところは国の納める税以外に、いいかげんな名目で何倍も搾取する」
さっき程驚く様子は見せないまま、七号は話を続けた。
/^o^7\ 「まぁ、武家は割とマシだって聞くがな。公家や商家は誰からも嫌われるのが普通だ」
(^ω^ )「基本的に嫌われているんですかお……」
/^o^7\ 「そらそうよ。それから、そんな大嫌いな騎士のために働く兵士も少なからず嫌われるもんだ」
(^ω^ )「そうなんですかお」
/^o^7\ 「だから俺は不思議に思ってたんだよ。何でお前は嫌われて無いんだってな」
(^ω^ )「別にブーンはそんな気はしませんお」
七号が力なく首を振る。
/^o^7\ 「え……だってお前、俺なんか挨拶しても無視されるんだぜ……。あぁ そうだ。明日は乗るって行ってたな。うちの親分が」
しばらくの沈黙を七号が破る。
ニシカワが驚いた様に、大きな目をさらに大きくすると、ブーンに頭を擦りつけた。
/^o^7\ 「しかし、街の人間に嫌われて無いってのはまだわからなくもないが、そこまで馬に好かれるのはわからないな」
七号はジッと、犬や猫のようにブーンにまとわりつくニシカワを見ている。
(^ω^ )「外に出るときは大抵ニシカワがいるからみんな珍しがって寄って来るだけですお。だから街の人に好かれているわけではないと思いますお」
/^o^7\ 「うーん」と唸る七号はあまり納得していない様子だった。
(^ω^ )「そういう事だから、残念だけど明日の散歩は無しだお」
ニシカワが水滴を払うように全身を振るわせる。
/^o^7\ 「おぉ、おぉ。嫌がってるなぁ。やっぱり親分は馬の扱いが下手なのか?」
(^ω^ )「ブーンは騎士じゃないので乗り方は知りませんお。ただ、あんなに乱暴に扱っても嫌われるだけだと思いますお」
/^o^7\ 「そうかそうか。じゃあ、ブーンなら馬も喜んで乗せるんじゃないか」
七号がいうとニシカワが大きく頭を上下させた。
/^o^7\ 「ははっ冗談だ。だが、馬ってのは人の言葉がわかってるのかね。ここ最近、急にそう思うようになったよ」
屋敷の中に入るように両手で促しながら続ける。
/^o^7\ 「さぁ、それは置いておいてだ。せっかく今日は親分が居ないんだから酒でも飲もうか。良い酒を買うだけで満足するなんて勿体ないからな。俺達が飲んでやろう」
(^ω^ )「またですかお……」
初めて酒を口にして数刻後、酒に弱いと痛感した。七号は「そんなものは何度も飲んで、何度も吐いていればすぐに慣れる」と悪びれずに何度も誘って来る。
騎士が屋敷を空けて、七号が残ると必ず開かれる酒宴も三度目になった。
今晩の酒程強いのは初めてだと言いながら、何度も杯に注ぐ七号の顔は不自然なほどに赤く染まっていた。
(^ω^ )「今日はこの辺で失礼しますお」
灯りを手に持つと静かに部屋を出る。七号はハッキリしない言葉で「明日の準備、しっかりな」といって後ろに倒れこんだ。
ブーンが屋敷から出てすぐの馬房へ、左右にぶれながら向かって行く。
(^ω^ )「寝てたらごめんお」
ブーンが中を覗くと、待っていた様にニシカワが出迎えてきた。
(^ω^ )「ちょっと寝る前に、屋根裏へ行かせてくれお」
まとわり着くニシカワを落ち着かせ、やっとの事で戸を閉める。
それから奥に掛けられている梯子へ向かう。ニシカワは真っ直ぐ進まないブーンを、横から支えるように大きな体を添えた。