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ブーンが兵士になるようです  作者: カジ
四話
18/50

4-1


(^ω^ )「おはようございますお」


偉そうな男は一瞥もくれずに屋敷から門へ向かって進んで行った。

両隣を歩く男達と比べると頭一つ分背が低い。そんな男が肩を怒らせて二人を従える姿には違和感がある。


(^ω^ )「……公家二位のお偉い方は、馬房守なんかに挨拶出来ないみたいだお」


隣りでブーンと同じ高さから男を見下ろしていた馬が、笑うように鳴いた。

この屋敷で働く事になって一月が経ち、最も変わったことはニシカワとの関係だった。

どこまで理解できるのかはわからないが、「進め」「戻れ」「待て」の意味は分かっているようで、決まった時間になれば食事の催促をしたりもする。

三食を全て同じにすると機嫌が悪くなり、果物を最後にだしてやると大きな体を振り回して喜ぶ。

最近では屋敷の誰よりもブーンに良く懐き、綱から手を離してもしっかり後について歩いて来る。

世話をすればするほど、あまりの賢さに驚くばかりだった。


(^ω^ )「おいでニシカワ」


いつまでも、「おい」と呼ぶのもどうかと勝手に呼び名まで付けてやった。

ニシカワは鼻を震わせて後をついて来る。


/^o^4\「おや、楽しそうだね。今日も騎士さんが乗らない日かい」


騎士が遠くへ行ったのを確認してから屋敷から外へ出ると、すぐの場所にある店から中年の女が手を振っている。


(^ω^ )「えぇ」


/^o^4\「まぁ、あの人が乗る日は外に出すなってのもかわいそうだね。夜中に少しばかり乗るだけなのに」


女が手ぬぐいで洗った手を拭いて、奥の棚から果物を手に取るとブーンを見た。

それに気づいてから、ニシカワの視線は果物とブーンを行ったり来たりしている。


(^ω^ )「……ありがとうですお」


ニシカワが目を細めてかぶりつく。


/^o^4\「そうよね。こんなに良い子なのに騎士を選べないんだから」


(^ω^ )「あの人はあの人で、良い人ですお」


ブーンが言うと隣で荒い鼻息がなった。


/^o^4\「そうなの? あまり良い噂も聞かないしねぇ。早く交代してほしいもんだわ」


(^ω^ )「……それじゃあ。この子のご飯を買いに行かないといけないので、この辺で失礼しますお」


/^o^4\「あらあら、時間とって悪かったわね。それじゃ、またね」


女がニシカワの首を何度か撫でた。

それが終わるのを待ってから、ブーンは軽く頭を下げて歩き出した。


(^ω^ )「普通に暮らしている人たちは皆良い人だお」


ニシカワが返事をするように頭を動かす。


(^ω^ )「やっぱり、ここに住んでるから性格が悪くなるってわけじゃないんだお。お金か地位か、その両方か。いやでも、やっぱりあの人は生まれつきあんな性格な気がするお」


隣で縦に動く頭がさっきよりも早くなった。


特殊な経緯から作られたツダの街は、大きな三つの区画に分けられる。

それぞれの区画は同じ形をしていて、一つに組み合わせると綺麗な円になった。区画の境目は頑丈な鉄格子が降ろされ、夜は互いに行き来が出来なくなっている。

区画は民族毎に分けられ、「安房」「下総」「上総」の民が決まった場所で当たり前のように生活をする。

円の中心近くは地位の高いものや金のあるものが競うように屋敷を構え、ツダの中央通りに沿った場所で暮らす事は、民族の中で上位であるという証明となっていた。

ブーンが大きな商店の前で足を止める。

騎士の屋敷からはそう離れていない、同じ中央通りにある商店はかなり大きい。大抵の物ならここで売っている事と、その全てが上質である事から金持ち御用達になっていた。

体面もあるため、馬に関しては騎士も金を惜しむ事は無い。良いものを食べさせて良く運動させ、誰に見られても恥ずかしくない状態を常に保つ事を望んでいた。

そのためブーンも収入に見合わないこの店の常連だった。


▼・ェ・▼「いらっしゃい」


奥から男が出てくる。

不思議な髪型をだらしなく手でいじっていた。


(^ω^ )「おはようございますお」


ブーンが頭を下げる。少し前、騎士に対しての時よりいくらか深い。


▼・ェ・▼「やぁおはよう」


店には他の客が数人と、倍以上の下働きがいた。

店の者は皆、せわしなく動き回っているが、ブーンに近づいてくる男一人だけが違った空気を持っていた。


▼・ェ・▼「いつものかな」


少し離れたところで足を止める。


(^ω^ )「はいですお」


ニシカワの方を向いて頷くとすぐに振り返り、ポンと手を叩いた。


▼・ェ・▼「おぉい」


すぐに女がやってきて、二言三言話すとまたどこかへ消える。


▼・ェ・▼「お代はツケだよね」


(^ω^ )「ツケでお願いしますお」


▼・ェ・▼「そう。じゃあ私はこれで。最近人手が足りなくてね。印を押すだけじゃ店が回らなくなっちゃって、まいっちゃう。 それじゃあ、また、ご贔屓に」


頭を掻きながらもといた場所へ戻っていった。その動きはあくまでゆったりとしたもので独特の雰囲気を持っている。


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