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木漏れ日の天使

「はぁ・・・はぁ・・・。」

フォンは夜になるまで走り続けた。

もう、どれだけ走ったのかわからない。

気がつけば、王都の周りにある平原を抜け、ヴァリクラを囲むように連なるヴァリクラ山脈のフモトに居た。

この山を越えればヴァリクラを離れる。

今となっては覚えのない罪で犯罪者となった英雄は、国を出る勇気がなかった。

家と職と名誉と恋人を奪われたにもかかわらず、フォンは、まだヴァリクラ帝国に思い入れがあった。

しかし、立ち止まっていては追っ手が来る。

林の向こうにチラつく光はおそらくソレだ。

しかたなく、フォンはフモトに沿って進んだ。


またしばらく時が流れた。

疲労と精神的な苦痛が足に及び倒れこむ。

抵抗することもできずにフォンは眠りについた。

何か、暖かいものに包まれるかのように・・・。




=翌日=


フォンは日の光に照らされて起床した。

といっても、まだ身体は動かすことができない。

「おはようございます。」

誰かわからないが、やさしい声が聞こえた。

「あぁ・・・。」

フォンは反射的に返事をした。

誰かが仰向けに寝ている自分の顔を覗き込んでいる。

しかし、逆光で顔まではわからない。

やけに長い髪が、頬をかすめてくすぐったい。

目がだんだん慣れてくる。

そこで見えたのは金髪の長い髪の少女だった。

年は16か17といった感じだ。

「・・・・。!!!」

思わずフォンは飛び上がる。

頭の下にはその少女のヒザがあったのだ。

「誰だ・・・!?」

できるだけ冷静に聞いた。

しかし、表情に同様が出ているのか、少女は静かに笑う。

「私はリンネ、リンネ・アドランスです。」

少女はゆっくり起き上がりながら言った。

「あなたは・・・・誰ですか?」

ゆっくりした口調で少女は問う。

「・・・。」

「?」

フォンは口を閉ざす。

今ここで、この国で名乗るのはやめたほうが賢明だと判断した。

フォン・カマスティンといえば顔は知らずともヴァリクラの国民なら誰もがその名を知る大英雄だ。

そして、同時にもっとも知名度の高い犯罪者・・・と言うことになる。

ここで名乗れば状況が悪くなるのは目に見えている。

「そうだ。」

少女は笑顔で手を胸の前で合わせながら云った。

あくまで口調はゆっくりだ。

「お昼ご飯、たべますか?」

「昼?」

フォンは空を見上げた。

木の枝にさえぎられた太陽が青空の頂点で輝いている。

どうやら昨日の晩から今の今まで眠っていたようだ。

「ここは、どこだ?」

フォンは少女を見ずに聞いた。

「記憶喪失ですか?」

「まぁ、そんなところだ。」

「ここは、ヴァリクラってお国の南にある、アーシャ村っていうところです。」

フォンは脳裏に地図を描く。

アーシャ村ということは王都から大分離れた場所だ。

そもそもヴァリクラという国は横には広いが縦には短い。

南に下ってきたのは正解だ。無論、結果オーライではある。

「ところで、君はどうして俺の頭のしたにヒザを?」

「え?もぅ、昨日のことも忘れたんですか?

アナタが、ヒザの上に頭をのせたんですよ?」

「は?」

リンネは笑顔で言う。

しばらく、時空は凍結状態におちいった。

その凍結を解凍したのはフォンだった。

「どうして、こんなところに?」

「え?だって、ここが私のお家ですから。」

そういってリンネは地面を指す。

そこには質素なじゅうたんがしかれているだけだった。

「ホームレス・・・?」

「えっと、まぁ、そんなところですね。

あ、でも雨風はこの魔法陣で防げますよ。」

リンネはじゅうたんに刺繍された魔法陣を指差す。

「・・・。

すまない。」

「え?」

「あ、いや、なんでもない・・・。」

思わずフォンは謝ってしまった。

それは、まだ自分が国を動かす者であると認識しているからだ。

「世話になった。」

そういってフォンは南を目指す。

「あ、まってください。」

「・・・・。」

フォンは無視して歩く。

「とまってください!」

「なんだぁぁぉぅぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」

フォンは振り向いた瞬間に足を空中へ投げ出した。

そこはガケだった。

フォンは重力と回転する体の遠心力に逆らえずに転げ落ちる。

ほどなくして身体は止まった。

「もぅ、だから待ってっていったのに。」

リンネはガケを駆け下りてくる。

リンネはフォンの前に立つと落ちている剣を拾おうとした。

「!?」

しかし、持ち上がらなかった。

「あぁ、それは俺にしか持てないように魔法をかけてあるんだ。」

フォンは立ち上がる。

しかし、足元が崩れ、そのまま川に落ちた。

水しぶきがキラキラ光る。

「ぁ・・・。」

「んぅ・・・。」

「クスッ。」

「?」

リンネはびしょ濡れになったフォンを見て笑った。

しかし、不思議と嫌な気分にはならない。

フォンもつられるかのように小さく笑った。

フォンに白くて小さな手が差し伸べられる。

「服を乾かす間、ゆっくりしていってください。」

リンネは笑顔でフォンに手を差し伸べながら云った。

キャラクター紹介

名前 フォン・カマスティン

クラス 騎士

幼いころ住んでいた町を謎のモンスターに襲撃され、唯一生き残った少年。

その後、応援にきた当時の騎士長の養子となる。

戦争で騎士長が戦死し、その後をついで帝国騎士団に入団。

入団してすぐその頭角を現し、わずか6年で騎士長になりあがった。

しょっちゅう物をなくす。



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