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決意

「GRYAAAAAAAAAA!!!」

龍は咆哮してフォンと対峙する。

睨みつけるだけで生物など殺してしまえそうな黄金の瞳を、フォンはにらみつけた。

「それで?

どうすればいい?軍師。」

「ちゃ、茶化さないで下さい!!

チカラ押ししかないじゃないですか!!」

リンネはすでにパニック状態だ。

ま、こんな明らかに凶暴なドラゴンを目の前にして平然としていられるほうが異常だったりするわけだが・・・。

「GAOOOOOO!!」

レッドドラゴンは巨大で鋭利な爪を振りかざす。

「ちッ。」

フォンは飛び上がると、その爪が大地をえぐるより先に龍の腕を切りつけた。

しかし、剣は嫌な音をたて、振動が骨の髄にまで伝わる。

龍の腕は軽く火花が散っただけで、その赤い鱗には傷ひとつついていない。

そこへ、シーラの高速詠唱魔法が炸裂した。

放たれた雷は龍の鱗を焦がして、その巨体を後ずらせた。

「はぁぁぁぁぁ!!!!」

龍の膝を足場にしてフォンが龍の顔面に向かって飛ぶ。

勢い良く動くフォンの身体に連動して剣が強力な一撃で振り落とされた。

「刃斬激!!!」

紫色の斬波が龍の額に傷をつけた。

灼熱の炎を思わせる赤い鱗の下は人と変わらない肌の色だった。

「GGAAAA!!!」

怒り狂ったレッドドラゴンはがむしゃらに吼えている・・・かのように見えた。

レッドドラゴンが咆哮したのと同時に地面からマグマの柱が聳え立った。

「きゃぁぁぁ!!」

リンネはその熱風に腰を落とす。

フォンは吹き飛ばされながらも体制を整え、地面に着地した。

剣を縦に構えて視界の中で二つに分かれている龍を直視する。

龍は、翼を大きく広げ、無数のマグマの柱が聳え立つその中央で威嚇している。

普通の利巧な生物なら、その姿を見ただけで震え上がり逃げ出すだろう。

しかし、フォンはその龍に突っ込んだ。

何回も何回もその強固な鱗を切る。

斬られるたびに龍はポルテージを上げていく。

シーラも後ろから魔術支援をしてはいる、その一撃は確実に龍にダメージを与えている。

しかし、どうしても決定打にかけていた。

龍の血は不老不死の薬の材料だとされている。

本当にそんな効果があるかどうかは不明だが、その生き血に治癒の効果があることはわかる。

噴出すマグマの大地が徐々に熱を持ち始めてきている。

「あの下は・・・。

そうか・・・。」

リンネは無駄に熱せられた脳内を急激に冷やすかのように深呼吸した。

「フォンさん!龍の翼を集中攻撃してください!!」

「なに!?

・・・わかった!」

龍の真正面に立っていたフォンは、その肩を踏み台にして後ろに回りこんだ。

「GAAAA!!」

レッドドラゴンの視線がフォンを追う。

「龍砲斬!!」

まっすぐに突き出された剣から突風が巻き起こり、突風は翼を斬りつけた。

無数の鱗がはじけとび、赤い血が吹き出る。

「龍火!連空砲!!!」

連続して繰り出された奥義は、先ほどとは比べ物にならないパワーをほこる。

灰色の巨大な砲弾は、一直線に龍の翼の赤い鱗をえぐる。

「GYAAAAA!!!」

苦しそうに龍は吼えた。

その空気の振動にフォンの身体は耐え切れずに吹き飛ばされる。

フォンが地面に落ちるのと同時に、龍はその巨体を使って、フォンを亡き者にせんと飛び掛ろうとした。

龍が、飛び掛るために脚に力を籠めたその瞬間、リンネは叫んだ。

「シーラちゃん!あそこに火炎魔法!!」

同時に、一瞬とも変わらないシーラの高速魔法が燃え上がる。

燃え上がる炎の上級魔法レイジングストリームが龍の足元の地面を砕いた。

地面は吹き上がるマグマによって熱せられており、火炎魔法の助力を得て高温とし、大地は溶けるが如く崩壊した。

そして、その下に眠るマグマの地脈をあらわにした。

レッドドラゴンは落下していく巨体を支えきることなく、マグマの河の中に消えていく。

「GYAAAAAAAA!!!!」

断末魔と共に。




「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

ウォンカはレッドドラゴンの横っ腹にハンマーをぶち込んだ。

白と赤の鱗がはじけ飛ぶ。

「GURAAAAAAAA!!!」

レッドドラゴンは咆哮した。

それと同時にマグマの海が波立つ。

「ちょ!怒らせてるだけじゃん!!」

「うっせぇ!!んな簡単に龍が倒せるんなら苦労しねーだろが!!」

「うぉ!ウォンカの兄貴!前々!!!」

「ぬぉぉぉぉぉぉ!!!」

水平に振りかざされた爪の一撃を、ウォンカは根性で避けた。

ウルムの矢は歯が立たず、ミアの連続攻撃も無意味、実質ウォンカは一人で戦っていた。

「くそ!」

ウルムは龍の目に狙いをつける。

しかし、何度撃っても熱気のせいで気流が変わり、矢が思うところに飛ばない。

矢は、火口の方へと飛んでいった。

もう数十分もマグマの中の孤島で戦っているせいで、体力もほぼ限界だ。

「GAAAAA!!!」

レッドドラゴンは咆哮して飛び掛ってくるウォンカを吹き飛ばす。

「ちぃ!」

場所が悪すぎる。

空気は熱せられており、呼吸するだけで肺が焼けそうだ。

マグマの光は目さえ焼く。

ゴツゴツした溶岩の地面は悪く着地したら確実に足を挫くだろう。

それでも、跳ばなくてはこの巨大な龍にまともにダメージを与えることは不可能だ。

龍がすでに何度目か忘れたが、その鋭利な爪で地面をえぐる。

吹き飛ばされた石がウルムとミアを襲った。

「きゃあ!!」

「うわぁ!!」

勢い良く跳んでくる石は身体に傷を作るのと同時に視界を塞ぐ。

跳んできた石にまぎれて龍が爪をたてた。

「!!!!!」

ミアはその爪が自分に向かって飛んでくるその様子を見てしまった。

身体が硬直し、もはや避けることはできない。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

血渋きと共に、肉が引き裂かれる嫌な音を、ミアは聞いた。

その一撃は、華奢な体つきのミアの肉を、骨ごと斬って真っ二つにする。

どんなに修羅場を越えてきたにしろ、死の理からは逃れられない。

「つっ・・・・ぐぅっ・・・。」

「ぁ・・・。」

しかし、龍の爪はミアの目の前で止まっていた。

否、ウォンカによって止められていた。

確実に即死するような一撃を無理に止めたため、ウォンカの手は血であふれている。

「ぅおぉらぁぁぁぁぁぁ!!!!」

回転しながら爪を弾く。

「爆天衝!!」

そのまま爆発の如く放たれた衝撃波が爪を砕いた。

「GYAAAAA!!!」

レッドドラゴンは爪から血を流しながらわめいた。

「くっ。」

ウォンカは追撃しようと踏み出した足を止め、膝をついた。

「ウォンカの兄貴!」

ウルムが駆け寄る。

「っくそ・・・。」

無理にミアの前に飛び込んだのと、龍の一撃を無理に防いだのが重なって、足を予想以上に痛めていた。

「・・・!」

ミアはウルムとウォンカの前に出る。

「あたしが時間を稼ぐから、アンタ達は逃げて。」

「馬鹿言うな!!」

「うっさい!

あんたは足怪我してるんでしょうが!!

ウルム君の矢だってここじゃあ飛ばないんじゃ、勝ち目ないでしょうが!!!」

「だからって!囮になるつもりなのか!?」

ウルムはウォンカを気遣いながら叫ぶ。

視界の向こうで龍が体制を整えている。

誰にでもわかる、勝てない。

「ここで全員お陀仏かますよりははるかにマシでしょう?」

「ふざけんな!!

まだ勝てねぇって決まってないだろ!」

「アンタの方が馬鹿でしょ!

アレを見なさいよ!

あんなのに人間が普通に戦って勝てるわけないでしょ!

それに、勝てるわけがない奴と戦わせちゃったのはあたしだし・・・。」

「GRAAAA!!」

「ち!」

ウルムは向かってくる龍の目を睨みつけて矢放つ。

しかし、軌道がそれ、傷ついた爪に刺さる。

「GYAAAAA!!!」

龍は再び止まる。が、それは時間稼ぎにしかすぎに。

「早く行って!!!」

ミアは元々小さいが、よけいに小さく見える片手剣を構えた。

「おい!!」

ウォンカが叫んだが、ミアはそれを無視するかのように前へ出た。

そして、少し振り返り、涙がこぼれそうな瞳で一言つぶやいた。

「ごめんね。」

ミアは前に向き直ると、レッドドラゴンをにらみつけた。

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

駆け出す視線の先で、レッドドラゴンが口に炎を含ませた。

勝てると思った。

最初にここに来たときは、2匹の龍を見て愕然としたが、1匹ならどうにかなると思った。

実際、今まではどうにかなったのだ。

しかし、今回は違う。

ドラゴンなんかに人は勝てない。

それを実感した。

生まれ変わったら、ちゃんと覚えておこう。

そう、自分に言い聞かせて、繰り出される龍の炎に飛び込んだ。

灼熱色に輝く炎はミアの身体の何倍もあった。

ミアが死を再び悟ったその瞬間、すぐ横を水流が駆け抜けた。

「!!!」

目の前で水と炎がぶつかり合い、相殺する。

水蒸気が呼吸と共に肺に流れ込み、むせる。

「ミアさん!!」

リンネが叫んでいた。

「GRAAAAAAA!!!」

レッドドラゴンが霧の向こうで咆哮する。

目には、一本の矢が刺さっていた。

それは、さっきウルムが外し、火口へと飛んでいった矢だった。

レッドドラゴンは天を見上げながら苦しがっていた。

「閃光!徐甲墜刃!!」

フォンが火口から落下してくるのと同時に、光り輝く刀身を発生させる奥義で、龍を口から引き裂いた。

龍は、断末魔を上げることなく倒れこみ、マグマの津波を起こして消えていった。




「いいとこどりかよ。」

「安心しろ、俺ももう1匹の龍のいいところはリンネとシーラにもっていかれた。」

ウォンカとフォンが苦笑する。

「ああぁ!!!!!」

ミアが叫ぶ声が、今は広く感じる洞窟内に響いた。

「お宝がぁ〜〜〜!!!」

見れば、マグマを被った金銀財宝が、完全に融合していた。

「これじゃあ持ち運べないよぉ〜〜。」

「あ、でもこの真珠のネックレスは無事みたいだぜ?」

ウルムが指差す場所に真珠のネックレスがあった。

「本当!?」

期待を胸にミアがネックレスをとった。

しかし、真珠はボロボロと崩れた。

「ぁ・・・。」

ミアは腰を落としてガックリと肩も落とした。

「せっかく・・・苦労したのに・・・。」

「えぇ〜っと・・・。」

リンネはどう励ましていいのかわからない様子だ。

ミアの後ろでオドオドしている。

「・・・・ねぇ、あの小屋に居たのって・・・間違いなくアンタたちよね?」

「え?・・・えぇ、そうですけど。」

リンネは急に話しかけられて目を丸くしている。

「よし。決めた!!

アンタラに付いていく!」

「はぁぁ!!?」

ウォンカは心の底から叫んだ。

「なんかさ、あんたらと居た方がお宝に出会えそうな感じがしてきた。」

「いやいやいや!!」

「よし!それっじゃあ帰ろうか!!」

ミアは塊と化した宝の山から下りてくる。

「・・・・あんたにも借りかえさないといけないしね・・・。」

ウォンカの横を通るときに、ミアはそうささやいた。




久々の更新です。

ちょっと他の小説を読んで勉強したので今回は良い出来にしあがったと思います。

具体的には「レンタルマ○カ」を参考にしました。

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