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赤き守り手

「腹へった〜・・・。」

明らかに脱力しきったウォンカの声が門に響く。

石を積み上げて作ったトンネルのような門は薄暗く、ジメジメしていた。

一晩を干し魚ひとつで野宿した彼らには非常に居心地が悪い場所だ。

「なぁ・・・まだか?」

ウォンカはさっさと仕事を終わらせてまともな食事にありつきたい・・・っと昨日から騒いでいる。

そこへ、一人の少女が駆け寄ってくる。

「オッス!みんな元気かな!?」

「あんたが今回の依頼主かぁ〜?」

ウォンカが前にヒュロヒョロと歩み出る。

そして二人の視線が合う。

「・・・。」

「・・・。」

「「あ〜〜〜!!!!!!」」

二人で同時に叫ぶ。

他の4人がとっさに耳をふさいだ。

「おまえ!あの時の泥棒女!!」

「あんた!あん時のヘタレハンマー!!」

お互いが指を指して言い合う。


その少女は以前、リンネがフォーデングリフ教に捕まった時にサッソウと現れ、そして疾風の如く消えていった少女だった。

年はリンネと同じくらいにみえる。

黒いセミショートの髪を後ろで止めている。


「おい!誰がヘタレハンマーだ!!」

「だって!あたしに一撃も当てれてないじゃん!!

大体泥棒女ってなによ!?

あたし盗んでないじゃん!!!

あたしはトレジャーハンター!!

いい!!?ト・レ・ジャー・ハ・ン・ター!!!!」

自称トレジャーハンターの少女は腰に手をそえて前かがみになりながら云う。

「・・・それで?

今回は何をすればいい?」

フォンが静かに本題に入った。

少女はウォンカをステップで通り越してフォンに向き直る。

「んとね。

依頼書に書いてたと思うけど、この先の洞窟の最奥部のお宝を一緒にとりに行ってほしいの!」

少女はお金が入った包みをフォンに渡す。

「これ前金ね♪

残りは終わってから渡すから!」

少女は云うだけ言うと先に立って歩き出した。

「あ!そうそう!」

少女はクルリと一回転して一行に振り向いた。

「あたしの名前はミア、ミア・エシュ・ドーテル!よろしくね♪」





北門を抜け、草原を進む。

この草原には数種類の大小さまざまな龍が潜んでいる。

一般的に龍は高地・火山地帯を好むらしいが、こういった草食の龍もいる。

龍と一言にいってもその容姿・能力は実に様々で、火を吐くものもいれば大地を震え上がらせるものもいる。

この草原の龍には毒を吐きかけてくるものがいる。



毒気に何度も侵されながらやっとの思いで洞窟の入り口にたどり着いた。

リンネの補助魔法がなければここまでたどり着けなかっただろう。

「はい!!みんな注目!!」

ミアが大きな声で右腕を天にかざした。

「ここで二人ほど待機ね。」

「は?なんでよ?」

「いいからいいから。」

ミアは数本の紙束を持ち出した。

「これで決めるよ♪」


<結果>

洞窟探索チーム

ミア・ウォンカ・ウルム

待機チーム

フォン・シーラ・リンネ



「ちぇ、ヘタレハンマーと一緒か・・・。」

「んだとぉ?」

「役に立つんでしょうね?」

「てんめぇ・・・・!」

「ま、まぁまぁ。」

探索して早々に喧嘩が始まった。

ウルムは必死に爆破寸前の核爆弾を押さえ込む。


洞窟の中は非常に暗かった。

しかし、ある場所を境に溶岩の洞窟へと変貌した。

煮えたぎるマグマは全てを焼き尽くさんと待ち構えている。

細く、もろい溶岩の橋を渡っていく。

ときおりマグマが吹きかかってくる。


その溶岩の橋の終着地点にはあきらかに人が作ったとわかる門、または祭壇があった。

「これ・・・確実に人工だよな・・?」

ウォンカは恐る恐る祭壇に近づいた。

「あったりまえでしょ?

ここにお宝があるんだから人がここに来たことがあるにきまってるじゃん。」

ミアは馬鹿馬鹿しいと云わんばかりに扉を開いた。

そして、その奥には黄金に輝く金貨の山があった。

所々から真珠のネックレスやダイヤモンドの指輪など、おとぎ話に出てくるような財宝が見える。

そして、その上にも・・・。

「ZZZZZZZZ。」

おとぎ話に出てくるような・・・。

「・・・・・ぇ?」

ソレが眠っていた。

「あの・・・。」

ウォンカは硬直した。

そこに眠っているのは正真正銘の・・・。

「レッドドラゴン・・・?」

だった。


赤い鱗が金の光に反射して、まるで燃え滾る炎のようだ。

神話やおとぎ話ならこの一匹の龍を奇跡のパワーで倒すのだろう。

しかし、奇跡チックなことができるフォンは外にいるうえに。

「ZZZZZZ.」

「ZZZZZZZ.]

そこに眠っているのは二匹のレッドドラゴンだった。

それも番だ。

番の龍は非常に危険で、元々IQの高い龍の番を相手にするのは数百の軍団を相手にするのと同じだといわれる。

その最も脅威となるのは完璧なまでの連携だ。

「さぁ〜て・・・。」

ミアが手ごろな石をつかむ。

「まてまてまて!!!!

おまえ何する気だ!!?」

「何って?起こすにきまってるじゃん。」

「おまえはアホかぁ!!?

レッドドラゴンなんか相手にしたら死ぬぞ!!?」

「死なないように、あんたら雇ったんじゃない。あたしの全財産報酬にして。

死んでもいいけどお金分ぐらいは働きなさいよ。」

「ふざけんなぁ!!!」

ミアはビクッと肩を震わせて少し縮んだ。

「あんなの相手にしたら命どころか魂だって喰われちまうよ!!」

「あ・・・ウォンカの兄貴?」

ウルムがウォンカの袖をひっぱる。

一瞬眼に映ったシアの表情は凍り付いていた。

少し言い過ぎたかな?っと思ったが、ウルムの指す方向を見て納得した。

そこには、眼を覚まして口から灼熱を吹きかけようとしているようにしか見ないレッドドラゴンが二匹、こちらにガンを飛ばしている。

「ほっほぅ・・・・お目覚め?」

ウォンカは苦笑いしながら声を出す。

「ぁ・・・。」

ウルムは完全に硬直している。

巨大な龍はゆっくりとこちらを見つめている。

「んで?ミアさん?

起こした後はどーすんの?」

「いや・・・一匹ずつならあたしの作戦がうまくいったんだけど・・・。」

ミアは頭の中で何回も叫んだ。

(お願い!気づいて!!!)

一匹の龍が上空を見つめた。

(・・・!!)

その龍は翼を広げると、開いた天井から飛び出した。

「かかった!!」

ミアは腰の片手剣を引き抜いた。

金属の澄んだ音が響く。

「ど、どういうことだ!?」

「番の龍は敵が複数いる場合は分担して各個撃破に向かうの!

あたしらはこいつを叩く!!」

ウォンカとウルムはそれぞれの武器を取り出した。



=洞窟入り口=

「はい。」

リンネは入れたてのハーブティーを差し出した。

「あぁ、ありがとう。

こんなところにハーブが生えているんだな。」

フォンは受け取ったハーブティーを口に含む。

ほのかな香りが口いっぱいに広がって鼻へ回ってくる。

シーラもなれないハーブティーを口にする。

押し寄せる苦味で顔を背けた。

二人はそれを見て微笑む。

さながら親子のピクニックといった感じだ。

ま、単刀直入にいってしまえば暇なのである。

そんな3人に一瞬影がかかる。

「ん?」

フォンは空を見た。

そこには青空が広がっている。

「・・・。」

そのまま一気にハーブティーを飲み干し、ティーカップをおいた。

それと同時だった。

赤い巨大な龍が地響きをたてて3人の前に落ちてきた。

「GLAAAAAAA!!!!」

「きゃぁぁ!!!?」

リンネは悲鳴を上げて倒れこんだ。

この状況下でビビらない人間は普通いない。

「なるほどな・・・。」

フォンは立ち上がると剣を抜いた。

今回の話の補足をすると。

ミアの作戦は一匹を起こして外の別働隊(?)の方へ誘導、残りの眠っている一匹を闇討ちで撃破!

でした。

龍は一回寝るとなっかなか起きないそうです。

まぁ石当てた程度で起きるならそれほど深い睡眠でもないような気が・・・^^;

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