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進むべき道と帰すべき場所

=宿屋=

「ん〜・・・!!」

リンネは背伸びをする。

しばらく寝たきりだったので肩がこっているようだ。

「ただいまー。」

ウォンカは勢いよく扉を開いた。

「ん?リンネちゃん、もう大丈夫なのか?」

「はい!」

いつもの笑顔でリンネは答えた。

輝かしい笑顔と長い金色の髪がよく似合う。

「それで、アドランス邸には行き着きましたか?」

「それがさぁ〜。」

ウォンカは頭をかきむしるしぐさをする。

「なんかケリシリスっておっさんの文通相手とかいう娘さん?

が、もう死んでるらしくってさぁ。」

「おっさんって・・・あの方まだ28歳ですよ?」

リンネは苦笑する。

「・・・そうなのか?」

フォンは素直な質問をした。

「はい。」

自信満々にリンネは笑顔になる。

「よく知っているな。」

「えぇまぁ。」

フォンはリンネの笑顔を見て少し安心した。

いつもどうり、表情からは何も読み取れない謎100%の笑顔だ。

まぁそれはそれで問題な気がしなくもない。

「それじゃあ行きましょうか?」

「え?どこに?」

ウルムは目を丸くする。

「アドランス邸へ♪」

まったくもって表情からは何も読み取れない。



=アドランス邸前=

「んでさ、ついさっき来たばかりなんですけど・・・どのツラして入ればいい?」

ウォンカはオロオロ門の奥を見る。

門は来た時と同じ、固く閉ざされている。

リンネは門の隣の植木に手を突っ込んだ。

「姉御?」

「ん〜?」

しばらくして、リンネは自慢気にカギをウルムに見せた。

「何それ?」

「この扉のカギですよ?」

リンネはまるでそれが普通だと言わんばかりに門を開いた。

「い、いいのかよ?勝手入って・・・。」

「あたりまえじゃないですか。」

リンネはそのまま屋敷へと入る。

その後を一行がついていく。



=アドランス邸・エントランス=

「誰だ・・・!?」

ジーカが扉の開く音がして階段を下りてくる。

「忘れ物を取りに帰ってきました。」

リンネはいつもとは違う、冷たい声で言い放った。

フォンはこの声に聞き覚えがある。

そう、今の話し方は初めてリンネに出会ったあのときに聞いた。

「リンネ・・・おまえ、何故ここに・・・?」

「忘れ物取りに来ました・・・と云いました。」

反抗的な声で一直線に部屋へと足を進める。

「ど、どういうことだ・・・?」

ウォンカが頭を回している間にも、リンネは二階の一室に入っていった。


「・・・まだ、あったんですね・・・私の部屋・・・。」

リンネは部屋においてある本棚の中から分厚い一冊の本を取り出した。


「・・・。」

ジーカはリンネが入っていった部屋の扉を見つめている。

「どういうこと?」

ウォンカはまだ頭が混乱している。

「ジーカ殿。」

フォンは歩み寄った。

ジーカは静かに視線をフォンに向けた。

「リンネが、あんたの亡くなった娘ですね?」

「・・・・。」

ジーカはまた視線を戻す。

すると、リンネが部屋から出てきた。

手に緑の本を持っている。

「ケリシリスさんがここにどんな人が居るって云ったか、覚えてますか?」

リンネは冷たい笑顔で問う。

「・・・医者を志す軍師。

手助けになると。」

リンネは階段の上で暖かい笑みを作った。

「ガンデス公国軍元指令官、リンネ・アドランス。

ヴァリクラ王政奪還のため、フォン騎士長様におつかえいたします。」

「えぇ!!?」

ウォンカの頭から煙が出る。

「何がどうなってんだ???」

ウォンカの頭は完全にシュートしていた。

「順を追って説明してもらえると助かるのだが?」

フォンは半分身を乗り出している。

話についていけないウルムとシーラは立ち尽くしている。

「いいですよ。

私は元々医者を志していました。でも、お家柄で兵法を学んで、最年少でガンデス公国軍の指揮官、すなわつ軍師になりました。」

「それが、どうして異国のホームレス少女に成り下がった?」

「そこの・・・私の父にあたる方に追い出されました。」

ジーカは黙り込む。

「・・・。」

フォンも次の言葉が決まらない。

「行きましょうか。」

リンネは階段を下りていく。

そしてジーカの隣を無表情で通り過ぎていく。

「・・・何故、戻ってきた・・・。」

「忘れ物を取りに・・・コレを取りに来ました。

安心してください、もう二度と戻ってきません。」

「当たり前だ。」

ジーカはそのまま階段を上っていく。

「おい、ちょっとまった!」

ウォンカはジーカを呼び止めた。

「なんで自分の子供を追い出すんだよ!!?」

ジーカは足を止めたが何も語らない。

リンネはウォンカの叫びを無視して屋敷を出た。

「え・・・と。」

ウルムはとりあえずリンネを追いかけた。

シーラもその後を追いかける。

エントランスには3人だけが取り残された。

「何か理由でもあるのか?」

「それを聞いてどうする?

忘れたか?娘は死んだんだ。」

「・・・それがアンタの答えか?」

「・・・。」

「おい待てフォン!

んな答えなんざどーでもいい!!

俺が聞きたいのはどーして娘を追い出すようなことになったかだよ!?」

ウォンカはジーカにつかみかかろうとする。

それを、フォンが止めた。

「!?」

「・・・。」

フォンは静かに首を横に振った。

「どぅしてだ・・・?」

今までの活気は消えた、小さく冷たい声でウォンカはジーカに問う。

「娘は・・・死んだんだ。」

ジーカはそのまま自室へと戻っていった。


「行こう。」

フォンはウォンカと共に外へ出た。





=アドランス邸前=

「さて!」

暗い顔で出てきた二人に、リンネは笑顔で歩み寄る。

「これで、ヴァリクラを救う最初の一歩が踏み出せましたね。」

ウォンカはテンションを上げる話題だと感づいた。

「ほぉ!国を取り返すねぇ・・・じゃあこの一味は一個の軍団だな!」

「そうですね。

隊長はフォンさんです。」

「ん?あ、あぁ。」

リンネはフォンの両手を握る。

「軍団が強くても武器がよくねぇとな!

俺は軍団専属の鍛冶師だ!」

「じゃ、じゃあ俺は狙撃手ってことで!!」

「待て待て、勝手に話を進めるな。

国を相手にするんだぞ?

遊びじゃない。」

「あら?」

リンネはフォンの顔を覗き込む。

「私は元が付きますが、一国の正規の軍師ですよ?」

「俺が遊びで鍛冶師目指してるとでも?」

ウォンカは腰に手をやる。

「お、オイラだって!生きるために弓引いてたんだからな!!」

ウルムも強がって胸を張る。

「シーラちゃんはお姉さんの後任の魔道師ですね。」

シーラ(←遊び半分で魔法を覚えた)は少しオドオドしながらうなずく。

「・・・。」

「いいですか?フォンさん。

今のこの戦力はとても有力ですよ?」

「?」

「だって、どんなに強固な軍団も、絆で結ばれた軍団には勝てないんです。」

リンネは両手を広げた。

フォンは無意識に全員と目が合う。

それは、かつて従えたどの軍団よりも頼りになる。

「・・・そうだな。」

フォンは少し表情を崩した。

「では、これからどうする?軍師殿。」

「そーですねぇ・・・。」

リンネはクルクル回りながら考える。

「それじゃあ、まずは財政を整えましょう。」

「うわ!現実的すぎ!」

ウォンカは後ろによろける。

「当たり前です!遊びじゃないですから!

っというわけで、このまま陸路で南下します。」

リンネは先頭に立って歩き出した。

全員、その後ろについていく。

ウォンカとフォンがアドランス邸に振り返る。

「このままにしとけないよな?」

「・・・・あぁ。」

一行は荒野へと進んだ。


キャラクター紹介

名前:リンネ・アドランス  18歳

幼いころ難病にかかり、その治療のために出会った医師にあこがれ、医者を志すようになった。

しかし、由緒ある公国軍師の家系であったため、その道をあきらめざるをえなくなった。

軍師としての活躍ぶりは他に引けをとらず、その評判は一時、ガンデス中に広まった。

17歳のとき、父親の態度が激変し、家を追い出された。

それにいたる経路は現在不明。

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