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隠されている真実

今回から第二章の幕開けです。


=客船ローマンレール号・客室=

「ゴホッゴホッ!」

「忘れていた・・・・。」

フォンは頭を抱えて立ち尽くしている。

「云えよ先に。」

「すまない。」

ウォンカは呆れた口調でフォンに言った。

フォンは素直に自分のミス(?)を謝った。

ここ数日、忙しい極まりない出来事が立て続けに起こったのでフォンはもちろん、リンネ自身も忘れていた。

「コホッコホッ!」

風邪気味だということを・・・。


リンネは以前、迷いの森よろしくラーホネットの森でフォンに風邪気味だと言っていた。

彼女は医者を志した時期があり、風邪への対処法は知っていた、ゆえに、いままで発症しなかったわけだが、国を超えるに当たってその環境の変化が彼女の体の耐性を衰えさせたため、発症にいたった。(本人談)


リンネは客室の白いベッドに横になっている。

シーラが心配そうにその隣で座っている。

その一角だけを見ればまるで病室だ。

「ミレルに降りたら一旦病院へ行くか。」

フォンは地図を取り出して病院を探す。

「あの、大丈夫ですよ。」

「ダメダメリンネちゃん!!風邪は万病の元だぜ?」

「そうだよ姉御!病人はゆっくりしてればいいって!」

「いえ、本当に大丈夫です。

一日眠れば直りますから。」

リンネは上半身を起こしながら答える。

いつもは明るい少女が急に弱弱しくなると、健気に見えてきてしまう。

これがギャップというやつだろう。

「本人の意見を尊重するか。」

フォンは広げていた地図に印をつける。

「なんだよ?風邪を甘く見たらダメだぞ?

うちのばぁちゃんなんか風邪で吐いたぞ?」

「知るか。

何より・・・。」

フォンは財布を広げて見せた。

そこから一枚の硬貨が回転しながら落ちていく。

「・・・・うわ。」

ウルムが哀れみの声を上げた。

「さむ・・・。」

ウォンカが両手を交差させて両肩をつかむ。

ここガンデスは比較的暖かい国だ。

しかし、この一行の財政はヴァリクラ並に寒かった。

「っと云うわけだ。

この宿が一番安い。」

広げた地図に赤い丸が描かれていた。




=ミレル=

フォン達はリンネを宿に寝かしつけてケリシリスのメル友もとい文通仲間の<アドランス>を訪ね歩いていた。

シーラはリンネに付き添っている。

「んでさ、そのケリシリスっておっさんの文通相手ってやっぱおっさんか?」

ウォンカはリンゴをかじりながら歩いていた。

「知るか。」

フォンは軽く受け流す。


ミレルはそれほど大きい街ではない。

むしろ、田舎と言ってもいい。

地面は石で敷き詰められており、一見すれば白と黄色が目立つ町並みだ。

河から内陸へは一直線に進むことができる細長い町なのだ。


フォン達は道行く人に尋ね、ある大きな貴族の家の前に来ていた。

「アドランス・・・ここか。」

フォンは表札を確認する。

ウルムがベルを鳴らす。

「はい。」

程なくして一人の男性が出てきた。

「あなた方は?」

「我々はケリシリス殿の紹介でここにきました。」

フォンは少し表情を崩して云った。

「・・・・アルケミスタか?」

「あるけみすた?」

ウォンカが聞きなおす。

「・・・違うのか?」

「アルケミスタとは別件です。」

フォンが断言する。

ウォンカとウルムは意味がわかっていない。

それがわかったのか、男性は門を開けてくれた。

「話は中で伺います。」



=アドランス邸=

「すっげぇ〜・・・。」

ウルムは始めてみる豪邸に目を奪われる。

一応豪華客船には乗ったが、それとはまた違ったゴージャス感が出ている。

「それで?用件とは?」

男性はティーカップをテーブルにおいて早々に話を持ちかけてきた。

彼の名はジーカ・アドランスというそうだ。

いかにも医者といった雰囲気のある男である。

温厚そうな彼は鼻の下で左右に均等に伸ばしたヒゲをさすっている。

「二つ・・・。」

フォンは静かに話し始めた。

「ひとつは、ケリシリス殿の訃報をお知らせに・・・。」

「な!」

男性は一瞬驚いたように目を見開いた。

しかし、すぐに元に戻る。

フォンはあることを確信した。

「それで?もうひとつは?」

「・・・ケリシリス殿と文通の仲にあった方がいらっしゃるとお聞きしました。」

「・・・・。」

ジーカは黙り込んだ。

ウォンカは出されて早々飲み干したティーカップをテーブルに戻す。

「居ない。」

「は?」

ウォンカが無意識に声を出した。

「娘はもう、家には居ない・・・!」

「娘さんが、ケリシリス殿と文通を?」

「そうだ、娘は医者を志していた。

ガンデスとヴァリクラの友好条約記念式典で彼にそのことを告げると、彼は笑顔で娘に手紙を書いた。

しかし、娘はもうここには居ないのだ。」

「居ないって・・・・どういうことだよ?」

ウォンカはさらに聞く。

フォンは黙ってジーカの顔を見つめている。

「死んだ。」

その言葉にウルムとウォンカは言葉を失う。

触れてはいけない場所というものが心には存在する。

男は悲しそうにティーカップの水面を眺めている。

「・・・失礼しました。」

フォンは立ち上がると、さっさと部屋を出た。

ウォンカとウルムも軽く頭を下げて部屋を出る。




=アドランス低前=

「・・・。」

フォンは早足で宿に向かう。

「おいフォン!待てって!!」

ウォンカとウルムが走って追いつく。

「何を急いでるんっすか?」

ウルムは早足で進むフォンの真横につくように速度を調整している。

「あの男はケリシリスの名しか知らない。」

「はい?」

ウルムは素っ頓狂な声を出した。

フォンは立ち止まり、二人に向き直る。

「あの男は何かを隠している。」

「何かって何だよ?」

「わからない、何を隠しているのか・・・・思い当たるフシが多すぎる。

どれかひとつか、それとも全てか・・・。

とりあえず宿に戻るぞ。

ここで調べることは山ほどある・・・!」






キャラクター紹介

名前:シーラ・リューリル  13歳

身体の8割の感覚を失っている少女。

幼くして宗教戦争により親を亡くし、1週間姉妹で路頭をさまよったことがある。

実家はリンゴ農園で、それなりに彼女もリンゴにうるさい口。

リーデニスの見よう真似で、半分は遊びで魔法を習得したが、

小回りの聞く下級魔法や万用性のある中級魔法を扱えない。しかし、素質はあるため、彼女が習得している5つの上級魔法はどれも強力である。

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