白と紅、そして・・・(後編)
今回はR15ギリギリです(多分)。
想像のしかたによってはすっごいエゲツないです。
苦手な方は今回はパスするか、あんまり深く考えずに読んで下さい。
エゲツないのは最後のほうなんで半分上は大丈夫です^^;
=シュリクリム号=
ウォンカは船内を走り回る。
「くっそ〜、どこだ?」
同刻、フォンは船内の主に下層部の部屋をしらみつぶしに歩いていた。
時々、ウォンカとフォンはすれ違う。
「どうしてアイツは同じ場所をグルグル走ってるんだ?」
フォンは呆れながら階段を下りていく。
このシュリクリム号は国宝級の豪華客船だ。
ルーキアスの配慮がなければ庶民が乗ることはできない。
しかし、今回はそれがアダとなった。
巨大な船内に加え、争いごととは無縁の上流階級のボンボンが乗り合わせている。
もし、人質にでもとられたら救助は困難だ。
救出時にカスリ傷でも負わせてしまえば、一体いくらの医療費を払わせられることやら・・・。
=甲板=
リンネは女性の治療に集中していた。
未熟な瞬間治癒魔法も、時間がたつにつれその効果を発揮していく。
女性の流血は完全に止まっている。
「マァマァ〜。」
隣で少年が泣いている。
「ぅ・・・クリス・・・。」
女性は我が子を開かない目を無理やり開けて見る。
「動かないでください。私のチカラじゃ、まだまだ動かないほうが賢明です。」
リンネは両手を重ねて傷口の少し上に手を添えている。
その隣でウルムとシーラが誰か居ないか確認している。
=船内=
ウォンカはエンジンルームに飛び込んだ。
ー立ち入り禁止ーの張り紙を無視して。
「へっ、みーっけた。」
ウォンカはエンジンに細工をしている明らかに怪しい人物をたまたま発見する。
「うわ!見つかった、なんでわかったの?」
「船に潜入した敵役はエンジンに近づくってのがお約束なんだよ!」
「え〜そうかな?
ま、なんでもいいや、兄貴達に怒られそうだから、おまえ殺す。」
明るい口調で青年は剣を取った。
「ほぉ、おもしれぇ・・・。
鍛冶師に剣向けるとはいい度胸だ。」
ウォンカはハンマーを構える。
「あれ?君鍛冶師なの?
いいの?鍛冶師がハンマーを武器にしちゃって?
鍛冶師にとってハンマーって神聖な物でしょ?」
「ほぉ、よく知ってるな。
でもな、物なんて使えるときに使えるヤツを使ってナンボなんだよ!」
ウォンカはハンマーを振り上げた。
「・・・。」
フォンは船長室をノックする。
しかし、返事がない。
不振に思ったフォンは扉を開けた。
「ん〜ん〜〜〜〜〜〜!!」
船長はレトロな感じでグルグル巻きにされていた。
「ここからの眺めはすばらしい・・・そう思わないか?未熟な勇者くん?」
長身の男が船長室から窓の外を眺めている。
「おまえか?」
「いかにも、私はオレオン・F・リスタード。
国際指名手配中のD級ランクだそうだ。」
男は他人事のように説明した。
国際指名手配犯には階級が取り決められており
A〜Zまででつけられる。
「D級とは、少々気に食わない立ち位置だがね。」
オレオンは振り向いた。
大きなツバのついた茶色いトンガリ帽子をかぶっている。
フォンは、腰の剣を抜いた。
「兄様・・・用意ができました。」
フォンは声のした方向を目だけでおった。
そこにはまだ小さな男の子が立っていた。
年はウルムとシーラの中間といったところだ。
「兄様、コレ何?壊していいの?」
冷たい声と目で、少年はフォンを指す。
「そうだな、壊しておこうか。」
「うん、兄様。」
少年はフォンに向き直る。
「・・・。」
フォンは二人を同時ににらみつける。
「てやぁぁぁぁぁ!!!!」
ウォンカはハンマーで青年をおもいっきり吹き飛ばす。
「つ!」
青年は剣の腹でそれを受け止めてしまっている。
チカラを受け流すこともできずに、青年はエンジンルームの天井を貫く。
そして、甲板に出て、そのまま空高く舞い上がる。
ウォンカは所々の階を足場にして甲板に出た。
青年は手すりに着地した。
「やるね、ニイチャン・・・。」
「おまえはまだまだだな。」
「おまえじゃない!ギルだ!」
「ほぉギルってのか。」
ウォンカは声は陽気だが、顔は笑っていない。
後ろでリンネが女性を治癒魔法で回復させている。
それを見たギルは不敵な笑みを浮かべる。
「ふふふ。」
「あ?」
「もうすぐショータイムだよ。」
「そうか、じゃあその前に叩き潰す!!!」
ウォンカは床を蹴って前へ出る。
そして、ギルごと船の外側で落ちる。
二人は河を越えて陸地に落ちる。
「ウォンカの兄貴!」
ウルムが手すりに走って二人の所在を確認する。
二人は草原で戦っていた。
金属のぶつかる音が響く。
それから数分と経たないうちにギルの剣は折れた。
「え?」
ウォンカはそのままギルの横っ腹にハンマーの打撃を直撃させる。
「ぐぁっ・・・!!!!!」
ギルは転がっていく。
「くっそ・・・!」
ギルは苦しそうに立ち上がる。
「さぁ、ココから先は俺主催のフェスティバルだ!!」
ウォンカは2つのハンマーをブンブン回す。
「押しつぶされろ!!秘奥義!木端微塵!!!!」
ウォンカがハンマーを逆八の字に構えた瞬間、上空から圧縮された空気の弾が一気に落ちてきた。
「あぁぁぁあぁぁっぁぁぁああああ!!!」
その空気の弾はギルの身体に降り注ぐ。
否、厳密にはウォンカの周囲に落ちているのだ。
数秒間、空気の弾は降り注ぎ続けた。
空気の弾の雨が全て落ちると、そこには無数のクレーターができていた。
「俺の勝ちだな!」
ウォンカはハンマーを収めた。
シュリクリム号の船長室の窓ガラスが割れる。
その破片は甲板に音をたてて落ちた。
そこから男が二人落ちてくる、それを追うようにフォンが落ちてくる。
オレオンに抱かれた少年は腕を突き出した。そこから雷撃がはしる。
フォンはそれを剣でなぎ払った。
「なかなかやるようだね。」
オレオンは笑いながら甲板に着地する。
「あ、ギル。」
少年は倒れているギルを見る。
「そうか、君の仲間か?」
フォンも甲板に着地する。
「そのようだ。」
オレオンはフォンに変わらぬ笑みを見せる。
「あ〜!くっそ!フォンの方が数多いじゃねぇか!!負けた!!」
ウォンカは草原から叫ぶ。
「君の仲間はお気楽だね。」
「・・・同感だ。」
フォンはオレオンの皮肉に賛同する。
「さぁ、ショータイムだ。シオ。」
「うん、兄様。」
シオは治療中の女性に腕をかざした。
「クリムゾン・ブレッド。」
「あぁぁあぁぁぁぁぁぁああああああ!!!」
女性は急に悲鳴を上げた。
リンネは驚いて後ろに転びそうになる。それをシーラが支えた。
「ママ!?ママ!!?」
少年は母親の手をとる。
「あぁあっ・・・・ぅぁっ・・・あ?・・・。」
痛みが急に引いたかのように、女性は悲鳴を止めた。
「ママ?」
少年は泣きながら母親の手を強く握った。
「・・・あぁ・・・クリス・・・。」
母親も我が子の手を握った。
その瞬間、二人は爆発した。
轟音と人の焼けた臭いが広がる。
リンネは目を見開き、言葉をなくした。
それはシーラも同じだった。
「ふはははは!!どうだ?すばらしいだろう?
あれは連鎖魔法さ。
クリムゾン・ブレッドは触れている全ての命を燃やすのさ!」
「!!!・・・貴様ぁ!!!」
フォンはオレオンに向き直る。
「おぃ!なんだ今の爆発音!?」
ウォンカが船の甲板に戻ってくる。
「!!!」
そして、リンネの前に残っているコゲ跡を見る。
「てめぇぇぇ!!!!!!」
瞬時にその意味を理解し、ハンマーでオレオンに殴りかかる。
しかし、オレオンは軽々とそれを避け、ギルの所へ飛び降りた。
「ギル立てるか?」
「あ、兄貴・・・ごめん。」
「気にするな・・・ではまた会おう!諸君!!!」
オレオンは船に背を向けた。
フォンが甲板を駆ける。
そして、手すりに半分もたれかかり、右腕をオレオン達に向けた。
その手の甲には黄緑色の紋章が浮かんでいる。
『消え失せろ!!!』
その言葉と同時に黒い球体が出現し、一瞬で大きくなってオレオン達を包み込んだ。
そして、また同じように小さくなっていき、消滅した。
そこにはウォンカが作ったものとは違う、巨大なクレーターがあるだけだった。
しばらく静かな時間が流れた。
そして、ウォンカが口を開く。
「おまえ・・・今の、なんだ?」
ウォンカが目を丸くして聞く。
ウルムも同じように目を丸くしている。
「さぁな・・・ただ、ルーキアスは悪魔のチカラと呼んでいる。
実際に悪魔か天使かは知らないがな・・・。」
そういうと、フォンはゆっくりと船室へ戻っていく。
「もぅ、二度と使わない・・・こんなモノ・・・。」
「ぁ・・・。」
リンネはその場から動けずに居た。
そして、震えながら自分の手を見た。
「救えなかった・・・私じゃあ・・・救えなかった・・・?」
白い手にはポツポツと涙が落ちる。
「救えたはずなのに・・・救えた、はずなのに・・・・!!」
リンネは小さくうずくまった。
「救えたはずなのに・・・また、救えなかった・・・私は・・・どうして・・・。」
シーラはリンネを見守る事しかできなかった。
※瞬間治癒魔法
瞬間的に傷口の細胞の再生能力を上昇させる魔法。
今回は超ダークな内容です。R15ギリギリです。
多分・・・^^;
感想評価をいただけると励みになるのでよろしくお願いします^^ノ
最後に一言、今回のこの話は自身最高だと思ってます!