無感覚の少女
=水の国ガンデス・国境街アクエリア=
ここは国の7割が水で覆われている国ガンデス。
国内を大きくわけて8分割にするヒューレン川が存在する。
「キレイな街だなぁ・・・。」
ウルムが目をキラキラさせて言う。
「ガンデスは川がいくつも存在する、移動が楽な国だ。
この街には俺の知人が居る、不本意だが世話になろう。」
フォン達は町へ入っていく。
「おい小娘!ふざけんじゃねぇぞ?」
街の中央にある噴水広場でなにやら揉め事があるようだ。
「・・・行こう。」
「ご・・ん・・・なぁ・・・ぃ・・・。」
「・・・。」
フォンは無視しようとしたが聞き覚えのある声がしたので振り向いた。
「ぁ・・・。」
ゴロツキに囲まれている少女とフォンの目が会う。
「シーラ・・・。」
「おぅおぅおぅ!アンチャン!この小娘の知り合いか?」
「そうだが・・。」
「え?フォンさんこの子知ってるんですか!?」
「あぁ・・・。」
フォンはリンネの方を向いて答える。
そしてすぐにゴロツキに目を合わせる。
「そうかそうか・・・じゃあアンタに落とし前つけてもらおうか・・・。」
「この子が何をした?」
味方してくれるとわかったのか、シーラはゴロツキの中心から全力疾走でフォンの脚に抱きつくように回りこむ。
「その小娘がぶつかっておいて謝りもせずに走っていきやがったんだよ!!」
「・・・。
それで?何をすればいい?」
「そぉ〜だな・・・黙って俺らに殴られろ!」
「そうか、じゃあ好きにしろ。」
フォンは荷物をシーラに渡してゴロツキに歩み寄る。
「ぬ・・・。」
「どうした?」
「へ・・・覚悟しろよ!!」
ゴロツキはフォンの顔面にパンチを入れた。
鈍い音が響く。
「な・・・!」
「どうした?」
「うわぁぁぁ!!!」
ゴロツキは手を握って転げる。
「て!てめぇ!何した!!?」
「何も。」
「く・・・くそ!!」
ゴロツキはフォンを取り囲む。
そして、各々刃物や鈍器を握る。
「か、覚悟しろ・・・!」
「何事だ?」
「マスター!!!?」
ゴロツキ経ちの包囲網はとかれた。
「おまえ達、ここで何をしていた?その凶器はなんだ?」
「へ?あ、あぁ・・・な、何でしょうね・・・えへへへへ。」
「わかるようにしてやろうか?
ムー。」
「御意、御主人様。」
男の隣に立っている水色のショートヘアーの少女は右手にソードブレイカー、左手にダガーを持つ。
そして、一歩ゴロツキに歩み寄る。
「す、すみませんでしたぁぁぁぁ!!!」
ゴロツキ達は我先にと逃げ出した。
「ムー、追いかけて後で私のところに連れてきてくれ。」
「御意に。」
ムーと呼ばれた15歳くらいの少女はゴロツキ達を追いかけて行った。
「さて。」
男はフォンに目を向けた。
「さっきはすまなかったね、騎士長どの。」
「俺はいい、この娘が何かされていなければいいが。」
フォンはシーラに目をやる。
シーラは首を横に振る。
「大丈夫みたいですね。」
リンネがそれを見て微笑む。
「いや・・・病院へ連れて行こう。」
「え?」
「それなら私のところの医者に当たらせよう。」
「頼む。」
話がまったく見えないまま、リンネとウルムはフォンについて行った。
=ギルドホスピタル=
「腕にヒビが入っていますね。そうとう強く打ち付けられたようだ。」
医者はシーラの腕をそっとヒザの上に置く。
「まぁ三日もすれば直りますよ。
ちょっと(相当)苦いこの薬を飲めばね。」
ウィンクしながら医者はフォンにビンを渡す。
「すまなかったね。」
男は頭を下げる。
「謝るならこの子に謝ってくれ。」
「それもそうだ。」
「あ、あの・・・。」
リンネがたまらず声を上げる。
「ん?」
「話がまったく見えないのですけど・・・。」
「あぁ・・・そうだな。」
「これは申し訳ない。
ここでは何なのでどうぞ客間の方へ。」
男は客間へと通してくれた。
=ギルドゲストルーム=
フォンはソファに二人を座らせると、まず男を指した。
「彼はルーキアス・レネイ、俺の古い戦友だ。
そして、このガーディアンギルド・フォービスのギルドマスターだ。」
「ルーキアス・レネイです。
先ほどは部下が無礼を働いてしまって申し訳ない。
このギルドは志願兵と共に、どうしようもないヤツラも保護する意味で雇っているんです。」
「リンネです。よろしくおねがいします。」
「オイラはウルム。」
フォンは次にシーラを自分の前に立たせた。
「この子はシーラ、リーデニスの妹だ。
この子は神経系の病気で、刺激を感じないうえにうまくしゃべれない。」
シーラは丁寧にお辞儀する。
「・・・。」
「どうした?」
リンネはシーラを見つめて黙り込んだ。
「ところで。」
フォンはルーキアスと目を合わせる。
「シーラはギルドに預けたはずだが。」
「あぁ、すまない。
彼らは新入りでね。
このギルドの名目は街の守護だ。
自分達が偉いと勘違いするバカがいてね。」
「マスター。」
突然、扉が開かれ、グルグル巻きにされたゴロツキ達が部屋の中に放り込まれた。
「ちょうどいいところに来た。
紹介しよう、彼女はムー。私の護衛だ。」
「・・・・。
お初にお目にかかります。ムーと申します。」
ムーは丁寧に頭を下げた。
「ムー、彼らは右からリンネさん、ウルムさんだ。」
「ど、どうも・・。」
「よろしくおねがいしますね。」
「はい、光栄であります。
ところでマスター、彼らはどういたしますか?」
ムーは縛られたゴロツキ、もといギルド員を指す。
「ん〜〜・・・じゃあお仕置き部屋に入れといて。」
「御意。」
ムーは軽々とギルド員達を担ぐと、部屋から出て行った。
「さて。」
ルーキアスはフォン達を平等に見る。
「何か大変な事がおきているらしいね。
すでに王都の件は私の耳に入っている。
ま、とりあえずはゆっくい休んでくれてかまわないよ。
夕食になったら呼びにこさせるよ。」
ルーキアスは扉へ歩いていった。
「すまない、世話になる。」
「気にしないでくれっていうのが基本かな?」
微笑みながらルーキアスはゆっくり扉を閉めた。
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