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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

君の視線の先に。

灯李…青年。薄墨色の髪と藍色の瞳。華奢。全てを溜め込んで死ぬタイプ。忍。

瑞城…青年。金の髪色と瑠璃色の瞳。美形。日溜りのようで暖かい人間。努力型。陽炎部隊の忍。

悠人…男。黒髪黒目。美形。天才型孤独型。しかし瑞城と出会い丸くなる。医者。

同僚…灯李の同期。黒髪緑目。独特なイントネーションの話し方で周囲を和ませる系。忍。


 いつも穏やかに笑って一歩引いて物事を見つめるような奴だった。 

 俺の大嫌いな「瑞城」という青年は。


 これは俺の敗北の歴史になるだろうか。それとも頁を繰るのに心躍る記憶になるだろうか。

 いずれにせよ、そのどちらにも奴が出てくるのは当たり前の事と言えた。

 俺は今日も奴と、奴の隣で周りに見せた事も無いような微笑を浮かべている彼をただひたすらに眺めた。 


 

 ぼんやりと淡々と彼らを眺める。

 今は体術の基本について昼休憩だというのに、いや彼の暇な昼休憩だからこそ二人して楽しげに語りあっている。奴は彼に触れられて赤くなり文句を言っていた様だったけれど、嬉しいと瞳が語っている。彼もまた素直になれない奴を心の底から愛している。部外者は容易に口すら挟めない。しかしそれでも二人が自分達の世界に閉じこもる事が無いのは、一様に二人が美しい容姿のみならず魅力的な人間性を兼ね備えているからだろう。奴が一人になる事は決してないし、それは彼にも言える事だった。

 

 

 悠人と書いて「はると」と読むのだそうだ。

 初めて見た時、聞いた時から暖かな印象の名前だと思った。周りの同僚は皆、彼は冷たい人間だと言って憚らなかったけれど俺は、外見は確かにそうかもしれないが、内面はずっと……優しげなひとだと思っていた。遠くからその怜悧な美貌を眺めているだけで一日を生きている気分になったし、これで俺はまた一日多く生きることに専念出来るとも思った。任務がある日は必ずまだ暗い朝の空を見上げながらこう思ったものだ。

(生きて帰ってきて必ず彼の事を見て一日を終えた証にしよう)

 と。俺は彼を眺めるだけで本当に満足だったし、彼と親しくなろうなんて頭の隅にだって考えた事はなかった。




「灯李、おいで」

 暗闇からそっと聞こえてくる呼び声に幼い俺は起き上がる。そのまま落ちそうになる瞼を必死で擦りながら『 』の元へと足を運んだ。『 』は誰よりも美しく、気高く妖艶に微笑んで言い放つのだ。甘い蜜のようなその引き摺り込まれるような蠱惑的な昏い声で。

「退屈させないでくれ、灯李」

 囁くのだ。命じるのだ。願うのだ!

 俺に、舞いを。

 (俺の大嫌いなものばかりが俺の傍に集まる)



 布団を引っくり返し、起き上る。畳の上に酷く身体を打ち付け、許しを請いながら頭を畳に擦り付ける。それが俺の同僚、灯李の朝の挨拶だった。初めに言われた時は驚きつつも寝癖が悪い奴なんてどこにでも居ると軽い気持ちで快諾した。でも灯李のそれは寝癖が悪いなんてそんな薄っぺらい一言で片付けられるようなもんではなくて、それは一言で表すなら――懺悔、に近いものだと思う。毎日聞いて意味の繋がる言葉は二ッつ。

 『死なないで』と『もう出来ません』

 灯李のそれは幼少時代の記憶が原因なので手の施しようがないとやけに化け物じみた綺麗な医者の兄ちゃんが言ってたけどこれは何度見ても心苦しい。しかも途中で止めようとすると普段の温厚さからは予測できない程の激しさでもって抵抗されるという始末で。とりあえず俺は灯李が落ち着くまでに別室で朝餉の支度と、冷えた布を用意する事くらいしか今の今まで出来ていない。

 

「いつもすまない」

「なァに言ってるんだ聞き飽きたサ。偶には違う事でも言ってみろ」


 灯李が乱れた薄墨色の髪と服を整えながら奥の間からそろそろと入ってくる。同じ部屋を共にしてもう結構な日になるのにいつまでもこの男は言動の端々に俺への遠慮が残る。遅く任務で帰宅した際にはどーせ少しの物音で起きちまうような眠りしか職業上してねェっつうのに忍び足で帰ってくるし、風呂も必ず後に入り気が付くと掃除が済んでいる。そんな気の付く女のような灯李は、今日も医者の兄ちゃんを眺めてる。

 いンや。医者と“陽炎”の青年を眺めてる。



  


 君の視線の先に映りたかったのは、誰。

 


同僚→灯李→悠人→←瑞城


貨物列車特殊型ww 

君の視線の向かう人。

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