過去からの呼び水
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ざわざわ。ざわざわ。
街の雑踏が耳を刺す。
まるで夢から醒めたような心地で目を開ければ、見覚えのある大時計のモニュメントがあった。
あぁ、ここは。
近所のデパートだ。定番の待ち合わせスポット。
だけどどうしてわたしはここに座ってるんだろう?
誰かと待ち合わせ?
相手は……ダレ?
ワカラナイ。
「でっさー、ウチの娘がいきなり昔の◯◯みたいなこと言い出してー。陰キャになるからやめて欲しいー」
「そうなの?でもまだ小学生でしょ?ていうか◯◯って誰?」
隣に座ってる女たちの声が耳に響く。
だけど◯◯って名前がどこか心に引っかかって、思わず彼女らを見つめてしまう。
……この人たちは……。
ぽたり、ぽたり。
どこからか水が滴った。
「だから◯◯だって。ほら中学ん時に……」
ぐっと落とされた言葉はわたしの耳に届かなかった。
ぽたり、ぽたり。
落ちた水滴が制服のスカートに滲む。
そのはずなのに、はなからびしょ濡れのスカートではどこに水滴が落ちたかわからない。
「あー、◯◯ってアイツかぁ。つかよく覚えてんね」
「ウチらのせいじゃないと思うけど、さすがにあんなことになったら、寝覚め悪いじゃん?」
「おぉ、アンタにも人の心……」
ぽたり。ぽたり。ぽたり。
顔に貼り付く濡髪を、一筋、二筋と剥がしていく。
「あ、そろそろスクール終わる時間じゃね? 可愛い娘を迎えに行きますかねー」
「陰キャになりかけても可愛いんかーい」
「そりゃね。だから陰キャにならないように躾けてくつもり。……川に落ちて死なれたら嫌だしねー」
「それもそうねー。◯◯みたいに……」
隣の女たちが店内へと向かう。
何故か吸い寄せられるように女たちを追いかけてしまった。
ぐちゃり。ぐちゃり。ぐちゃり。
歩くたびに靴の中から水が溢れ出す。
髪から、スカートから滴る水がフロアにナメクジのような線を残した。
「つか、◯◯が勝手に落ちたのにウチら疑われてサイアクだったよねー」
「ねー。あんなイジリ、よくあることじゃんね」
あぁ、そうだ。
コイツらは……ワタシを……。
真っ黒でびしょ濡れの影が女たちに手を伸ばすのがショーウィンドウに映った。
だけど通りすがる人々は誰も気づかない。
コイツらは……ワタシを……コロシタ……。
川ニ……ツキオトシタ……。
ダカラ……ワタシハ……。
何かに気づいた女たちが振り返った瞬間。
デパートに絶叫が響き渡った。
『本日正午ごろ、▲▲デパートの時計の広場で、市内に住む女性二人が突然倒れ、そのまま死亡が確認されました。
二人に持病はなく、付近にはガスなどが漏れたなどの痕跡もないため、警察は……』
「ねぇ、デパートのアレ、広場の真ん中で溺死したって噂……本当かな? まるで川で溺れ死んだみたいだったって……」
ぽたり。ぽたり。ぽたり……。
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