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過去からの呼び水

掲載日:2026/04/24

お越しいただきありがとうございます。

お楽しみいただければ幸いです。

 ざわざわ。ざわざわ。

 街の雑踏が耳を刺す。

 まるで夢から醒めたような心地で目を開ければ、見覚えのある大時計のモニュメントがあった。

 あぁ、ここは。

 近所のデパートだ。定番の待ち合わせスポット。

 だけどどうしてわたしはここに座ってるんだろう?

 誰かと待ち合わせ?

 相手は……ダレ?

 ワカラナイ。


「でっさー、ウチの娘がいきなり昔の◯◯みたいなこと言い出してー。陰キャになるからやめて欲しいー」


「そうなの?でもまだ小学生でしょ?ていうか◯◯って誰?」


 隣に座ってる女たちの声が耳に響く。

 だけど◯◯って名前がどこか心に引っかかって、思わず彼女らを見つめてしまう。

 ……この人たちは……。


 ぽたり、ぽたり。


 どこからか水が滴った。


「だから◯◯だって。ほら中学ん時に……」


 ぐっと落とされた言葉はわたしの耳に届かなかった。


 ぽたり、ぽたり。


 落ちた水滴が制服のスカートに滲む。

 そのはずなのに、はなからびしょ濡れのスカートではどこに水滴が落ちたかわからない。


「あー、◯◯ってアイツかぁ。つかよく覚えてんね」


「ウチらのせいじゃないと思うけど、さすがにあんなことになったら、寝覚め悪いじゃん?」


「おぉ、アンタにも人の心……」


 ぽたり。ぽたり。ぽたり。


 顔に貼り付く濡髪を、一筋、二筋と剥がしていく。


「あ、そろそろスクール終わる時間じゃね? 可愛い娘を迎えに行きますかねー」


「陰キャになりかけても可愛いんかーい」


「そりゃね。だから陰キャにならないように躾けてくつもり。……川に落ちて死なれたら嫌だしねー」


「それもそうねー。◯◯みたいに……」


 隣の女たちが店内へと向かう。

 何故か吸い寄せられるように女たちを追いかけてしまった。


 ぐちゃり。ぐちゃり。ぐちゃり。


 歩くたびに靴の中から水が溢れ出す。

 髪から、スカートから滴る水がフロアにナメクジのような線を残した。


「つか、◯◯が勝手に落ちたのにウチら疑われてサイアクだったよねー」


「ねー。あんなイジリ、よくあることじゃんね」


 あぁ、そうだ。

 コイツらは……ワタシを……。


 真っ黒でびしょ濡れの影が女たちに手を伸ばすのがショーウィンドウに映った。

 だけど通りすがる人々は誰も気づかない。


 コイツらは……ワタシを……コロシタ……。

 川ニ……ツキオトシタ……。

 ダカラ……ワタシハ……。


 何かに気づいた女たちが振り返った瞬間。

 デパートに絶叫が響き渡った。




『本日正午ごろ、▲▲デパートの時計の広場で、市内に住む女性二人が突然倒れ、そのまま死亡が確認されました。

 二人に持病はなく、付近にはガスなどが漏れたなどの痕跡もないため、警察は……』


「ねぇ、デパートのアレ、広場の真ん中で溺死したって噂……本当かな? まるで川で溺れ死んだみたいだったって……」


 ぽたり。ぽたり。ぽたり……。

最後までご覧いただきありがとうございました。

ご評価、お星様、ご感想、いいね等々お待ちしております。


改めて、最後までお読みいただきありがとうございました!

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