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航空祈動聯隊、敵ヲ討テ。 〜並行世界の日本は戦争を回避した。でも代わりに、超能力と銃と刀で怪物と戦っている!?〜  作者: 神田川 秋人
第2章 空を仰ぐ雛鳥たち

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第27話 初めての喧嘩




 神崎かんざきとの殴り合いは廊下にも響いていたようで、間もなく両隣の同期生4名が部屋に駆け込んで来て、俺と神崎は引き離されることになった。


 そして、顔を怒りに染めた寮監りょうかんに厳しく叱られた上で、医務室で治療を受けることになった。

 と言っても、切り傷をアルコール消毒して絆創膏ばんそうこうを貼り、打撲箇所に湿布を貼ったのみだけど……




 その後、さすがに今晩だけは一緒にしない方が良いだろうという寮監の判断により、俺と神崎はそれぞれ寮の空き部屋に放り込まれることになった。

 たぶん、どちらかだけを自室に残すと片方が追い出された形になり、次の喧嘩の火種になるため、両方を追い出すことで喧嘩両成敗にしたのだろう。




 今晩はとても安眠などできそうにないため、俺は天井を見上げながら、先ほどまでの神崎とのやり取りを振り返っていた。


「戦う理由が姉ちゃんって、そんなに悪いかよ……」


 当然、誰からも返事は返ってこない。

 俺はふと、入校式の際、神崎が新入生を代表して答辞を述べた時の言葉を思い出した。






『我ら、今は雛鳥ひなどりなれど、教官がたを師として仰ぎ、同期生たちと切磋琢磨せっさたくまし、必ずや護国ごこく若鷹わかたかとなりましょう。』


『そして、我らは精鋭たる海軍航空祈動(きどう)士となり、もって太平洋の防波堤となりて、帝国および人類の未来を守護することを、ここに誓います。』






「帝国および人類の未来を守護――か。」


 入校式の際は、ただ立派な言葉だと感じていただけのそれも、先ほどの神崎とのやり取りを経て、また違った重みを感じるようになった。


 俺は、間違ってもそんな立派な言葉を吐けるような人間ではない。

 ない。ないが――それでも、大勢の中から選ばれた祈動士としてここにいる。


 その自覚は、きっとあるはずだ。




「つーか、護国の若鷹って……あいつは若鷹というよりも、ただの猛獣だろ。」


 いきなり殴られた身としては、これくらいの憎まれ口は許して欲しい。


 こうして、俺は全然嬉しくない、人生初の喧嘩デビューを果たしたのだった。






 翌日、朝食を食べるために食堂に向かうと、顔や腕を絆創膏や湿布だらけにした俺の様子を見て、ターシャと鳴海なるみが驚いた顔で駆け寄ってきた。


「し、し、し、志道しどうくん!?どうしたんですか!その顔っ!!」


 普段は割と冷静なターシャが、目を白黒させながら聞いてくる。


「ああ、ちょっと神崎と喧嘩をしてな。見た目はちょいと派手だが、全然大したことないって!」


 嘘である。めちゃくちゃ痛い。

 だが、俺も男なので、同年代の女の子にはどうしても格好を付けてしまう。


 そう、俺だって殴り返したのだ。そりゃ、神崎は喧嘩慣れしているようで、4対6――ごめん、嘘ついた。2対8くらいの喧嘩になったが、それでも黙ってやられた訳ではない。


 事実、俺に比べればささやかではあるが、神崎も顔や腕に絆創膏や湿布を貼っている。


 そんな強がりを見せる俺に、ターシャと鳴海は声をかけてくれた。


「えぇ……すごい痛そうですけど……。腕も痛めて何かと不便だと思いますので、しばらく私がサポートします!何でも言ってください!」

「志道って、あまり喧嘩するタイプには見えないんだけどな……。もちろん僕も手伝うから、遠慮なく言って!」


 こいつらは本当に天使か。

 俺のすさんだ精神まで癒してくれる。

 やっぱり、持つべき者は優しい同期だよな。


 そんな天使ターシャと天使ナルミは、有言実行とばかりに俺の代わりに朝食を配膳してくれて、俺は同期生の優しさを噛み締めながら、白米と塩鮭しおざけを口に運んだ。


 その味は、いつも食べている朝食よりも、少しだけ甘く――優しい味がした。




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