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航空祈動聯隊、敵ヲ討テ。 〜並行世界の日本は戦争を回避した。でも代わりに、超能力と銃と刀で怪物と戦っている!?〜  作者: 神田川 秋人
第2章 空を仰ぐ雛鳥たち

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第17話 入校式




 約1時間半にわたる練習が終了したあと、俺たちは会場となる大講堂だいこうどうへと移動した。


 大講堂は、小講堂と同じくおそらく鉄筋コンクリート造りの建物で、こちらも洋風の意匠が採り入れられている。

 違うのは大きさが倍くらいになっているのと、意匠がよりった造りになっていた。


 大講堂に入るための大きな扉の前で、いったん全員が2列縦隊に整列する。

 そのまましばらく待機していると扉が開き、俺たちの入場が始まった。


 大講堂の両脇と2階席には来賓が招かれており、入場した俺たちに拍手の雨を降らせた。


 そのまま2列に分かれた上で大講堂に入り、置かれていた椅子に腰かける。

 目の前には幅広の舞台があり、俺から見て左手に日本国旗、右手に海軍航空祈動(きどう)学校の校章が並んでいた。


 その後、進行役が開式の辞を読み上げ、入校式が始まる。




「これより国歌の斉唱を行います。皆さま、ご起立の上、脱帽し、国旗に対して正対せいたいしてください。」


 進行役のかけ声で全員が起立し、舞台上の国旗に対して身体を向けた。


 少しおいて、国歌――君が代が流れ、全員で厳かに斉唱する。




「ありがとうございます。ご着席ください」


 進行役の指示で、その場にいる全員が席に着いた。


 続いて、学校長からの式辞に移る。


 式辞の内容は、これから始まる祈動学校の生活が実り多いものになることへの期待と、学校生活を送る上での心がけとして五省ごせいについて言及した。




 一、至誠しせいもとるなかりしか

 二、言行に恥づるなかりしか

 三、気力に欠くるなかりしか

 四、努力にうらみなかりしか

 五、不精にわたるなかりしか




 この五省については、入校時の案内書類にも記載があったので、よく覚えている。

 何でも、元々は海軍士官を養成する海軍兵学校にて、日々の自らの行動を振り返らせ、将来に備えさせるために作られたものだとか。


 俺なりに意訳すると――




 一、人としての良心に背くことはなかったか

 ニ、発言や言動に恥ずかしい点はなかったか

 三、精神力に欠ける点はなかったか

 四、努力は十分にできていたか

 五、怠けたりしなかったか




 こんなところだろう。

 俺も肝に銘じなければ。




 続いて、海軍大臣からの訓示があった。

 海軍大臣とは文字通り、海軍省かいぐんしょうにおける大臣のことだ。

 俺が元いた世界には存在していなかった省庁なので、興味を持って図書館で調べたことを覚えている。


 海軍省とは、帝国海軍の軍政ぐんせいを担当する中央省庁で、簡単に言うと海軍が組織としてやっていけるように、人事や会計、教育などを取り仕切っている所である。


 海軍航空祈動学校も、組織上はこの海軍省の傘下ということになる。


 その海軍大臣からの訓示については、ある程度予想していたが、日本の現状は薄氷の上に築かれた砦のようなもので、いつ崩れてもおかしくないことを訴えていた。

 それを防ぐためには海軍航空祈動士の活躍が不可欠であるとも。

 そして、“黒キ影”による惨禍さんかを終わらせ、日本だけではなく人類の未来を守るため、訓練に励んで欲しいという言葉で結ばれた。




 それを受け、いよいよ入校生の答辞とうじとなる。


 選ばれた神崎かんざきが起立し、来賓席に礼をする。

 その後、実に堂々とした動きで舞台に上がり、国旗に深々と礼をしてから講壇こうだんの前に出てきた。


 そしてマイクを調整してから答辞を行う。




「海軍大臣閣下からのお言葉、我ら入校生一同、肝に銘じます。」


 そんな言葉から始まった。




「我ら一同、閣下かっかのお言葉を拝聴はいちょうし、改めてその責任の重大さを痛感しています。」


 神崎は会場の隅々まで響きわたるような、芯の通った声を発した。




「世界諸国の奮闘にも関わらず、“黒キ影”の脅威はいまだ去らず。我らが祖国日本においても、度々《たびたび》“黒キ影”の侵攻を受け、貴い国民の命が奪われていること、悲痛にえません。」


 神崎は一瞬、何かを耐えるかのように顔を伏せた。




「ここにいる入校生の中にも、遠きにせよ、近きにせよ、親類縁者しんるいえんじゃや友人を“黒キ影”によって奪われた者もいるでしょう。例えそうでなくとも、同胞が理不尽に命を奪われることを悲しみ、何もできない自分を恨めしく思ったこともあるでしょう。」


 そして、すぐに顔を上げて続ける。




「しかし、ただ悲しむだけの日々は終わりました。我ら入校生一同、天命てんめいによって選ばれ、ここに“黒キ影”に抗う力を得ました」


 だんだんと声に力が籠もり始める。




「我ら、今は雛鳥ひなどりなれど、教官がたを師として仰ぎ、同期生たちと切磋琢磨せっさたくまし、必ずや護国ごこく若鷹わかたかとなりましょう。」


 そして、最後にこう宣言した。




「そして、我らは精鋭たる海軍航空祈動士となり、もって太平洋の防波堤となりて、帝国および人類の未来を守護することを、ここに誓います。」


 神崎はマイクから手を離し、一礼する。




 そして、会場は一瞬静まり返ったあと、あちこちから万雷の拍手が鳴り響いた。

 思わず周りを見渡すと、訓示を述べた海軍大臣も、目を見開いて拍手を送っていた。




「――あれが神崎。」


 堂々としたかっこいい男だと、素直に思った。




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