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プロローグ

登場人物

町の仲間

・カイ(主人公)

・ヒナ

・ユウマ

・アカリ

ギルド陣営

・ノア

 静かな夜を迎えるはずの町を赤い炎が包み込んだ。


 つい数時間前まで、笑い声が響いていたこの町が、今や悲鳴と炎に包まれている。


「どうして……っ!?」


 少年は叫ぶがいくら嘆いても、燃え広がる炎は止まらない。


 ――昼までは、何も変わらなかった。


 ヒナ、ユウマ、アカリと魔法の訓練をして、追いかけっこをして、腹を抱えて笑いあった。

 そう、あれはいつもと変わらない、穏やかな日だったはずなのに――。


 気がついたときには、町全体が火の海だった。


「父さんと、母さんは……!」


 カイは走った。炎の中、自宅を目指す。

 だが、たどり着いた家は、すでに黒煙と炎に呑まれていた。


「クソッ……!」


 拳を握りしめ、カイは悟っていた。

 もう、間に合わないと。


 それでも、諦められるはずがなかった。


「俺の魔法なら……!」


 魔力を体中に流すイメージを浮かべる。


「炎よ、俺の身を包め!」


 その言葉に呼応するように、カイの体を炎が覆った。

 自らも炎を扱う魔法使いであるカイは、短時間なら火の中でも動ける。


 燃えさかる家の中を駆け回り、やがて、崩れた瓦礫の下に母の姿を見つけた。


「母さんっ……! 嘘だ……」

 母さんは息をしていなかった。


「せめて、外へ……!」


 カイは震える腕に力を込め、瓦礫をどけ、母の体を慎重に抱えて外へと運び出した。


「遅くなってごめんなさい。母さん。」


 そう言い残し、炎の町を再び駆け出す。


 町の広場では、武装したギルドの人間たちが必死に住民を誘導していた。


「こちらに重傷者!」「救助者をこっちに!」


「ギルドの人たち……!」


 状況を把握したカイは、一人の隊員に声をかけた。


「すみません! お願いがあるんです!」


「君、この町の住人だね?」


「はい。母を瓦礫の中から救い出したんですが……もう、亡くなっていて。でも、せめて町の外に運んで弔ってあげたいんです……このまま、火の海に置いていくなんて……」


 必死の訴えに、ギルドの隊員は静かにうなずいた。


「……わかった。必ず運び出す。君の気持ちは無駄にしない」


「……ありがとうございます」


 カイは深く頭を下げ、すぐに背を向けた。


「君、どこに行くつもりだ!?」


「中央部です! 父を探しに行きます!」


「待て! あそこは危険だ!」


「父はこの町の管理者なんです!きっと、あそこに……!」


 呼び止める声を振り切って、カイは町の中心部へと走った。


 火災の中心にある管理センター。そこに、父の姿はあった。


「父さん!」


 声をかけると、父は顔を上げた。


「カイ……なぜ逃げていない!? 母さんは……?」


「着いたときには、もう……。でも、ギルドの人にお願いして、町の外に運んでもらえるようにしました」


「……そうか。ありがとう」


 父の表情に、わずかな安堵の色が浮かぶ。


「さあ、父さんも一緒に逃げよう! まだ間に合う!」


 だが、父は首を横に振った。


「悪いな……この火災は、俺が止めるしかないんだ。責任をもって、この町の終わりを見届けなければならない」


「何言ってるんだよ! 無理に決まってる! 逃げなきゃ……!」


「すまない」


 その一言とともに、地面が大きく揺れ、爆発音が響き渡る。


「っ……!」


「もう時間がない。カイ……あとは頼んだぞ」


 父はそう言い残し、爆発の方向へと走っていった。


「待ってよ、父さん!!」


 カイが追いかけようとした瞬間、目の前に壁のような魔力障壁が現れた。


 どんなに魔力を込めても、破壊できない。


「なんなんだよ、クソッ……!」


 地面を拳で殴りつけるカイの背後から、声がかかった。


「君が……センターに向かったって子ね?」


 振り返ると、そこには自分より少し年上に見える女性が立っていた。


 整った顔立ちに、場違いなほど落ち着いた雰囲気。


「……あなたは?」


「ギルドの者よ。少年が一人、中央に向かったって聞いて、助けに来たの」


 あまりに軽い口調に戸惑いつつも、カイは必死に頼んだ。


「父が、あの先にいるんです! 助けてください!」


 女性は一瞬黙った後、少し微笑み、


「了解。力を貸そう」


 そう言うと、彼女は壁に向かって手を構え、魔力を放つ。


「ハアッ!」


 轟音と共に、魔力の壁が崩れ落ちた。


「さあ、行こう」


 差し伸べられた手を取ると、カイは再び父の元へと走り出した。


 空気が変わった。熱さではない。何か、もっと深い力の気配。


「すごい魔力だな……」


「ええ、確かに」


 その先には――父の姿があった。


「父さん! 早く、逃げよう!」


 だが父は、魔法陣に囲まれ、何かの準備をしていた。


「なぜここに来れたんだ?……ああ、君がいたか、ノア。なら納得だ」


(ノア……?)


 カイが隣の女性を見やると、彼女は微笑んでいた。


「この子、あなたの息子だったんですね」


「ああ……ノア、この子を連れて逃げてくれ。彼は……お前たちと歩むべき存在だ。俺が保証する」


「父さん!」


 叫ぶカイに、父は静かに振り返る。


「俺は、ここで終わる運命だ。だがカイ、お前には、もっと多くの世界を知ってほしい。いろんな人と出会い、いろんな痛みや喜びを経験して――そしていつか、この日の意味を思い出してくれ」


 魔法陣が発動し、父の姿が地下へと消えていく。


「父さんっ!!」


 追いかけようと駆け出すが、ノアの声が響く。


「ごめんなさい。私は命令に従うだけ」


 次の瞬間、カイの体が宙に浮き、強制的に町の外れへと運ばれていく。


「なんでだよ、ノアさん! なんで父さんを助けないんだ!!」


「あなたにも、いずれ分かるわ」


 炎に包まれた町を背に、風のような速さで、ノアとカイは飛び去っていく。


「父さああああんっ!!!」


 喉が裂けるほど叫んだその声は、やがて力を失い、静かに眠りへと落ちていった。


 その夜――誰にも聞こえない声で、ノアはそっとつぶやいた。


「あなたの言う通りの人になることを期待してますよ。この子が」


 燃える町は、一瞬の閃光の後いつもと変わらない町に戻っていた。

なんとなくで、プロローグを書きました。気分が乗れば続きも書きます。

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