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君に届かない、この世界で。  作者: 風乃ナノ
その手にふれるまで
28/28

リボンを結んで

窓から柔らかな朝の光が差し込み、

香坂(こうさか)ユイの部屋を包み込んでいた。


薄いカーテンがそよ風に揺れ、

淡い光が家具や壁に温かな影を落とす。


制服に着替え終えると、

そっと机の引き出しを開けた。


そこには、まだ開封されていない

ピンク色のリボンがしまわれている。


慎重にリボンを取り出し、

丁寧に包みを開けた。


柔らかな布の感触が指先に伝わり、

胸が少し高鳴る。


スマホの動画をチラリと見ながら、

深呼吸をして、リボンをそっと髪に添えた。


ピンクに2本の白いラインが引かれた

リボンの中心には、

金色の星のチャームが揺れて、

光を受けてキラリと輝く。


慣れない手つきで何度か動画を確認しつつ、

少しずつリボンを髪に編み込んでいく。


不器用ながらも、

完成に近づくたびに笑みがこぼれた。



──できた。



鏡に向かって優しく微笑んだ。





駅前のベンチ。


少し早く着いたのか、

雪城(ゆきしろ)ネネはスマホを見ていた。


彼女の銀色の髪は

いつものように片編み込み、

そしていつものリボンがつけられている。


ネネは顔を上げる。


そこに立っていたのは、

同じように片編み込みに

リボンを飾ったユイだった。


ふたりは顔を見合わせて、

やわらかく微笑み合う。


同じ髪型、同じリボン。


長い旅を終え、

やっと心も揃ったような気がした。


ユイが少し恥ずかしそうに

手を差し出す。


ネネが、その手をとった。



指が、ゆっくりと絡まり

やがてしっかりと結ばれる



制服の裾が揺れる



リボンがそっと風をはらむ



手をつないだままゆっくりと歩き出す



ひとつになった影が



朝の光の中に伸びていった──



* * *



君に届かない、この世界で。



── 完 ──

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