少年と優しい巨人
フィリアの中に入ってきたものはそれはマティアスの記憶と感情だった。
そこにいたのは、少年が、一回り大きい少年に囲まれており、そこに一人の少年が助けに向かっていた。
ガキ「やーーい、このガリ勉野郎、そんなに勉強して楽しいか?」
少年たちが一回り体格の小さい少年をいじめる。
ライゼル「おい!!マティアスをいじめるなーー!!!」
少年は体格がでかく、それにビビった他の少年たちが、逃げていった。
ライゼル「マティアス大丈夫か?」
マティアスを心配する少年
マティアス「大丈夫だよ。ライゼルいつもありがとう」
マティアスは優しく微笑む。
もう一人の少年の名前はライゼルという少年だった。
ライゼルは体格が良く、精悍な顔立ちで、誰よりも大人びて見えた。
一方マティアスは小柄で大人しい、優しい顔つきをした少年だった。
ライゼル「大丈夫か?マティアス?」
ライゼルはマティアスを心配そうに見ている。
マティアス「うん。大丈夫だよ。」
マティアスは笑顔で答える。
ライゼル「全く、なんで、人は人をいじめようとするんだろうな。」
ライゼルはふと疑問を口にする。
マティアス「それはしょうがないことだよ。人は敵がいると一致団結するからね。
自分より能力が劣ってるもの、容姿が劣ってるものこれを差別することで人は統率を取れたりするんだよ。」
マティアスはライゼルの疑問に淡々と答えた。
ライゼル「俺には難しくてわかんねぇよ。」
ライゼルはマティアスのこの手の話は苦手だった。
ライゼル「ま〜でも、お前のそういう賢いところも好きだし、魔術の勉強めっちゃ頑張ってる所も俺は好きだ。
頑張ってるやつが馬鹿にされるのは俺は嫌いだ。」
ライゼルはマティアスに笑いながら話した。
マティアスは頬を染めながら、顔をライゼルから背けた。
(ライゼルだけには、この弱い自分を見られてもいいと思えた。)
ライゼル「何照れてんだよ〜。」
ライゼルが笑いながら、マティアスをいじる。
この時フィリアの中に温かくそれでいて、胸のドキドキしている。マティアスの感情が流れ込んできた。
マティアスはクロウ家という魔術師の名家に生まれた。
だが、そこは才能を愛するのではなく、結果だけを愛する家だった。
マティアスは勉強好きで、魔術を扱う術にも長けており、クロウ家の厳しい教育にも難なくついていけた。
だが親からは常に結果を求められており、子供というより、道具として育てられていた。
『勉強は終わったのか?結果が出ないなら時間の無駄だぞ。』
帰宅しても、母の声は氷のように冷たかった。
学校では、そのずば抜けた才能ゆえに、妬みと敵意を向けられ続けた。
ガキ「なんで、お前ばっかり!!」
マティアスが少年を睨みつける。
少年が後ずさりした。
ライゼル「お〜い!! お前ら!!」
ライゼルが少年達を追い払った。
ライゼル「マティアス、大丈夫か?
お前は、将来すげー魔術師になるやつなのに、どうして、どいつもこいつも、嫌がらせするんだろうな〜、ごますっとけばいいのに」
ライゼルがいつものように冗談を言う。
マティアスの中での唯一の楽しみがライゼルとの時間だった。
ライゼルだけが、道具としても、嫌悪の対象としてでもなく、一人の人間として向き合ってくれた。
この時間はマティアスの中で大きな財産であった。