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転生の棺に眠る者

フィリアは最後の命令を屋敷を走り、裏口から逃げようとしていた。  

アリシアの主として、母としての最後の命令だった。

ひたすら走る。その顔はオイルの涙と汗が滲んでいた。

アリシア「マスター…… 母さん……」


走りながら呟く。


館を走っていると、アリシアの声が脳裏をよぎった。


アリシア「フィリア、お前も常識とは何か疑って生きていけ」


アリシア「言わば知識を収集できる本は他者の経験が無料で手に入るようなものなんだよ。」


何気ない食事の日々、何気ない工房での仕事、書棚の整理、アリシアの笑顔、フィリアの中での何気ないかけがえのない日常が溢れていた。


廊下を走ってる時、目の前に黒い影が現れる。


立ち止まるフィリア、周囲を見渡すと黒い影がフィリアを囲む


その黒い影はよく見ると黒い煙のような布をしている、人のような生き物だった。


布の中から覗かせる顔は黒い泥のような皮膚に、口からは牙が剥けていた。


黒い影「……■■■■……∵△◎≠……」


声にならない呪詛を発する黒い影達


フィリアはその声を聞くと知らず知らずのうちに動けなくなっていた。


フィリア「あっ……… あっ……… 」


冷たい汗が背中を伝い、心臓が喉元で暴れた。


それと同時にゆっくり歩いてくる足音と杖のかつかつ音が廊下を響く


後ろにいたのは、黒いローブを着た老人だった。その顔は崩れかけており、白濁とした片目、ローブの下に覗かせる体は複数の魔法陣と縫い目があった。

男が、禁忌の存在であることは見て分かった。


老人「やっと捕まったか………」


死体の腐敗臭混じりの空気が声と共にフィリアを撫でた、老人はフィリアの顔を見て、顎に手を伸ばし、フィリアを見る。



老人「は〜何と美しい、この器があればきっと…… ようやくあいつを迎えられる」


老人の目を見ると歓喜の涙を流していた。


その姿は長年待った神からの祝福を祝う信徒のようだった。


フィリア「あっ………… あっ…………」


フィリアは老人に憎悪と嫌悪を込めて声にならない声を発し、睨みつける。


老人「ま〜そう慌てるでない。お前も時期に主の所に行ける」


老人は不敵に笑いながらそう言うと、手に黒い炎が、宿り、それがフィリアを包んだ。


フィリアはその炎が燃え広がると同時に意識を失った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


フィリアの目が覚めた時、そこは怪しげな儀式場だった。


あたりを見渡せば、怪しげな魔法陣、ホムンクルスの廃棄体、人間の死体、色々なものが置いていた。


体を見ると魔術によって体が拘束されていた。


あの老人が、何やら独り言をべらべらと喋っていた。


老人「さて、これで記憶術式はすべて空になり、魂が入る準備ができた。」


記憶術式とはものに宿る記憶のことだ、だが、フィリアは記憶もあるし、意識もある。


フィリアは困惑していた。何故自分に意識があり、記憶もあるのか


老人「これで転生の儀と復活の儀が行える。私の数百年の時をかけた悲願がついに成就される……」


老人は楽しそうに一人で笑う


フィリアは体を動かせないか試すもどこも動かない、顔の表情も何もかもピクリとも動かせないようだった。


老人が独り言を喋りながら作業を行っている時に、部屋に黒い影が現れた。


老人「何の用だ?」


老人が不機嫌に尋ねる。


黒い影「申し訳ございません。マティアス様、最近この神殿付近を魔術治安局の連中が嗅ぎ回っているようでして、急いで儀式行ったほうが良いかと」


黒い影と老人の会話から、老人の名前はマティアスと言うのだろう。


マティアス「ふっ…… 後残り少しだ、この儀式が終わればここから去る。」


苦笑しながらマティアスは答えた。


マティアス「後はあのホムンクルスに魔力因子を」


その翌日のことだった、フィリアは棺の中に入れられ、黒いウェディングドレスを着させられていた。壮大な祭壇の一番上に設置されていた。隣にはもう一つの棺が置かれており、フィリアの棺と同じくらいの大きさだった。巨大な魔法陣が祭壇の上に描かれており、これから大きな儀式が始まるのだとフィリアは確信した。


マティアスは隣の棺を見ていた。


その目は哀愁とも喜びともとれるような複雑な顔をしていた。


マティアス「これでようやくお前に胸を張って自信を持って会える。」


マティアスはそう呟くとフィリアの棺の前に行き、フィリアの首にある魔術刻印に触れようとする。


その瞬間だった。フィリアの中に、何かがたくさん流れ込んできた。

それは温かくもあり、冷たくもあり、悲しくもあり――憤怒と憎悪が混じった、形容できない“何か”だった。


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