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救済の影、暴走の光


魔術都市の朝、人間や魔術師であればまだ寝ている時間たが、フィリアは朝食を作っていた。


アリシアが、朝食の匂いに誘われ気怠そうに起き上がる。


アリシア「今日の朝食はなんだ?」


フィリア「今日の朝食はフレンチトーストです。」


フィリアが微笑みながら答える。


アリシア「お〜。ちょうど甘いものが食べたかった!」


アリシアが嬉々として答える。


フィリア「最近マスター忙しそうなので、甘いものを食べて仕事に集中出来るように考えました。」


アリシア「助かる。そういえば今日の予定は?」


アリシアは軽く笑いながら答える。


フィリア「今日の予定は、朝は、工房にて、新しい魔術の術式開発、昼過ぎから魔術協会評議会の民衆講演会の出席、その後は暴走したホムンクルスの検体検査です。」


フィリアが淡々と答える。


アリシア「面倒だな。あのくだらない評議員達の有り難い話に時間を使われるくらいなら、仕事に使いたいものだな。」


アリシアが鬱陶しそうに愚痴をこぼす。


フィリア「そんなこと言わないでください、出世するためにも大事ですよ。」


フィリアが苦笑いしながら答える。


アリシア「は〜早く私も出世して、研究だけに没頭したいものだ。」


アリシアは憂鬱になりながらフレンチトーストを口に運び、その後ルームウェアから、いつもの仕事着である黒いローブに着替え、魔術工房に足を運んだ。


フィリアも魔術工房についていく。


工房にはルーン文字が刻まれた。机や石板で溢れており、アリシアのストイックさが伺える。



しばらくして、魔術実験が終わり、アリシアは疲れたように椅子にもたれかかる。


アリシア「……はぁ。やっぱり、この術式じゃ耐久が足りない。魔力消費量も多すぎる。」


フィリア「ですが、威力は従来のものより35%向上していますよ。」


フィリアが書面に結果を書き写しながら淡々と結果を述べる。


アリシア「まぁな……。でもこんな欠陥術式では駄目だ。もっと土地の深くの魔力脈と繋がらなくては」


アリシアは苛立ったように髪をかきあげる。


フィリア「……」


フィリアがそっと近づき、アリシアの肩に手を置く。


フィリア「マスター。疲れている時は休むのも仕事のうちですよ。」


アリシア「……ああ。」


アリシアが目を閉じる。


フィリアはそっと彼女の背を撫でる。


アリシア「……フィリア。」


フィリア「はい。」


アリシア「ありがとう。まるで人間みたいだな。ま〜そういう術式で、設定したからな。少し休んだら次の術式を試す。準備しておいてくれ。」


フィリア「……かしこまりました。」


フィリアが微笑み、静かに席を離れた。


工房での仕事が、終わり一段落し、昼食を取り、評議会への出席準備を行う。


フィリア「最終チェック完了です。特に問題ないです。」


アリシア「全く面倒なことだな。あんな下らん爺共の話を聞かなくてはいけないとはな。」



フィリア「これも仕事ですよ」


フィリアは笑いながら答える。


アリシア「では、行くか」


アリシアとフィリアは街の大広間へと向かう。


そこには正装にて美しいローブを着た魔術師達にその配下であるホムンクルス達。

政策やこれからの国の未来がどうなるのかを聞きに来た民衆達が集まっていた。


大広間では評議員たちの挨拶と国の政策に関することが話された。  


最後の評議員の話が始まる。



その男が壇上に現れると、会場が静まり返った。

白銀の長髪が微かに揺れ、血のように赤い瞳が評議会の全てを見下ろす。

人間離れした美貌と気配。その存在感だけで、周囲の空気が張り詰めるようだった。

白と黄金で飾られた衣の裾が床を滑り、彼が口を開く。

魔術協会最高評議員、そして、この国で最初にホムンクルスを作った男──アゼルファ・レイヴン。


アゼルファ「昨今ホムンクルスの暴走や急激な魔術発展により、失業者増加ならびに、治安も悪化の一途を辿っております。これを改善するにはまずーーーーーー」


アゼルファが話してる内容は、至って普通の政策内容を話しているが、民衆達は聞き入っている。

その美しすぎる容姿に魅了されるものは男女共に多い。


話しが終わり、最後の拍手の音がなり、講演会は解散される。


皆が解散し、それぞれが帰路につこうとしたとき、女の悲痛な叫び声が聞こえると同時に、鼻を摘みたくなるような生臭い匂いが周囲を充満する。


よく見ると薄汚れた女が中央広場の近くに立っていた。

女の髪は汚れで灰色に見え、抱かれた子供の頬は骸骨のように窪んでいた


女「助けてください!!私はあなた達の発明で職を失い子供を育てることができなくなってます!!もう何日も食事をあげられてません!!

私の職を!!生活を返して!!」



魔術治安局の隊員たちが駆け込んできて、女を取り押さえた。


女は懇願と怒りと憎しみを込めてこの場にいる全員の魔術師に訴えた。


彼女の元にアゼルファがゆっくり歩いていく、そして彼女の目の前まで、来たアゼルファが慈愛に満ちた笑顔で話す。


アゼルファ「ホムンクルスの技術が発展すれば我々は救われるのです。私も、貴方も、その子供も、もうしばしの辛抱です。」


その光景は神が信者に救いの施しを与えるような一つの絵画に見えた。


アゼルファの美しさに呆然としていた女だが、正気に戻り叫んだ。


女「何が救いよ!!こんな状況のどこに救いがあるのよ!!

この子は…もう三日も水しか飲んでないのよ…!

   あんたら魔術師様には関係ないんだろうけどさ…!」


女は魔術治安局の隊員達に連れて行かれた。


そこに短めの淡灰色髪、鋭い茶瞳、浅黒い肌の精悍で、黒いローブを着た。体を鍛えているであろう筋肉質な中年の男が現れた。


男「彼女は私が支援する。お前たちは元の場所に戻れ」


他隊員「巡査長、よろしいのですか?」


男「構わん、早く戻れ」



そう言うと彼は女を落ち着かせながら、何処かへ移動した。


男「辛かったな…。大丈夫だ、ここからは俺が面倒を見る。」


男はあやすように女に話しかける。


たまたま、フィリアと男の目が合う


男「人形どもが」


侮蔑を込めた言葉が聞こえた。


その時フィリアの胸に小さな棘が刺さるような痛みが走った。しかし、それが何なのかも分からないまま、その痛みは薄い霧のように消えていった。


評議会講演も終わり、次の仕事に向かうアリシアとフィリア


アリシア「全くなんて最悪なものを見せられたんだ。退屈な時間の後にあんな汚い物を見せられるとはな。」 


アリシアは心底疲れている様子だった。


フィリア「お疲れ様です。マスター次の仕事は暴走したホムンクルスの調査ですが、少し休みますか?」

 

フィリアは彼女の体調を気遣うように伝える。

 

アリシア「いや良い、仕事をしてる時の方が断然楽しいからな。ホムンクルスの暴走個体がなぜ起きるのかにも興味がある。」


嬉々として、語る彼女は玩具を与えられた子供のようだった。


到着地着く二人、暴走したホムンクルスや魔物の遺体を保管する施設についた。

 

施設を管理する初老の男が出迎える。ホムンクルスの暴走個体の場所へ案内する。


暴走したホムンクルスは焼け焦げていた。


アリシア「術式解析」


そう唱えると魔法陣が暴走したホムンクルスを包む


アリシア「何らかの原因で魔力が暴発しているな。

このホムンクルスはどういう環境で管理されてたんだ?」

  

初老の男「それが、日頃から仕えていた主から暴行を受けていた、ようでして、ある日突然叫叫びながら、今まで自分を虐げ続けた主の胸を殴りつけ、その顔に滲む恐怖を初めて見たとき、ほんの僅かに笑ったと──そして爆発を起こしたようです。」


アリシア「なるほど………魔力の暴発の原因は一体なんだ?感情をもったホムンクルスの怒りが爆発したみたいな話だな。」


アリシア「この暴走…普通じゃないな」 


アリシアは独り言をブツブツ呟くとともに、術式の解析を行い。


その日の仕事はそこで終わった。








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