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第7話 お嬢様のはじめての冒険

19歳。私は〇〇家の人間として、

常に完璧であるよう教えられてきたわ。

規律正しく、品格を重んじる。

それが私の日常。

大学に入って一人暮らしを始めても、

その生活は変わらないはずだったの。


ある日、友人とのお茶会で、

たまたま話題になったのが、

「最近流行りの、ちょっと大胆なルームウェア」のこと。

友人は楽しそうに「とっても可愛いわよ!」って

話していたけれど、私には縁のない世界だと思っていたわ。

でも、その言葉が、私の心に小さな火を灯したの。


「……まぁ、そんなものもあるのね……」


そう答えたけれど、夜、自室に戻ってから、

こっそりスマホで検索してみたの。

画面に現れたのは、豪華な刺繍と繊細なレースが

施された、淡いピンクのベビードール。

息をのむほど美しくて、同時に、

触れてはいけないもののような背徳感。


(こんなものを私が持つなんて、

お父様やお母様が知ったら、きっと……。

でも、世間を知ることも、お嬢様としての

たしなみではなくて?

新しい私を、試してみたい、そう思ったの。)

理性と好奇心が、私の心の中で激しく戦ったわ。

何度も「やっぱりやめておこう」と閉じるけれど、

次の瞬間には、またページを開いていたの。

私にとって、これは冒険だったのよ。


「……ええい、ままよ!たまには、私のわがままも

許されるはずだわ!」


ついに、ポチッ。


画面が切り替わった瞬間、心臓が跳ね上がったわ。

「きゃっ!」思わず口元を押さえる。

まさか、こんな衝動的なことを私がするなんて。

でも、この秘密のドキドキが、

私を、新しい世界へと誘うようで、

たまらなく魅力的だったわ。


数日後。


ピンポーン♪


「あら、いらしたわ!」


玄関で受け取ったのは、頼んでいた海外の学術書。

「ありがとうございます」

ドアを閉めて、「ふふ、これで私の知識も

深まるわね」と、いつもの私に戻ったわ。


午後。


ピンポーン♪


「……っ!!」


今度は胸がドクドクうるさい。

(これ……まさか、ベビードールですって!?)


「はーいっ!」


玄関を開けると、さっきと同じお兄さん。

にっこり。「○○さん、お荷物ですー」

「あ、はい、ありがとうございます」

軽くて小さな箱。なのに、**私の小さな胸が、

今にも弾けそうなほど高鳴っていたわ。**


部屋に戻った瞬間。


「……っまぁ……」


箱を抱えて、そのままベッドにそっと置く。

落ち着かないわ。まるで、大切な宝物を

手にした子供のように、手が震えるのを感じたわ。


ぺりぺり…カサカサ…。箱を開けると、

ふわっと淡いピンクのレース。


「……っやだ、本当に美しすぎるわ……」


そっと肩にかけると、冷たいレースがひやっ。

「ひゃっ…」普段は絶対に出さない声が漏れる。


鏡の前でくるり。

「……っ!」

そこにいたのは、今まで見たことのない、

少しだけ大胆で、でも紛れもなく私自身。

その姿に、戸惑いと、

深い感動を覚えたわ。


ベッドにダイブして、お顔をクッションに埋める。

興奮で体が熱くなるのを感じる。


そのとき――


ピンポーン♪


「…………へ?」


(また宅配ですって!?何かしら?)


でも、ベビードールにすっかり夢中だった私。

ふわふわした頭で深く考えずに、

慣れない体験への好奇心と高揚感のまま

玄関へダッシュ!


ガチャッ。


「○○さん、こちらもお荷物ですー」


「あ、ありがとうございますっ♡」


にこにこ受け取って、受領のサインをカキカキ。


その時――


お兄さんの視線が、ふっと下に滑った。


私の肩から胸へ、ひらひらのピンクのフリルを

一瞬だけ見て、気まずそうにパッと目を逸らす。


(……えっ)


ズクン。心臓が一拍遅れて大きく跳ねる。

「あら……もしかして、私……?」

顔が一瞬でカッと熱くなるのを感じたわ。

まさか、こんな格好で……。


「あ、ありがとうございましたっ!!」


どもって頭を下げると、顔から火が出そう。

慌ててドアを閉める。


カチッ。


玄関の鍵が閉まった途端。


「……………………………………まぁ……」


ゆっくり自分を見下ろすと、そこには


ひらひら揺れるピンクのフリル。


「…………………………きゃああああああああああああああああああああっっ!!!」


頭を抱えてバタバタ玄関にしゃがみ込む。


(やだ、やだ、やだ!


 私、これ着たまま宅配受け取ってしまったわ!?


 お兄さん、きっと見てしまったのね!?

 気まずそうだったもの!!


 お父様やお母様には、絶対に言えないわ~~~~っ!!)


部屋に駆け戻って、ベッドにダイブ。

クッションを抱きしめてバフッと顔をうずめる。


「もうっ、恥ずかしいったらありゃしないわ~~~~っ♡」


声が裏返って、泣きそうで、でもちょっと笑ってしまう。

恥ずかしい、消えたい、でも……。


鏡に映る、私自身のベビードール姿が、

やっぱりどこか、誇らしく見える。


(……でも、これも、新しい発見、ですわね。

誰にも言わない秘密……ふふ。)


顔を埋めたまま、胸の奥がドキドキ止まらなかったわ。


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