第4話 体育会系サバサバ女子のまさかの乙女心
22歳。大学のスポーツサークルで
毎日汗を流してる私。
周りからは「サバサバしてるね」って
よく言われるし、実際そうだと思う。
女子力とか、正直よくわかんない。
そんな夜、スマホをいじってたら、
突然、目に飛び込んできた広告。
ふわふわのレース、キラキラの飾り……
ベビードール?
「はぁ!?何これ、バカじゃん!」
思わず声が出た。
でも、なんか、目が離せない。
「こんなの、私に似合うわけないだろ」
って思うのに、
(でも、ちょっとだけ……?
いやいや、誰に見せるわけでもないし。
でも、ネタにはなるかもな……)
指が勝手に画面をスクロールする。
友達が「罰ゲームで着てみろよ!」って
言ってたのを思い出した。
「はっ、冗談だろ!」って返したけど、
(……本当に着たら、どうなるんだ?)
胸の奥が、ちょっとだけザワついた。
「……ま、いっか!ネタになるなら!」
ついに、ポチッ。
画面が切り替わった瞬間、心臓がドクン!
「うわ、マジかよ……」
普段はしない衝動買いに、ちょっと引いた。
でも、このドキドキ、なんか面白いかも!
数日後。
ピンポーン♪
「きたっ!」
玄関で受け取ったのは頼んでたプロテイン。
「あざーっす!」と元気に返事。
ドアを閉めて、「これで筋肉モリモリだぜ!」
と、いつもの私に戻った。
午後。
ピンポーン♪
「……っ!!」
今度は胸がドクドクうるさい。
(これ……まさかベビードール…!?)
「はーいっ!」
玄関を開けると、さっきと同じお兄さん。
にっこり。「○○さん、お荷物ですー」
「あ、はい、どもっす!」
軽くて小さな箱。なのに、**なぜか全身に、
変な汗がじわりと滲むのを感じた。**
部屋に戻った瞬間。
「……っはぁ……」
箱を抱えて、そのままベッドにドサッと
倒れ込む。変な緊張感で、体が固い。
ぺりぺり…カサカサ…。箱を開けると、
ふわっと黒いレース。
「……っうわ、マジか……綺麗じゃん……」
そっと肩にかけると、冷たいレースがひやっ。
「ひゃっ…」思わず変な声が出た。
鏡の前でくるり。
「……っ!」
そこにいたのは、見たこともない、
ちょっと色っぽい私。
「うわ、マジかよ……」
自分でも信じられないくらい、
新しい自分にドキドキした。
ベッドにダイブして、顔をクッションに埋める。
興奮で体が熱い。
そのとき――
ピンポーン♪
「…………へ?」
(また宅配!?何だよ!?)
でも、ベビードールに夢中で頭がふわふわしてた私。
深く考えずに、普段通りの勢いで
玄関へダッシュ!
ガチャッ。
「○○さん、こちらもお荷物ですー」
「あ、あざーっす!」
いつものように元気よく返事。
サインをカキカキ。
その時――
お兄さんの視線が、ふっと下に滑った。
私の肩から胸へ、ひらひらの黒いレースを
一瞬だけ見て、気まずそうにパッと目を逸らす。
(……えっ)
ズクン。心臓が一拍遅れて大きく跳ねる。
「……は?まさか……」
顔が一瞬でカッと熱くなる。
冷や汗がドッと噴き出した。
「あ、ありがとうございましたっ!!」
どもって頭を下げると、顔から火が出そう。
慌ててドアをバタンと閉める。
カチッ。
玄関の鍵が閉まった途端。
「……………………………………うわぁ……」
ゆっくり自分を見下ろすと、そこには
ひらひら揺れる黒いレース。
「…………………………きゃああああああああああああああああああああっっ!!!」
頭を抱えてバタバタ玄関にしゃがみ込む。
(やばいやばいやばいやばい!!
私、これ着たまま宅配受け取っちゃったじゃんっっ!!
お兄さん絶対見た!!絶対気まずそうだった!!
うわああああああ~~~~っ!!)
部屋に駆け戻って、ベッドにダイブ。
クッションを抱きしめてバフッと顔をうずめる。
「もうっ、マジありえないし~~~~っ!」
声が裏返って、泣きそうで、でもちょっと笑ってしまう。
恥ずかしい、死にたい、消えたい……!
でも、鏡に映るベビードール姿の私が、
やっぱりどこか、誇らしげに見える。
(……ま、いっか!誰にも言わないし、
これも私の一面ってことで!)
顔を埋めたまま、胸の奥がドキドキ止まらなかった。