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第3話 純粋培養のお嬢様のはじめての冒険

19歳。私、〇〇家の箱入り娘として

ずっと大切に育てられてきたの。

大学に入って初めての一人暮らし。

何を見ても、何に触れても、

まるで別世界みたいで、ドキドキが止まらない。


ある日、スマホを眺めていると、

ふわりと舞い降りてきたのは、

繊細な刺繍が施されたベビードールの広告。

見たこともないデザインに、

私の心はキュンと音を立てたわ。


「……まぁ、なんて可愛らしいのかしら……」


でも、私には無縁の世界だと思っていた。

「こんなものを、この私が持つなんて……

お父様もお母様も、きっとお認めにならないわ」

頭では分かっているのに、

心が引きつけられるのを止められない。

友達が「最近、大人っぽい下着にハマってる」

なんて言ってたのを思い出したの。

(流行なのね。私も、少しは世間を知らなくては)

そう自分に言い聞かせながら、

指が画面の上で震えていたわ。

でも、本当に欲しいのは、

「私自身が、新しい自分を見てみたい」

という、ささやかな好奇心だったの。


「……ええい、ままよ!」


ついに、ポチッ。


画面が切り替わった瞬間、心臓が跳ね上がったわ。

「きゃっ!」思わず口元を押さえる。

まるで禁断の果実に手を出したような、

背徳感と、新しい自分への期待が入り混じる。


数日後。


ピンポーン♪


「あら、いらしたわ!」


玄関で受け取ったのは、頼んでいた紅茶のセット。

「ありがとうございます」

ドアを閉めて、「ふふ、これで優雅なティータイムを

楽しめるわね」と、いつもの私に戻ったわ。


午後。


ピンポーン♪


「……っ!!」


今度は胸がドクドクうるさい。

(これ……まさか、ベビードールですって!?)


「はーいっ!」


玄関を開けると、さっきと同じお兄さん。

にっこり。「○○さん、お荷物ですー」

「あ、はい、ありがとうございます」

軽くて小さな箱なのに、私の手には

ズシリと重い罪悪感が乗った気がしたわ。


部屋に戻った瞬間。


「……っまぁ……」


箱を抱えて、そのままベッドにそっと置く。

落ち着かないわ。


ぺりぺり…カサカサ…。箱を開けると、

ふわっと豪華な刺繍と白いレース。


「……っやだ、本当に綺麗だわ……」


そっと肩にかけると、冷たいレースがひやっ。

「ひゃっ…」普段は絶対に出さない声が漏れる。


鏡の前でくるり。

「……っ!」

そこにいたのは、見たこともない、

少しだけ大胆で、でも紛れもなく私自身。

その姿に、心の奥がキュンと鳴ったわ。


ベッドにダイブして、お顔をクッションに埋める。

興奮で体が熱くなるのを感じる。


そのとき――


ピンポーン♪


「…………へ?」


(また宅配ですって!?何かしら?)


でも、ベビードールにすっかり夢中だった私。

ふわふわした頭で深く考えずに、

慣れない体験への好奇心と高揚感のまま

玄関へダッシュ!


ガチャッ。


「○○さん、こちらもお荷物ですー」


「あ、ありがとうございますっ♡」


にこにこ受け取って、受領のサインをカキカキ。


その時――


お兄さんの視線が、ふっと下に滑った。


私の肩から胸へ、ひらひらの白いフリルを

一瞬だけ見て、気まずそうにパッと目を逸らす。


(……えっ)


ズクン。心臓が一拍遅れて大きく跳ねる。

「あら……もしかして、私……?」

顔が一瞬でカッと熱くなるのを感じたわ。

まさか、こんな格好で……。


「あ、ありがとうございましたっ!!」


どもって頭を下げると、顔から火が出そう。

慌ててドアを閉める。


カチッ。


玄関の鍵が閉まった途端。


「……………………………………まぁ……」


ゆっくり自分を見下ろすと、そこには


ひらひら揺れる白いフリル。


「…………………………きゃああああああああああああああああああああっっ!!!」


頭を抱えてバタバタ玄関にしゃがみ込む。


(やだ、やだ、やだ!


 私、これ着たまま宅配受け取ってしまったわ!?


 お兄さん、きっと見てしまったのね!?

 気まずそうだったもの!!


 お父様やお母様には、絶対に言えないわ~~~~っ!!)


部屋に駆け戻って、ベッドにダイブ。

クッションを抱きしめてバフッと顔をうずめる。


「もうっ、恥ずかしいったらありゃしないわ~~~~っ♡」


声が裏返って、泣きそうで、でもちょっと笑ってしまう。

恥ずかしい、消えたい、でも……。


鏡に映る、私自身のベビードール姿が、

やっぱりどこか、誇らしく見える。


(……でも、これも、新しい発見、ですわね。

誰にも言わない秘密……ふふ。)


顔を埋めたまま、胸の奥がドキドキ止まらなかったわ。


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