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第2話 クールビューティーの秘めた衝動

20歳。大学ではいつも冷静で、

周りからは「クールビューティー」って

言われる。私自身、そう見られるのが

当たり前になってた。でも、本当は心の奥で、

もっと自由に、もっと可愛くなりたいって

気持ちがくすぶってる。


夜になると、スマホをそっと開く。

SNSでは見せない、私だけの秘密の時間。

モデルさんの写真とか、おしゃれな下着の

広告とか、ついつい見ちゃって。

ある日、ふと目に飛び込んできた

黒いレースのベビードールに、ドキリとした。


「……これ、私に似合うかしら……」


クールな私が、こんなセクシーな服?

ありえない。でも、すごく惹かれる。

「誰にも見せるわけじゃないから、いいでしょう?」

って、もう一人の私が囁く。


(でも、もし友達に見られたら?

SNSに投稿してるとか、思われたらどうしよう?

私のイメージ、崩れるのは絶対嫌だわ。

でも、一度でいいから、こんな自分を見てみたい……)


指が画面の上で震える。

何度も「カートに入れる」を押しては、

冷静な自分に戻って消す。

この葛藤が、まるで心臓を直接掴まれてる

みたいに苦しい。でも、このドキドキが、

新しい自分への扉かもしれない。


「……もう、どうにでもなれ、だわ!」


ついに、ポチッ。


画面が切り替わった瞬間、心臓がバクン!

普段は絶対しない衝動買いに、頭がクラクラする。

「やってしまった……」って呆然としつつも、

顔は熱くなるのがわかる。


数日後。


ピンポーン♪


「きたわ!」


玄関で受け取ったのは頼んでた専門書。

「ありがとうございます」と冷静に対応。

ドアを閉めて、「ふぅ、これで課題もはかどるわね」

と、いつもの私に戻る。


午後。


ピンポーン♪


「……っ!!」


今度は胸がドクドクうるさい。

(これ……まさかベビードールですって!?)


「はーいっ!」


玄関を開けると、さっきと同じお兄さん。

にっこり。「○○さん、お荷物ですー」

「あ、はい、ありがとうございます」

軽くて小さな箱。なのに、**なぜか体の奥から、

ぞわりと熱いものが這い上がってくるような

不思議な感覚に襲われた。**


部屋に戻った瞬間。


「……っはぁ……」


箱を抱えて、そのままベッドにドサッと

倒れ込む。クールな自分を保つのに精一杯だった。


ぺりぺり…カサカサ…。箱を開けると、

ふわっと黒いレース。


「……っやばい、想像以上に綺麗だわ……」


そっと肩にかけると、冷たいレースがひやっ。

「ひゃっ…」普段は動じない私が、

思わず声を漏らす。


鏡の前でくるり。

「……っ!」

そこにいたのは、今まで見たことのない、

ドキッとするほど艶っぽい私。

冷静な表情が崩れるくらい、新しい自分に

夢中になった。


ベッドにダイブして、顔をクッションに埋める。

興奮で体が熱い。


そのとき――


ピンポーン♪


「…………へ?」


(また宅配!?まさか……)


でも、ベビードールに夢中で頭がふわふわしてた私。

深く考えずに、冷静さを保ちつつ、

表情一つ変えずに玄関へダッシュ!


ガチャッ。


「○○さん、こちらもお荷物ですー」


「あ、ありがとうございます」


いつものようにクールに振る舞い、サインをカキカキ。

内心は冷や汗ダラダラだけど、絶対に動揺は見せない。


その時――


お兄さんの視線が、ふっと下に滑った。


私の肩から胸へ、ひらひらの黒いレースを

一瞬だけ見て、気まずそうにパッと目を逸らす。


(……えっ)


ズクン。心臓が一拍遅れて大きく跳ねる。

「まさか……この私が……」

冷や汗が背中をツーッと流れる。

でも、表情は絶対に崩さない。


「あ、ありがとうございました」


いつもよりワントーン低い声で、

無感情に告げる。

慌ててドアを閉める。


カチッ。


玄関の鍵が閉まった途端。


「……………………………………はぁ……」


ゆっくり自分を見下ろすと、そこには


ひらひら揺れる黒いレース。


「…………………………っ、最悪だわ……!」


頭を抱えて、玄関の壁にずるずると座り込む。

(やばいわ、やばい!!


 完璧な私のイメージが、一瞬で崩れたでしょう!?


 あの宅配のお兄さん、きっと私が実は

 こういうの好きって思ったはずだわ!


 うわああああああ~~~~っ!!)


部屋に駆け戻って、ベッドにダイブ。

クッションを抱きしめてバフッと顔をうずめる。


「もうっ、ありえないわ……!」


声は出さない。静かに、深く息を吐く。

恥ずかしい、消えたい、でも……。


鏡に映る、黒いベビードール姿の私が、

やっぱりどこか、誇らしげに見える。


(……まあ、いいでしょう。誰にも言わないし、

これも私の一面だわ。むしろ、新しい私、だもの。)


顔を埋めたまま、静かに、胸の奥が

じんわりと熱を持つのを感じていた。


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