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マリオネット

短編の走り書きのような小説です。

2039年、私はその日、たまたま忘れ物をし、取りに帰ろうと研究室に戻った。その時に、研究室に潜り込んだ一人の青年を発見することになった。なぜ忍び込んだのかと聞かなくていけない立場にいる私は彼と話をした。彼は18歳で、大学一年生のことが判明した。だが、彼の持っている知識は研究室にいる学生の知識をはるかに凌駕していた。そして、話を進めていく中で私の運命を変える研究にであうことになった。それが「Nerve support device」だった。彼は幼いときから足の不自由な姉がいたことから神経に直接働きかけ動かせるようになる技術は作れないものかと模索していたそうだ。私はこの話を聞き、彼のこの技術に興味を持った。なんとも言えない高揚感だった。私は自分の研究室に来た目的も忘れ、彼と夜が明けるまで「Nerve support device」の技術について議論した。

私はその翌日に彼を特別に私の研究室に招待した。私はその技術が完成するところを見たくなったのだ。そして彼の研究に私も参加し最初は二人で行っていた研究に一人のこれもまた優秀な女子大学生が加わった。三人になってからは早かった。構想はできていたものの見た目のデザインや細かなデータ、プログラムなどの構築など、やることは山積みだったが、完成が近づくたびに私の高揚感は今まで味わったことがないほどになっていた。

そして、初めて彼と会って「Nerve support device」の話をしてから5年。とうとう完成したのだ。彼の思い描いていたこの技術は、学会に発表し学者から多くの反響を読んだ。その日は研究室で祝賀会を開いたことを鮮明に覚えている。

だが、世間はそうはいかなかった。「神経をコントロールする」というキーワードに反応し批判の声が高まった。そして、この「Nerve support device」の非難が決定的になったのはピアノの演奏の動画だった。この動画は全くピアノを弾けない人に演奏データを入れた「Nerve support device」を装着させ演奏させたものだった。これが、人々の印象をさらに悪くした。その演奏は完璧だったのだ。恐ろしいほどに。動画をみたみなが本当はピアニストなのではないかと思うくらい。完璧だった。

だが、世間はそうはいかなかった。「神経をコントロールする」というキーワードに反応し批判の声が高まった。そして、この「Nerve support device」の非難が決定的になったのはピアノの演奏の動画だった。この動画は全くピアノを弾けない人に演奏データを入れた「Nerve support device」を装着させ演奏させたものだった。これが、人々の印象をさらに悪くした。その演奏は完璧だったのだ。恐ろしいほどに。動画をみたみなが本当はピアニストなのではないかと思うくらい。完璧だった。

2044年。「Nerve support device」を発表した年の12月28日に彼は自宅で首を吊って自殺した。彼の足元にあった遺書にはただ一言。「創るべきじゃなかった。」そう残してこれはこの世を去った。

葬式には多くの人がきた。彼は周りの人には愛されていたから。けれども、彼の自殺の経緯は簡単に想像でき、そのことを話さずにはいられない人が大半だった。葬式後、私は研究室に何故か向かった。ついてから30分したあたりに一緒に研究をしていた彼女が訪れた。彼女は、「先生、この技術を今すぐ回収しましょう」と提案した。だが、私にはできなかった。彼のこの技術は本当に素晴らしいものだったから。彼の苦労も苦戦も努力も全て見てきたからこそわかる。彼の生きた証を終わらせることはできなかった。私は、彼女の提案に回答せずただ、祝賀会で撮った写真を眺めていた。彼女は続けて言った。「彼の遺書。つくるべきじゃなかったって。回収すべきです。」それでも私はその提案に乗れなかった。わかってはいた。彼の意思はきっと回収してほしいのだろうと。でも、どうしてもできなかった。「私にはできない。彼の生きた証を終わらせることは。」私からの回答をえると彼女は研究室を出て行ってしまった。

それから、彼女に会ったのは4年後だった。

「Nerve support device」は回収せず、誤解を解くことに私は尽力した。私の努力も実り、世間に受け入れられるようになった。この技術が使われ始め、だんだんと作業などがこの技術に置き換えられていたときだった。全ての「Nerve support device」が、勝手な行動を始め出した。乗っ取られた。私はこの技術の責任者として自体の収集に取り掛かった。そして、プログラミングを直している最中に気がついた。この開発に携わっている人でないと書き換えができないことに。それも初期の段階から。私はこのハッキングが誰の仕業が理解した。死んだ彼が、もしもの時のためにこの技術を回収することができるようにプログラミングしていたのだ。彼はやはり天才だった。この自体までも想定していたのだ。彼女なら、この技術を回収してくれることに。起動させたのは彼女だ。全てを理解してしまった私は、この技術を終わらせることにした。このままにしよう。

私は次の日の記者会見で彼がこのプログラムに細工したことを発表した。そして、新しく「Nerve control gea」を発表した。この記者会見の後、案の定彼女がやってきた。

「なぜ!なぜ、あんなことを言ったのですか!!!あなたなら、きっとわかると思ったけれど、それと同時きっとあなたなら彼の意思を汲み取ってくれると!そう思ったのに。」彼女はそう声を荒げ部屋に入ってくる私を見るなりそういった。「あぁ。わかったさ。彼がこの技術を作った時に回収できるように仕組んでいたこと。わかったさ。それにきっと彼が回収しようと思ったのは、この技術で人類が衰退するかもしれないと思ったから組み入れたのだろう?もしくは悪用する誰かの手元に渡ってしまった時のために。」彼女の顔は明らかに怒っていた。「えぇ、そうです。そこまでわかっていてなぜ。」「彼の技術が世間にようやく認められて単純に嬉しかったからだよ。私はこの技術の素晴らしさを誰よりもわかっている。」私の発言に彼女は嫌悪の眼差しを向けた。「彼の名が汚れようと?死してなお非難を受けるなんて、あまりにも、、、!彼が報われません。」「きっと、君ならそういうと思ったよ。彼を尊重し、彼を愛していた君なら。でも私も、彼を愛していたよ。彼の技術を。だからこそ、私は彼の技術には生きていてほしかった。」私の言葉を聞いて、彼女は泣き崩れた。きっと私の愛も理解できてしまったから。

私は彼の技術で一躍有名になった。彼の名が有名にならなかったことに不満がないわけではない。けれど、彼の技術を愛してしまった私は彼の技術を生かすことでしか私は彼を弔ってあげられない。それが彼の意思と反していても。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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