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私、メリーさん。繁忙期よ。

作者: Wana-wana

『私、メリーさん。 今……駅についたの…………』


『私、メリーさん。 今……駅の中よ……………』


『私、メリーさん。 今…………改札を出たわ…………』


『私、メリーさん。今…………5番出口①の階段を…………上がっているわ…………』




『私、メリーさん。駅から5分って書いてあるくせに、そもそも駅から出るまでで20分くらいかかるの詐欺だと思うの! 副業で、そっちも呪いに行こうかしら!』


時間は深夜二時だ。

明日というか、後五時間もしたら出勤時間だ。

いわば、草木も眠る丑三つ時であり、まあ、こういう都市伝説的怪異なんかも元気に動き回るらしい。

当然のごとく、僕は決してメリーさんに、電話番号を教えたことはなく、なんならスマホの電源は毎晩切ってから眠るタイプだから、今通話をできてしまっていることこそが、この通話がいたずらではないことを証明していた。


「逆ギレ?」


あと、呪いの人形であるというアイデンティティは捨てない方が良いと思う。


『私、メリーさん。今の時代は、チャンスを掴んだものが勝利するの。そして──案内図専門の呪いはまだ存在しない』

「呪いの対象わかりづらいだろ」


図というか、看板を呪うのか?


『私、メリーさん。 もちろん、こんなキャッチコピーをつける連中に決まってるじゃない』

「呪われた方も困っちゃうだろ、たぶん身に覚えないぞ」


真面目に働いただけだと思う、その人たちも。


『私、メリーさん。ならば大都市を破壊するわ。いわば私は、メリーさん-1.0』

「いっぺん怒られてこい」


円○だか、○宝だかは知らんけど。


『私、メリーさん。 あなたは、私を──私たちを何だと思ってるのかしら。 ──都市伝説に、人の理なんて通用しない。 ビバ、踏み倒せ著作権!』

「せせこましいことに、わざわざ理なんて立派な言葉を使ってくんな」


というか、なんで怒られるかは理解してんじゃねえか。


『私、メリーさん。 でもね…………某ゲームメイカー由来の人形と…………某ランドのグッズを呪うときは……筋を通さないと……………大変なことになるの……』


すげえな、どこの企業が分からんけど。


『私、メリーさん。 なんであいつら、普通に肉弾戦で呪いをはね除けて来るのかしら……』

「夢を与える企業だから、悪夢みたいなお前らにも耐性あるんだろ」


知らんけど。


『私、メリーさん。 けれど、結構大変なのよ……』

「なに、お前愚痴言うためだけに僕に電話してきてんの?」

『私、メリーさん。 だって、あなた人形とかは』

「実家のは全部丁重に保管してるし、どうしても修理できないときはちゃんと供養してるに決まってるだろ!」


基本だろうが。こんなこともできないやつは、人形を持つ資格はない。


『私、メリーさん。 あなたみたいな過激派なら、呪う理由もないもの。 メンヘラメリーさんなら、分からないけれど』

「そんな種別あんの???」


一部界隈に大人気そうだな、メンヘラメリーさん。


『私、メリーさん。正直、そういうタイプとは仕事やりづらいのよね……話が根本的なところで通じないと言うか…………』

「社会人みたいなこと言ってんな」

『私、メリーさん。 都市伝説なんて、社会から産み出されたも同然なんだから、そうもなるでしょ』


そうかな、そうかも。

いや、そうでもねえんじゃねえかな。怪異が全うな感覚持ってて欲しくない。


『私、メリーさん。話がそれすぎてるわね』

「なんの話だっけ」

『愚痴を聞け、私はメリー』


倒置法使うな。あと、その感じで通話してくんのは、気のおけない友人くらいなんだよ。


『一日会えば友達よ』

「NH○教育見て育った?」

『私、メリーさん。 そんなことはどうでも良いのよ。 何が大変かっていうとね……クリスマスなのよ』

「はあ」

『私、メリーさん。 近年はメディアミックスの展開として、グッズショップなども増えていることはあなたも知っているでしょう?』

「なんか問題提起してきそうな流れだな……」

『で、当然のごとく人気シリーズのキャラなんかは、赤い服を着たおじいさんがよく朝の枕元に設置しがちなのよ』

「普通にプレゼントって言えや」

『で、そうなると──おっと、到着したわ。 残念ながら、あなたと会話する余裕は無くなるわ』


風の音とか、ドアを開く音とか、とにかくノイズが多くなってきた。

いや、通話切ってくれよ。


『私、メリーさん。 今、あなたの後ろにいるの…………。 ハハッ、ジュワッ、ピガ○ュー! サ○江でございまあす!』


悲鳴と共に、なんかどたばかどかどか音がしてきた。

うん。


版権詰め合わせかつ、都市伝説界隈における許可とったのか…………。そりゃ、大変だ……。

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