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第1話 機械の右腕

 ――ズダァン! ズダァン!


「な、なんだありゃあっ!? バケモンかっ!」


 機械の右手から放たれる銃弾に恐れおののいた盗賊らが血相を変えて村から逃げ出して行く。それを眺めながら俺は銃弾を放った右手人差し指から上がる煙に「フー」と息を吹きかける。


「村人を苦しめる盗賊どもめ。貴様らの罪には罰が必要だ」


 と、俺は村の外へ逃げた盗賊らに向かって手の平を広げ……


「むんっ」


 ミサイルを発射した。


「えっ? な、なんだあれは? ぎゃあああっ!」


 激しい爆撃に盗賊らが吹き飛ぶ。

 あとにはなにも残らず、抉れた大地だけがそこにあった。


「うん。終わったな」


 村を襲撃した盗賊らはすべて片付けた。

 もう村が奴らに襲われることは無いだろう。


「お、おお……領主様」


 隠れていた村人たちが姿を現す。


「領主様が盗賊を退治してくれたぞーっ!」

「ありがとうございます領主様っ!」


 俺の周囲には村人たちが続々と集まって来る。


「あれだけの盗賊を相手にしてお怪我などはありませんか?」

「いや平気だ。それよりも皆が無事でよかった」


 人数の多い村ではない。怪我人はいるが、死者はいないようで安心した。


「おお、ご自分のことよりも村人の安否を気にかけてくださるとは、なんとお優しい。ハバン様、あなたほど素晴らしい領主様は他におりませんぞ」

「褒め過ぎだ村長。俺は俺のできることをしただけだから」


 村長を前に俺は被っている鉄仮面の奥で苦笑する。


「いいえ、あなたは素晴らしい方です。我らの領主様になっていただけたのは嬉しいことですが、やはり、あなたは王になるべきお方でした」

「……」

「そ、村長、それは……」

「あ……こ、これは失礼致しましたっ」

「いや……」


 謝罪の言葉を述べて頭を下げる村長を見下ろしつつ俺は思う。


 王になるべきお方か。今となっては懐かしい。


 そんなに昔のことではないが、少し前まで自分はこの国、マルサル王国の王になるはずたった。それが今ではこんな辺境の小さな領地で領主をやっている。人生とはなにが起こるかわからないものだ。本当に……。


 機械となった右腕を見つめつつ、俺はフッと笑う。


「ハバン様?」

「うん?」

「ご気分を悪くされてしまったのでは……」

「あ、いや、そんなことはないよ。俺が国王にだなんてのはもう過去の話だからな。もはやほとんど忘れていたくらいさ。はははっ」

「さ、左様でございますか」


 ホッとしたような、そんな表情で村長は俺を見上げていた。


「さて、俺はもう屋敷へ帰るよ」

「えっ? いや、ハバン様へのお礼に酒宴をと考えていたのですが……」

「そんなことより怪我人の手当てや壊された建物の修理をしたほうがいい」

「は、はい。そうですね。わかりました」

「うん。頼んだぞ」


 馬へと跨った俺は、村人らへ別れを告げて帰路へつく。

 ……村を出てしばらく、領主の屋敷についた俺は馬を降りて中へと入ると、


「帰ったかハバン」


 2階へと上がる階段に腰掛けた短い黒髪の小さな女の子が声をかけてきた。


「ただいまツクナ」

「うむ」


 と、ツクナは立ち上がって俺に手招く。


「食堂へ来い。食事の用意はできておるぞ」

「うん」


 ツクナのあとについて、俺は屋敷の食堂へと向かう。


 俺はこの小さな女の子、ツクナに出会って救われた。この子に出会う前の俺は無気力で、生きながらに死んでいるのと同じ状態であった。


 この国、マルサル王国の第一王子として生まれ育ち、いずれは国王になるはずだった男。しかし今は辺境の小さな領地で領主として生きている。


 ここへ来てもう5年は経つ。来た当時は右腕も無く、普段の生活すら困難であった。しかし今はツクナのおかげで新たな右腕を手に入れ、身体の不自由は無い。


 ……それでも。


 右腕を奪い、自分をこんな辺境へ追いやった父や義母への恨みを忘れることは無い。


 奴らにはいずれ必ず復讐をする。


 俺の心からその思いが消えることは片時もなかった。


「ん? なんじゃハバン? 怖い顔をしとるのう」


 振り返ったツクナが俺を見つめて小首を傾げた。


「あ、うん。ちょっと昔を思い出してな」

「ふむ。父である国王と義母のことか。恨めしいじゃろうな」

「まあな」


 ぼんやりと過去を思い返す。

 忘れたくても忘れられないあの恨めしい過去を……。

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