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少し早い君の生年月日  作者: ぱーぷるさんど
1/3

冒頭~1話

ほんのり暑さが和らぐ夏の夜

よく使っている川沿いのベンチで、彼女の隣に座っていると、

彼女は、ふいに空を見上げ左手を目一杯伸ばし、満月に左手の薬指を重ね、


「この距離だから、愛おしい…けど憎くない訳じゃない。」


そう呟いた。

その時、月の光に照らされた一滴が彼女の頬を伝ったのを、見逃さなかった。


星のようなその一滴が汗なのか…涙なのか…

ただその横顔は、可愛い以外の感情を自分には与えてくれなかった。


彼女の言葉の真意がわかるまで、何年もかかるとは、

この時は微塵も思っていなかった―



*



高校2年生の春を迎えた。



今日に限っては、目覚ましよりも早く目が覚め、

寝起きもとてもいい気持ちだ。


鼻歌を歌いながら、着慣れた制服に着替え、

1階の洗面所に移動し、髪をワックスで整えた後、

歯磨きをしながら、スマホでTwitterのタイムラインを確認していた。


相互フォロワーである部活のメンバーも、

ハイテンションなのが、ツイートから(うかが)える。


自分も日課のおはようツイートをしようと思い、


『おはよ。今日は気合入れてく。』


とツイートし、口をゆすいで

もう一回鏡で全体を確認し、決め顔をしてからリビングに入った。


バタバタと仕事に行く準備をする母、

のんびりとご飯を食べている大学2年生の姉が、

「おはよ。」と声をかけてくれる。


「おはよ。母さん今日早いの?」

 と姉に話しかけると、

「みたいだね。4月って感じするわー…はぁ~あ。」

 と大あくびをしながら答えてくれた。


「ふぅーん。」

 と言いながら横目で母を見ると、

「あああっ!もう出なきゃ!!行ってくるね!」

 とバタバタと足音を鳴らし、扉の前に立っていた俺を押し退けてリビングを出た。


「母さん、気を付けてね。」

「ママ、いってらっしゃい~。」と姉弟でリビングから声をかけると、


「はーいっ!芽生(めお)も新学期ファイト!!

 芹香(せりか)ちゃんは、朝ごはんの片づけ宜しくーっ!」

 と元気な声で言い放ち、出勤していった。


台風が去ったかのような雰囲気で、

ダイニングテーブルに用意されている朝ごはんを食べようと、椅子に座った瞬間、


芽生(めお)、急に背伸びてね??」

 と対面に座っている姉が話しかけてきた。

「そうか?あんまり実感ないけど、そういわれるとそうかも。」

 朝ごはんの卵サンドを頬張りながら答えた。


「なかなか大人っぽくなってきてるんじゃない?せりもさ、ほら、どうよ?」

 と満面の笑みで問いかけられたので、

「うん。大学2年生って感じするよ。」と適当に欲しそうな言葉をあげた。


いつもならそんなことは言わないが、

今日は、新学期という一大イベントに気合が入っている為、

いつもより優しい対応になった。



朝ごはんを食べ終え、姉に片づけをお願いし、

かなり早い時間に家を出た。


(学校に着いたら、新しいクラスメイトチェックか…

 結構ドキドキするな…。

 部活のメンバーなら誰でもいいから、せめて1人は同じクラスがいいな…。)


電車に揺られながらそんなことを考えていると、

ふと朝のツイートを思い出した。


(誰か反応してくれてるかな。)


携帯を確認すると、案の定Twitterの通知が来ていた。


チクタクマ『俺らまた同じクラス!!最高!』

JUN『はよ。俺も一緒だったぞ!』

こーへー『離れた…泣泣泣』


と来ていた。


(ネタバレされた…。ていうかアイツら何時に学校着いてんだよ。笑

 でも、拓真も純も同じクラスでよかった。)


同じバスケ部のメンバーで、一番仲良くしている2人と

クラスが一緒だったことが嬉しく、ポケットの中で軽くガッツポーズをした。


出会いまでは、もう少し先です。

少々お待ちを。

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