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桒野ゆずは は常識がない。

「おい! 俺は先に走って行くからな!」


「ちょ、ちょっと・・・!」


なんか後ろから聞こえるけど完全無視。ヤバいぞ。ここまで悪運が極まっているとは思いもしなかった。お願いだから勘違いであってれ・・・!


1年生と2年生の寮は校舎と隣接している8階建ての建物らしい。エントランスの自動ドアの開閉速度にすら苛立ちを覚えるほど焦っている。部屋番号なんて知らないから受付に聞くしかない。


「あの、黒羽英慈です。部屋番号を教えてください」

 

「えーとなぁ・・・か、き、く・・おぉあったぞ。721号室じゃよ」


「ありがとうございます!」


受付のおじちゃんに感謝しながら階段を駆け上がる。今ならエレベーターよりも速く走れる気がする。


気がしただけだった。5階に着くころには汗がシャツを濡らし、息は切れだした。くっそ暑いなこの制服。制服は黒を基調としたもので、ブレザーはなかなかの重さがある。これを通年着ろって? 狂ってんだろ。


ようやく7階だ。部屋番号を見ながら廊下をラストスパートで走る。あの角を曲がったところが丁度721号室か。あと10メートル・・・3メートル・・・1メートル!


っと!! あっぶねぇ。部屋の前に人が居た。よく見ると・・・予想通りの同居人が居た。


「鍵、忘れたわ」


「お、おう。これが鍵になるらしいからな。ほら」


端末をドアに近づけると鍵が開く音がした。


「そう」


か細く、綺麗な声の持ち主はそう言って部屋に入っていった。部屋番号を確認すると721号室。その下に二つの名前は書かれている。黒羽英慈、そして桒野ゆずは。


 ・・・神は何処にいる? 俺の人生で遊んでるんじゃねぇぞ。どういう態度で接すればいいんだ? 


心臓の音がロックバンドのドラムになっている。落ち着かせるために深呼吸をしよう。ひっ、ひっ、ふ~。ひっ、ひっ、ふ~。なんだか知らないリズムが口から出てきたけど大丈夫。


これからの方針を決めよう。といっても様子見しかできないか。勝手に何とかなりますように!


部屋に入ると下着姿の桒野さん。薄いピンクの下着で、スタイルも良く絶景だ。


「桒野さん! 着替えは着替え専用の場所でしてって言われたでしょ!?」


「私は困らないわ」


「俺が困るの! 早くこれ着て!」


ブレザーを差し出す。パンツとかをチラッと見えるのは男子のエロイズムを刺激するけど、下着姿で堂々とされると見ることが出来ないくらいの罪悪感を味わってしまう。


・・・桒野さんは無事にブレザーを着てくれたようだ。


「私のお尻を揉んだのに?」


「それは違ってだな・・」


「知っているわ」


「知ってるのかよ! でもなんで知っているのに俺に言ったんだ?」


「知らなかったからよ」


「おい、矛盾って言葉知ってるか?」


「台湾飯なら知ってるわ」


「どういう流れから台湾飯が出てきた?」


「どうでもいいわ。英慈じゃないことはさっきライルから聞いたのよ」

 

「それならそう言えよ・・・」


「理解能力に欠けているのね」


「多分誰でも理解出来ないからな!?」

 

「ライルなら出来るわ」


「それには同意するよ。ところで俺じゃないって信じてくれるのか?」


「やっぱり英慈が犯人ね」


「だから違うって!」


「呼び方変えてくれたら信じるわ」


「じゃあ桒野」


「もう一声が欲しいわ」


「ライルと同じようにゆずってことか?」


「そうよ。おめでとう、夢にまで見たシャバよ」


「これまで俺は刑務所に居たのか・・・」


これはダメだ。常識が通じない相手と話すのがこれだけ疲れるとは思わなかった。時速1000ツッコミくらいしなければならないので、疲労蓄積が半端ない。

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