表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/41

勉強しなくちゃダメみたいです

「それでも一人一部屋は少し了承しかねるかな」


予想とは違う方へと進み始めた。どうやら少し甘く考えていたらしい。


背中を伝う汗を感じる。

 

「結局のところ、君の要望は七海沙稀と国藤慶輔が別に生活をすることを望んでいるんだろ?」

 

「はい」

 

「その願いは条件付きで叶えてあげるよ」


・・・ここは素直に喜ぶところなのだろうか。

 

「四ノ宮は来年の新入生にはトリオタッグ制度を導入する予定なんだ。つまり、そのサンプリングとして君達三人をタッグとして認めてあげるよ。無論、国藤君もそのようになるかな」

 

確かに、俺の要望は問題なく叶えられている。だが、虫の良すぎる話ではないだろうか。

 

「有難いお話です。ですが条件とは何になるのでしょうか」

 

「1学期。つまり夏期休暇までのタッグ成績で決めさせてもらうよ。そうだなぁ・・・全タッグの中で10位以内にしよう。あ、このタッグは黒羽英慈、桒野ゆずはのタッグを指しているよ」


「優秀ではないペアをサンプリングしても意味ないからね」


そう言って肩をすくめる。

 

10位以内。その数字の凄さは体感出来ていないけど、するしかないのだろうな。

 

「ちなみに、夏期休暇までは七海沙稀のタッグ権限を一部だけ君たちのタッグにも分割しておくよ」

 

「ありがとうございます!」

 

「僕にここまで言わせたんだ。10位以内になってくれることを切に願っておくよ」

 

「はい!それでは失礼いたします」

 

回れ右をしてドアに向かう。少しだけ希望が見えてきた。

 

「おっと、ちゃんと言っていなかったね。もし10位以内にならなかったらこの話は一切聞いてなかったことになるからね。チャンスは1度だ」

 

「・・・分かりました」

 

廊下に出ると圧迫された空間からの解放で体が軽く感じる。あそこは加重力空間かよ。


ともかく、予想とは異なる形だけど成功と言えるだろう。勉強しなくちゃなぁ・・・。



 

ランキング最下位、黒羽英慈。


君には1度会ってみたかったけど、こんな早く叶うとはね。


推薦入試では最低評価。当然の事ながら不合格の通知を贈呈する予定だったが、君には一つだけ突出したものがあったんだ。


それは、AAETにて模範解答そのものを叩きだした事実。


AAET(Appropriate Ability Evaluate Test)は、AIによって職業別に作成される500問の適性能力評価テスだ。


点数が高いほどその職業に適性能力を持っていると判断される。四ノ宮の上位入学者平均でも300点後半の「点数を取ることが難しいテスト」だ。


その中で黒羽英慈は満点を取っている。


君は適性能力っていう「才能」だけで入学した。


これからが楽しみでたまらないよ。

 


「10位以内!?」

 

「あぁ。頑張ってみるよ」

 

「私一人なら寝てても取れるから安心してね」

 

分かってるって。これ、実質的は俺の点数のみで決定しちゃうやつじゃん。

 

「英慈・・・。私、別に大丈夫だから・・・」

 

「はいはい。俺はしたいからするだけでお前は何も関係ないよ」

 

そうだ。これは俺がしたいたからしてるだけだ。

だから、七海には責任なんてものを感じて欲しくない。

 

「そうね。沙稀はそこで夏まで寝てなさい」

 

「それじゃぁ・・・お願いします」

 

しおらしいなぁ・・・。そのうち、回復することを願っておこう。

 

「沙稀はここに住むのよね?」

 

「あぁ」

 

「そこまで迷惑はかけられないから・・・。」

 

「またベンチ生活に戻るってか?」

 

「いや・・・」

 

「早く荷物まとめて持ってこいよ」

 

「分かった。行ってくる」

 

そう言って早足で部屋を出る。

 

「英慈は優しいのね」


 「そんな優しい俺にクリームパンを買ってきてくれないかい?」

 

「最低ね。ネットの荒海に顔写真と共に捏造した悪行を毎日書き込むことにするわ」

 

「お前が最低だよ!!」

 

七海がこの部屋に過ごすとなると、俺の寝床は必然的にソファーとなる。


・・・何とか体が収まるサイズだ。寝る前に受付でもらってこよう。


「ところで、今の英慈の成績からでは10位なんて程遠いことを理解してる?」


七海がドアを閉めたことを確認して、ゆずが問いかけてくる。


「分かってるよ」


痛い程理解してる。


「それなら、今からでも勉強するべきじゃないの?」

 

確かにそうなのだが。


「何からしたらいいのかも分からないな」


本心から答える。そう、何をしたら良いのかすら分からない。取り敢えず、明日からはきちんと授業を聞こうと思ってる。

 

「真面目に勉強しなくちゃ難しいと思うわよ」


追撃が開始される。

 

「あと、英慈は一番下のクラスだから、そもそもテスト範囲を全てカバーしないと思うわ」

 

「・・・マジ?」

 

「だって、こないだ先生が言っていたもの」

 

「えぇ・・・。つまり独学でしろと」

 

「ここに天才がいることを忘れてるのかしら」

 

確かに天才だが、自分で言うのは間違っていると思うぞ。

 

「・・・頼むよ」 

 

「人に頼むときにする態度ってそんなものなの?」

 

コイツ・・・。

 

「お願い致します。この私に勉学をご教授して頂けないでしょうか」

 

「気持ち悪いわ」

 

「おい!!」


そんなこと言っているけど、手伝ってくれることには変わらない。感謝している。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ