情報
『何を言ってるんだよん!』
これからの話をするために宿を見つけた2人だったが、着いて早々論争を繰り広げていた。
『俺はダメだ、魔女を、、セルネを助けられる気がしない。』
『本気で言ってるのん!?』
『あぁ。』
『ライはそんなこと言うやつじゃないよん!正気になれよん!』
『俺だって救いたいさ。ただ俺の力じゃダメだって今日わかったんだ。俺ごときが登れる山じゃないんだよ。』
『、、、どうしたんだよん。』
モコモはこれが人生2度目のライとの喧嘩だが、前回とは何もかもが違っていた。ライはこんなに腑抜けでどうしようもないやつじゃないんだ。それが分かっているために尚更ショックで、言葉を失った。
『どうしたんだろうな。』
するとベッドに座り込んで視線を床から決して離さなかったライがケロッとした表情で首を傾げている。
『え??』
『いや、俺は今まで何を弱気になってたんだ?自分でもあまりよく分かってないんだが、セルネは俺たちが救い出すに決まっているだろう。悪いな今までの俺はどうかしてた。』
自分でも心配になるくらいの情緒の不安定具合にモコモも当然疑心を隠せないが、今はとりあえずいつものライが戻ってきたことに喜んだ様子で、
『だよねん!よかったよん。本当に心配になったんだからん。』
と安堵のため息をついた。
『あぁ、心配かけたな。もう大丈夫だ』
『じゃあ気を取り直してこれからの作戦を立てよう。ここに来るまでに話したが武器の所持使用をしばらく禁止されたから、しばらくは能力を使って情報収集を行おうと思う。』
『そうだねん。僕はこのグローブを使いこなすことと、簡単な依頼を貰ってくるからそれでお金も稼ごうよん。』
『あぁ、そっちは任せる。幸いここは裏町だから沢山の情報が飛び回ってる。少し辛いが早速ワイアタップするとしよう。』
『無理はしないでねん。』
念の為モコモにも範囲は半径20mだと思わせているが、気付かれる心配も無いため半径100mの範囲まで広げてあらゆる声を拾い上げる。
『チチチッ』
薄暗い路地を這うネズミの音
『オラァ今日もこんな大物しとめたぜ!ヒック』
酔っ払い自慢するハンターの声
『× × × × × × 』
夜の営みにはげむ声
『これはゼルの野郎をを飛ばしてくれたお礼だ。これからも仲良く頼むぜ。』
『あんなの使えねぇやつ払っただけですよ。毎度。またなんかあれば言ってください。』
密会をする者の声
『チチチッ』
地を這うネズミの音
『チチチッ』
、、、
『はぁはぁ、、ネズミの音を拾いすぎてあまり情報にありつけなかったが、、。ただいいことを思いついたぞ。』
『なになにん?』
『・・・・・・』
『少し危ない橋になるが、どうだ?』
『もっと危ない綱を渡ろうとしてるのに、今更そんなの関係ないよん!』
『よし、決まりだ。俺はこれから毎晩ワイアタップをするから次の日取りが分かり次第動くぞ。』
『うん!』
こうして、情報を得るために行われた2人の密談はこの先予想外の大騒動となる導火線に密かに火をつけたのだった。
ライが何を企んでるか気になりますが、情緒も心配ですよね。まだ17なので大変だと思いますが、心も強く成長していって欲しいです。
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