喪失感
『ボダラくんも契約は終わったようね。』
ゾフィーの指示によって精霊との契約を終えたボダラは、腕にはめた初期装備である木のブレスレットをじっと見つめている。
『それにしても意外だったわね。』
『まぁ、俺はにはこれが必要なんすよ』
ブレスレット系統の武器は能力の発動速度を早めることが出来る装備で、岩石系との相性はこれまた未知数だ。
『で、君だけど。』
ライに切り替えたその視線は相も変わらず厳しいものがある。
『はい。。。』
いつの間に目の前から取り出した2丁の銃には見覚えがある。
『これ、こっちで預かります。この武器は多分既に所有者がいるからそれもこっちで探します。』
契約対象である精霊は、その武器自体から出てくるのではなく、武器を手にした人物に呼応して出てくる。
人間同様、精霊との契約者も1人なのだ。だからこの銃に所有者がいても何ら不思議ではない。
『分かりました。』
『君がこの1ヶ月間、武器を使用することがあったらすぐに分かるようにしておきますから、くれぐれも気をつけてね。』
次は無いぞ、という威圧が言葉からは感じられた。
ライはゴクリと息を呑んで深く頷く。
パン!
ゾフィーは自身の胸の前で手を叩くと、気分をリセットしたかのように瞬きをした。
『ボダラ=ポール、あなたにはE級ハンターの称号を。そしてライ=トーラス、あなたにはF級ハンターの称号をここに与えます。』
『あざっす。』『ありがとうございます』
飛び級なんてことあるのか。それも面接のみで。やはりこの男はハンターの歴史で見てもただものでは無いということか。
『じゃあ2人とも頑張ってね!』
『うす。』『はい。』
外に出たボダラは余韻を噛み締める間もなく地中へと去っていった。
鋼の精神、この移動手段、そして透明な岩石(?)、これ以上に強力な能力があることを考えると飛び級も当然なのか。
それにしても武器が使えないなんて出鼻をくじかれた、、自分で蒔いた種だから仕方ないが。
『、、、あれ?』
建物を出てしばらくすると、急な不安がライを襲った。
あの時の魔女の痕跡も、何も無いのに今の無力な俺がセルネを救えるのか?ようやく見つけた'鍵'さえしばらく奪われ、元のセルネやモコモに頼りきっていた自分に戻ってしまった。それにガイダーさんや同級生であるボダラにまで見せつけられた埋め難い差はどうにかなるのか?
本来、セルネを失った頃に感じるようなショックが今になって押し寄せた。
自分でも少し違和感はあったんだ。これまでの自分は起こった事に対して冷静すぎたんだ、ついでに言うとモコモも。
ダメだダメだ、、落ち着け、大丈夫だ。
落ち着けても、静まらない心のざわめきに戸惑いながら深呼吸をする。
モコモ、、お前は大丈夫なのか?
モコモも本来だったら俺よりも焦るはずだ。今あいつにも同じ不安がおしよせているのだろうか、、
『ライ!どうかしたのん?』
頭を抱えて何かに怯えるライの背中に安らぎを与えたのはモコモの声だった。
『モコモ、、?あぁ、モコモ受かったんだな。』
モコモの登場により心中の憂悶が嘘のように消え去り、心が軽くなった。
モコモは全く大丈夫な様子で、ここから出てきたということは当然合格したのだろう。いつの間に実戦試験が終わっていたのか。
気がついた頃には空は薄暮となり、ライが外に出てから恐らく4,5時間の時が経過している。こんなに時間が経っていたのか?
『それよりライは合格したんだよねん?2次試験の時いなかったから心配したんだよん。』
『あ、あぁ。俺は大丈夫だ。』
心配させるような不甲斐ない男で悪い、ただもう大丈夫だ。
『はぁー?!嘘だろ!?お前ごときが受かったのかよ?!』
このうるさい声は。
『ローディルも受かったんだな。おめでとう』
『おめでとう、ってなんか気持ちわりぃなお前。俺が受からねぇわけねぇだろ。』
『そうか。』
その後ろからぞろぞろと、30人程でてきただろうか。その中には当然、アルマやその他の称号持ちが顔を揃えている。
『セルネの足引っ張るんじゃねぇぞ。』
『あぁ。』
こいつ妙に大人しいな。そんな顔をして不気味がったローディルは直ぐにその場を後にした。
モコモがいないとこの体たらく、反論する気になれるわけがない。俺はこんなに情けない男だったのか、、、
爽やかで涼し気な空の中、ライの心には雨が降っていた。
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