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《 カイトの報告書 》



報告者 カイト


 昨日の夜、ジェイド様は夜の散歩に行った。夜の散歩も、最初の頃は行かないように頼み、そのうち諦めてホムルとどちらかが付いて行くようにしていた。最近では、すぐに戻ってくれることもあって、このところお一人で行かせてしまっていた。昨日は双子もついて行かなかったみたいだ。失敗した。


 その結果、ジェイド様が女の子を森から拾ってきてしまった。12、3歳くらいの黒目黒髪の子で、顔立ちから多分別の島から来たんじゃないかと思う。困ったことに、どうも朝までベッドで一緒に過ごしたみたいだ。午前の執務をサボられた。


 やっと寝室から出ると聞いてホムルと居間に控えていると、ジェイド様が女の子を抱き上げて出てきた。かなり疲れた様子だ。メリーからの話によると、マイミィ様というらしい。


 本人は、ニホンとかいう異国に住んでいたのに、知らないうちに森に連れて来られたと言っているらしい。ところがジェイド様はマイミィ様を森の妖精だと信じてるみたいだ。確かに周りを警戒しながらチマチマ食べる様子はかわいいけど、妖精というよりは小動物みたいだ。


 だけどマイミィ様のおかげで昼メシのおこぼれをもらえた。さっき自分の分は食べたけど、上手いものは別腹だ。マイミィ様は小食みたいだけど、それにしてもテーブルの上いっぱいに皿が並んでいるから、最初から分けてくれるつもりだったのかもしれない。普段仏頂面のマーガレットもうれしそうだ。やっぱ味が違う。ライスは俺たちのメシ、手抜きしすぎじゃないか。


 その間、お二人はティーテーブルでお茶中。マイミィ様を膝の上に乗せてベタベタしていた。親子みたいだ。俺たちと交代で双子が部屋に入ってきた時、そのお二人の姿を見てびっくりして一瞬固まってた。その気持ちわかる。女に興味なさ過ぎだったジェイド様のデロデロ具合は嘘みたいだ。


 食後に馬で森まで行くというので、今度こそホムルと付いて行った。マイミィ様は馬としゃべれるみたいだ。ポラリスが返事をしている。びっくりして三人で見ていたら、気付いたマイミィ様が隠れてしまった。


 いつもの散歩の折り返し地点の泉に着いて、馬から降りる。ジェイド様はマイミィ様とここで出会ったのか。確かに妖精が出てきそうな雰囲気がある。突然マイミィ様がすごい速さで服を脱いで下着になったと思ったら、小さな水音をさせて泉に飛び込んだ。びっくりして固まっていると中島の木のところに顔を出した。


 森の妖精じゃなくて泉の妖精かもしれない。あんな風に飛び込む人を見たことがない。水から上がると下着が透けていた。12歳じゃないかもしれない。ジェイド様が後ろを向けと言ったが、聞こえない振りをした。護衛対象から目を離してはいけない。


 戻ったマイミィ様を、ジェイド様は乾かし着替えさせ、ローブで巻いてご自分のマントまで掛けている。過保護な親みたいだ。ポラリスに抱えて乗せ、抱きしめるようにして走り出す。領主館に戻るとあっという間に部屋に消えていった。さっきはあのまま、マイミィ様が泉に消えてしまうのかと思った。もう森には連れて行かない方がいいんじゃないかと思う。


 次の日の午前、マイミィ様の護衛に付く。バレないようにしてるつもりらしいけど、俺の名前を覚えてないらしい。ひどい。でも、迷路でジェイド様の兄だと言ってもらえて、腕にしがみつかれた時はうれしかった。監視としてジェイド様の側に付いてから結構経つけど、正直第二王子よりもよっぽどいい奴だし好きだ。


 しまった!!ここまで書いたのに、最後に本音を書いてしまった。もうこの報告書は使えないや。ホムルのやつを送ってもらうことにして、この報告書は、妖精との出会いの思い出に取っておこう。






 

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