表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/37

2日目 〜日本の気配にザマァの懸念



 今日は早起きをした。ジェイドはもうベッドにいなかった。部屋を見回すと筋トレ?しているようだ。ガタイがいいのにナヨっとした優男系の振る舞いをするので、昨日は違和感があったのだが、おおっぴらに鍛えたり強くなったりできない理由があるのかもしれない。深入りしたくないので二度寝する。



 朝ご飯は部屋でとる。私の部屋はジェイドの部屋。「ずっと側にいて欲しいから」らしい。人前で言うあたり、小芝居が効いている。しかし実際にはそうはいかない。お仕事があるからだ。素性をバラしたくないようで、執務室は立入禁止。領地経営の執務でもしてるのか。私は文学部出身だから役には立たない。


 仕方がないので午前中は庭の散歩をする。この世界の情報収集は必要だ。外を見てみると、庭というか広大な庭園というか。庭が塀の内側という意味なら、一日かかっても見終わらないかもしれない。奥の方は鬱蒼としている。森との境目がわからないくらいだ。とりあえず手前の辺りを見て回ろう。



 外に出ると青い護衛騎士がついて来た。見張りか。まあそうだよね。私のような得体の知れない人間の野放しは危険だ。ところで彼の名前はなんて言ったか。そういえば聞いてない気がする……多分。防音の茶会中、食べる前に嬉しそうに名乗っていた気もするが、私は聞いてない。防音は、内側の音のみ外に遮断、に変更するべきか。


 花壇前で庭師の青年を発見。庭師は下働きという分類なのか昨日は会っていない。私はいつまでお客様扱いが受けられるかわからないし、いつ下働き仲間になるかわからないので愛想よくしておこう。これでも接客業をしていたから、営業スマイルは得意だ。彼には無表情の妖精モードはいらないだろう。青の騎士を手前で待たせ、庭師に近寄り挨拶をする。こちらから名乗って庭師の名を聞く。ポールだそうだ。名前を覚えるのは苦手だから、連想ゲームのように暗記する。庭、柵、杭……ぽーる?いいね、わかりやすい。人手が少ないので馬の世話もしているらしい。……そして本来の目的を果たす。



「後ろにいるあの青い護衛騎士は、名前をなんと言ったっけ?」


「……カイト様です。」


「あーそうそう、そうだよね。カイト……海人。青い髪に海!わーまんまだ!覚えた覚えた!」



 名前が分かれば話しかけられるから、これで行きたい所に行ける。カイトに庭の端まで行きたいと言うと、遠すぎて徒歩では昼までに戻れないと言われる。仕方がないので、乗馬を習いたいと頼んだら、ジェイドに聞くように言われる。そりゃそうか。諦めて、側にある木の迷路っぽいところに入ってみた。せっかくなので会話に挑戦する。



「カイトはジェイドの何番目のお兄さんの所から来たの?」


「!?……二番目です。」


「お兄さんのお友達なの?ご学友とか?」


「乳兄弟です。」


「ああ!じゃあお兄さんのお兄さんだからジェイドのお兄さんでもあるのね。やっぱり家族じゃん!家族なら一緒にご飯を食べようよ。」



 ガサツっぽい騎士が一緒なら、私のマナーの粗もごまかせるはずだ。必死に腕を揺さぶり、ねえねえと頼み込む。子供っぽい見た目バンザイ。承諾を得られないまま、少ししたら、植木を掻き分けジェイドがやって来た。お昼には早くない?おサボりか。ダメ男は演技ではないのかもしれない。また姫抱っこで連行される。楽だからいいか。ついでに乗馬練習をおねだりしてみる。渋々ながらオッケーが出た。一緒にやりたがったが時間がないらしい。仕事しろ。


 みんなと食事を一緒にすることもおねだりする。こちらはあっさりオッケーだ。正し、この屋敷にいる時だけだそうだ。ジェイド以外のみんなの階級が気になる。貴族ではないのかもしれない。



 メイド長じゃなく家政婦、はマーサ。いかにもな名前だ。侍女、はマーガレット。うん、わかる、花の名前シリーズね。そして執事はセバスチャンではなく、メリーだった。これは歌うしかないでしょ。メリーさんがしつじ。嫌がられたがメリーさんと呼ぶことにする。


 直接頼んでない為か、別に仕事があったのか、昼食に赤白黒はいなかった。赤はジェイドの上のお兄さんの乳兄弟だそうだ。そして白黒はジェイドの乳兄弟でメリーさんとマーサの双子の息子らしい。二卵性なのだろう。メリーさんは灰色の髪、マーサは茶色。ちなみに使用人・下働きは殆どみんな、明るい茶色の髪だ。


 護衛騎士はみんなジェイドの義兄弟なのだからと、全員の食事参加を勝ち取った。料理長は昼だけ。名前はライス。マジご飯?ここまでくると、何らかの意思を感じるね。ここって乙女ゲームとか、何か原作モノの世界なのかな?私は知らないけど。悪役令嬢とかざまあとか勘弁してください。




 午後、乗馬練習のためにマーサの子供が昔着ていた乗馬服を掘り出してきてくれた。……それって双子のじゃない?……まあいいか。付き合ってくれるのは、赤の騎士だった。ポニーを連れて来たポールが、「ホムル様も馬に乗られますか?」と聞いた。good job!名前を覚えてないのをわかってらっしゃる!ニッコリ笑って親指を立てたら顔を真っ赤にされた。マズい。親指を立てるって何か卑猥な意味があったのかもしれない。笑ってごまかした。


 それにしてもポニーって子供扱いしすぎじゃないか。ポニーの名前はまだなかったので、つけるように言われてシリウスにした。シリウスに向かって飛びたい。馬跳びだ。この子も賢いのでYESNOのルールを教える。乗馬なんてしたことないけど、シリウスのおかげか上手くいった。歩いて〜とか、ちょい速とか、ダッシュとか、口頭の指示で動いてくれる。



 それにしても赤い髪で火の魔法が得意でホムル。きっと焔と書いてほむらでホムルでしょ。これはもうわざとだよね。意図してだ。白黒の名前も早く知りたいところだ。


 夕方になる前にジェイドが迎えに来た。夕飯は騎士四人がそろった。なんとなんと!白はブランシュ、黒はクロールだそうですよ。マジか。いよいよ悪役令嬢や断罪に備えなくちゃいけないかもしれない。



 夜は寝られませんでした。ヤキモチだそうだ。迷路でも馬場でも、私の様子は二階からジェイドに見られていたらしい。どこに嫉妬する要素があったのか不明だが、他の男の服を着るのはダメらしい。お気に入りの毛布に別の匂いが付くのは嫌だというのは理解できる。デカい犬に懐かれているようでちょっとうれしくもある。結果、全身筋肉痛だけど。これは乗馬のせいではないと思う。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ