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冬1 〜ツバメの飼い主はライチョウ



 深夜、昨日の昼にできなかった話をした。白昼夢の話、赤ちゃんの話、メリーのしたこと、神々の怒りとその理由、雪の範囲と期間、出稼ぎの人達のこと、お姫様の話、王トリオとのやり取り、紫の人と双子の兄、メリーと王の関係の疑惑。秘密は作りたくない。全部話した。


 宿る前から命はあって、生まれて来ることは決められていたということ。私が気を配っていれば薬を盛られることもなかったこと。私が気付かなければ神々の怒りをこの国が受けることはなかったこと。白昼夢でジェイドが死んだと聞かされた時には大泣きしたのに、赤ちゃんのことは受け入れてること。……薄情な人間だ。王様にあんな偉そうなこと言ったのに、自分が気付く前だったから平気なのか……。


 そういう気持ちも、考えたことも、ぽつぽつ話して聞いてもらう。手を繋いだまま、ジェイドは静かに聞いてくれた。同じ話がループしだした頃、ぎゅっと抱きしめてくれた。上辺だけの慰めは言わなかったが、自分の気持ちと考えを聞かせてくれた。


 最初から私の言動、能力、考え方は王の目に留まると分かっていて好きにさせていたこと。出来れば部屋に閉じ込めて自分だけのものにして隠しておきたかったこと。でもそれではきっと私はまた死んだ魚の目になっていただろうこと。歌や演奏のことで楽しそうにしている私を見るのが好きだったこと。夢でジェイドが死んだことに取り乱して後を追おうとしたのがうれしかったこと。私との赤ちゃんがいなくなって悲しいこと。


「きっとマイはまだ混乱してるんだよ。俺達の問題だけじゃない大事になったから。国、楽団員、領民。沢山抱え込んで、俺達のことを処理するゆとりが今はないんだ。泣きたくなったら泣けばいい。泣かなくてもいい。だからといって悲しんでいない訳じゃないんだから。」


「うん……」


「国のことも、マイがあそこで気付いたからこの程度で済んだのかもしれない。そうじゃなかったらいつかのタイミングでこの領地以外が消滅していたかもしれない。」


「うん……。絶対ないと言えないところが怖いね。正直なんでこんなに神様達が気に入ってくれてるのか分からないし。いつか加護が終わった時に困らないように神々とのお付き合いの仕方をちゃんと考えなきゃと思ってたところ。」


「……全部俺に任せてずっとこの温かい寝台で待っていてくれてもいいんだぞ?そのくらいはできるつもりだ。でもマイは自分で始めたことを見届けたいんだろ?だから今日はもう寝よう。明日も忙しくなる。」


「うん……ゴメンね。……ありがとう。」





 翌朝早く起きると、一面銀世界だった。まだ降ってる。村の屋根は大丈夫だろうか。出稼ぎ隊は隣国に着けただろうか。今日も私は騎士(見習い)スタイル。クリーン便利。洗ったら絶対乾かない。あ、魔法で乾かせば良いのか。でもこれから多分館に人の出入りが増えるから、魔法の使用には気を付けなきゃ。今更な気もするが、一応だ。


 楽団員達は、貧民って訳じゃないけど貴族でもないようで、結構働いてくれる。雪おろしの為のスコップ等は昨日仕入れ済みだ。みんな仕事ができる!クロもメリーも戻って来た。地図を見せてもらったことはないけど、すぐ戻れるってことはこの国があんまり大きくないか、この領地が国境に近いってことか。……単に二人が有能って線も残しておこう。



 村の家はまだ倒壊はしてない。だけど女子供と孤児院の子達は館に来てもらって、孤児院に村の男達が寝泊まりする。少人数の村だからできることだ。順番に神殿に詰めて外部からの訪問に備える。明らかにこの領地は雪が少ない。殆ど森しかないからこそ、生き物とか植物を乱獲される可能性がある。茨は一晩で見上げる程の高さに育ってて、ちょっとネの国チックの迫力。だからこそ出入りできる村の入口は一応警戒する。



 やってきました子供達。女子供は二階、男は一階。子供と、授乳中の女性は一室、それ以外の女性は一室。元々この館は余り広くない。仲良くできるかな。風邪とか蔓延しないように気を付けなきゃ。ノトスとエウロスはもう大人枠。その辺の区分けは村の人達にお任せだ。村の人達と孤児院の子達に、元々そう壁はなかったけど、みんなあの絵を見たくて村の端と端を行き来して、挨拶し合い、孤児院でも一善を模索したりして、より仲良くなってたみたい。私の思いつき発言、グッジョブ!

 

 ただね、また出たよ。悪ガキ(正しいサイズ)が!つまり小学生だな。よしよし、遊んであげよう。そういえば黒髪の時もベールしてたし、緑髪になっちゃってからこの子達とはあってないんだな。楽しくなってきた。



「お前だけなんで同じ部屋じゃないんだよ。小さいのに下の部屋なんてずるいぞ!」


 賢い女の子達と、顔色の悪い大人には、ウインクしてそっと口に指を当てる。ブランシュには言わずもがな。そういえば前回もブランだったな。


「この部屋に寝ないのは領主さま直々のお達示だからしょうがないだろ。」


 嘘は言ってません。ジェイドにも一緒に寝ないと頑張れないと縋られ、周りには気を遣うから止めてくれと頼まれ、一緒に寝るのを断念したんだから。一階でも子供部屋でもなく領主様の寝室で寝るだけです。


「しょうがないな……。朝はご飯の前に雪かきして体操するんだぞ。早く来いよ。」



 おお素直だ。気遣わしそうな女の子達の肩を叩き、雪かきを辞めさせたそうな大人は見ないふりする。朝は玄関前とちょっとくらいのスペースだけ取り合えず雪かきして、体操する。もちろんラジオ体操第一。そして演奏は特別扱いのスヌーさん。強制連行の代わりに演奏を任せるといった時、他の楽団員がニヤニヤしてたから、国では知らない者のいない歴史ある曲なのだと言ってやった。馬鹿にしてはいけない。


 これ、久しぶりに真面目にやると筋肉痛になる。どうだ!ガキ大将よ、私は完璧に覚えているぞ!雪かきと体操で体が暖まったところで朝ごはん。大人はもう食べ終わってる。やっぱ良く食べるな~。だからこその成長率か。赤ちゃんママも一緒だ。雪かきはしないけど、ちび達の世話を焼いてくれる。先に食べちゃってと赤ちゃんを受け取り、代わりにヤギ乳を譲る。ガキ大将にバレた。



「お前、ちゃんと飲まないから下の階で寝るのに小さいんだぞ。」


「いいかい。お母さんは自分の血を濾過して栄養と骨の元と水分を赤ちゃんに分けるんだ。赤ちゃんの分も飲まないと、お乳が出なくなってしまうんだぞ。その点私はもう身長が伸びないから骨の元は充分足りている。」



 はい、言いくるめた!本当はヤギ乳が苦手なだけだけど。牛乳飲みたい。ママさんにウインクして席を立つ。ん~赤ちゃんの匂い。お乳の匂いがする。温かい。日当たりのいい窓辺で外を見る。食べ終わった子達を追い出し、赤ちゃんを返す。ふ~もうご飯はいいかな。


 午前中は、日光浴がてら森の見回り……はダメらしいので庭に出る。鳥パパに髪の色はさておき、ちょっと月の加護に片より気味だから日に当たるよう言われた。雪焼けしちゃうんだけどと言ったら日焼け止めしてもいいらしい。必要なのは紫外線じゃないようだ。


 この庭、塀の外より更に冬が手加減されてるみたいでピクニックスペースまで歩ける。切り株を乾かしてもらい座る。日焼け結界に防水も付与。ブランにもかける。




 ――ジェイドに声をかけられた。あ、もう昼だ。抱き上げられて館に戻る。



 午後は神殿に行く。歌の奉納だ。昼に歌えば太陽神様、夜に歌えば月の女神様だけど、歌詞にもよるらしい。夫婦の歌ならいっぺんに済む?演奏係としてスヌーが付いて来る。ピアノも弾けるらしい。神官様は実は孤児院の先生とご夫婦だったらしく、この冬は主に孤児院と館を行き来する。神殿には見張り当番のみ。神殿の掃除もしてくれるけど、今は競い合って茨の実を集めてる。見張りは?



 ブランは入口付近。ピアノの前にスヌーと私。曲は何にするかな。スヌーが声をひそめて話しかけてくる。


「マイミィ様。どうか僕をお側に置いてください。」


 そう言うとそっと口づけされた。飛んで来そうだったブラン手で制す。


「あの騎士もお情けを頂いているのでしょ?僕も精一杯お尽くしします。……僕の髪、領主様に似てるでしょ?お寂しい時にはお慰めしますから。」


「……お情けね。私の側にはジェイドだけ。王弟だろうが王子だろうが、そういう意味で触られるのは気持ちが悪い。もちろん騎士達とも家族としての情はお互いに持ってると思うけど。護衛が側にいるのは仕事だよ?真摯に取り組んでる人達に対して、その発言はちょっと失礼じゃないかな?」


「僕は……マイミィ様をお慕いしてっ!」


「芸術家ってパトロン見つけないと大変だっていうのは知ってるよ。専属になりたがるのもその為だよね。今は越冬最優先だし、あなたの力を貸して欲しいと思ってる。それが済んだらコンクールとか出てみたら?ジャズより多分向いてると思う。そこで結果を残せばパトロン希望者も出るんじゃない?この領地は元々貧乏で、今回更に沢山お金を使っちゃったし。だから私達はパトロンにはなれないよ。」


「僕は本当に……」


「私が嫌だったら助けを求められるように、護衛がいる時に迫ったんでしょ?神殿じゃそれ以上は罰当たりでできないしね。そういう誠実なところはいいと思うよ。あなたに若いツバメは似合わない。相思相愛になれる人を見つけた方がいいと思う。……さあ奉納しよう。曲は結婚式で歌ったやつにしよう。コントラバスに教えたやつね。覚えてる?」




 ――やれやれ。本当に音楽家は貪欲だね。音楽家同士ノータと縁組みとかどうだろう。あ、でもノータはカイトといい感じ……いやいや、余計なお節介は止めとこう。今はそれどころじゃない。






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