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4週目1 〜ババを引いたのは誰か

あらすじ 要確認

 気が付いたら朝だった。あったかい。ジェイドの腕の中だ。よかった。あのまま泣いて寝ちゃったんだ。子供みたい。顔を上げると緑の目がこちらを見ていた。


「おはよう。」


「ポールは?騎士たちは?シリウスは?」


「あぁ、みんな無事だよ。ポールもそんなに傷は深くなかったみたいだ。」


「よかった~……安心したらお腹すいちゃった。っていうかここはどこなの?今日は攫われた次の次の日?」


「そうだ。」


「あの、ジェイド、私……何もされてないから。大丈夫だよ。気にしなっ、ふがっ。」


ぎゅーっと抱きしめられた。


「心配した。息が止まるかと思った。……いや、みすみすマイを攫われた奴ら全員の息を止めそうになった。」


「そんな!悪いのは庭に出た私で、私の、せいでっ、みん、みんながっ……」


 朝からまた泣き出すと、ジェイドが背中を撫でてくれる。だけどちょっと過呼吸気味かもしれない。昔ちょっとストレスで、どれだけ吸ってどれだけ吐いたらいいかわからなくなった時期のことをぼんやりしながら思い出す。手が震えてくる。多分吸い過ぎなんだけど、上手く吐けなくて。本当の過呼吸とは違うかもしれないけど、ひどくなる前に口笛を吹いたり、歌を歌ったり、とにかくしゃべったりすると治まる。でも、今はちょっと、上手く、でき……


「んむっ、んふー」


 涙と鼻水でベトベトなのに。何か漫画でもそんなシーンあったな、とか、飴をなめる代わりに違うものを……とか、どうでもいいことを考えているうちに落ち着いてきた。ジェイドさん……お母さんが赤ちゃんの鼻水を口で取ってあげるっていうくらいの愛を感じたよ。何か色々と申し訳ない。次はもうちょっと早めに対処するね。突然歌い出しても口笛吹いても引かないよう周知徹底願います。



「落ち着いた?今日はこのままベッドにいるか?」


「うん、ありがとう。……でもみんなにも会いたいから起きるよ。」




 ここは王都の定宿だそうだ。人手もないし、お金もないし、普段泊まらないからタウンハウスはないらしい。ポールはお留守番だけど、護衛騎士は四人とも駆け付けてくれてた。跪いて謝ってくれたけど……みんなの手をまとめて重ねて持って言う。


「私が庭に出たせいでみんなを怪我したり危険な目に遭わせてしまってごめんなさい。」


「そんなことはっ!」


「うん、ありがとう。私には誘拐されたことより、そっちのほうがずっともっとショックだったみたい。だからお互いごめんなさいで終わりにしましょう。」


「……はい。」



 主犯は第二王子、唆したのは王とメリーの手の者、実行犯は王の影っていうのが筋書きのようだ。近距離でほっぺを触られたくらい、満員電車通勤をこなしていた私には大したことがない。それよりも、追いかけられて逃げたり刃物投げられたり、目の前で流血されたりする方が断然ショックだった。メリーめ!もうさん付けでなんて呼んでやらん!しかし、そんなことしてなんの利益があったのだろう……?



 事件を察知したのか、私が王都にいることがバレたのか、第一王子妃と第二王子妃がお茶会を申し入れてきたらしい。お留守番の間に、マーサにちょっと作法とかならったけど、付け焼き刃すぎる。ドレスもない。それに結婚の手続きを完了させる代わりに、祝いの舞踏会に出ないといけないらしい。不安しかないな。


 第二王子の愚行は、未遂で返り討ちに遭った点もちゃんと含めて、王宮内で働くものには暗黙の了解状態である。どこかに策士がいるな。それを踏まえた上で、私はショックで体調不良なので無理を言わないこと、王宮言葉が未収得だけど咎めないことを了承させてくれたみたい。護衛も完璧にして、側仕え枠もブランで埋める。前からジェイドの従者みたいなことをしてたから、例え私が具合を悪くしても、余裕で対処できるらしい。


 こうやって症状を理解してくれて、一緒に対処してくれる人が沢山いるだけで前より早く治まりそうな気がする。現実世界の時には家族にすら言えず、やっと職場の同僚一人に打ち明けただけで、ぐっと発生頻度が減ったものだ。しかしあの時ジェイドは、酸素過多だからとか二酸化炭素が、とか理解してキスしてくれたのかな……実は転生者とかないよね。謎だ。まあ結果オーライでいいでしょう。


 急いで茶会と舞踏会のドレスを手配する。出来ものだと子供用を手直しになるそうだ……まあ今コルセットとか無理だし、今じゃなくても無理だし、胸の下切替のストンとしたシンプルタイプをリクエストする。首が詰まってるのも今は息苦しくて無理だからよろしく。……うん、今の私、ゆとりがある。大丈夫だ。




 



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