program.1~脱出~
病室を出たのはいいが、思い返せば部屋から出るのは初めてだな
少しわくわくしているのと同時に後のことを考えると不安でもあった
「ティア、どこへ向かっているのか教えてくれ」
「……いいから、黙ってついてきて。」
どこに行くかくらい教えてくれたっていいだろ、結構歩いたとおもうが……
それから、互いに沈黙したまま歩いた。
さすがに疲れてきた……それにちょっと気まずい
「おい、そろそろ教えてくれてもいいだろ」
「静かにして、気づかれると困る。」
俺に発言権はないのかよ……てか、気づかれる?やっぱり、バレたらまずいのか?
わくわくしていた胸の高鳴りが不安と緊張に変わっていく
ティアについて階段を通り過ぎたあたりで声が聞こえた
「タ、タスッ……ケッ……」
気のせいか?それとも幽霊?
俺は幽霊だの怪異の類は信じない質だが、0時過ぎの病院っていうシチュエーションだとな……
するとまた聞こえてきた、次ははっきりとした声で聞こえた
「助けて……エンジ——」
今の、こえは……
聞きなれた声、エンジを看護していたレイの声だった
思考より早く身体が先に動いた、ティアを後にして真っ先に階段のほうへ走った。
上のほうから鼓膜に刺さるような嫌な音が聞こえる
そこから音のほうへ昇っていくと、ノイズが大きくなっていった
階段を登りきると、踊り場に大量のeAIがゴミ山のように積まれていた
「タスケッ……タスッ——。」
そこでレイの声は途切れた。
「ハハッ……なんだよ、これ」
驚きすぎて思わず失笑した
「エンジ、勝手に動かないでeAIの残党に見つかったら面倒よ。」
ティアが階段を登りながらそう言った。
AIの残党ってなんだよ ティアはこれを見てなんとも思わないのか
声にしたつもりが、言葉が喉に詰まって出てこなかった。
胸を焼くような焦りと恐怖心で状況が呑み込めない
「……落ち着いて。これはもうただのガラクタ(・・・・)よ」
「なに言ってんだ!!機械とはいえ感情があるんだぞっ……」
ティアは俺の怒号に顔色を変えずにつづけた。
「……ええ、そうね、人間対する憎悪と殺意を。」
ティアの発した言葉の意味が分からなかった
「何言って……彼女、レイは俺を心配して、看病して、それで……」
「そうよ。あなたが逃げることを恐れて、心配して、あなたを管理していたのよ」
なんで、そんなことを?
頭と腹の奥がグシャグシャになった。管理ってなんだ、俺が逃げる?どこに・・・
「あなたが新藤 治真新藤 治真の息子だから、eAIの監視対象になった」
またティアはエンジの心を読むように答えた
「親父の息子だから?意味わかんねぇよ……」
エンジの言葉はどんどん弱々しくなっていった
「今はわからなくていいわ、とにかくここを出ましょう。」
ティアに強引に手を引かれてその場を離れた。




