リナとの再会 戦いの再開
俺とダイスケを乗せた車は目的地に着くと停車した。
外観は普通の13階建てのマンション。
レンガ風の外壁。外観は西洋の建物というイメージだ。
ダイスケはこっちだと俺を入口の方に案内する。
入口から中に入るとセキュリティ対策が施されていて、自動ドアとインターホンがある。
ダイスケはインターホンの部屋番号入力ボタンで迷わず数字を入力する。
呼び出し音が鳴る。
プルルル・・・
・・・。
プルルル・・・
・・・。
「留守じゃないのか?」
俺がいつまでも待つダイスケに声をかけると急に俺の方を振り向き形相を変える。
「はっ!?敵に先を越されたか!?」
ダイスケは少し慌て気味でドアの前に立つ。
「我の進路を固く閉ざしている鍵を解除せよ!パンドラロック!」
一言魔法を唱えると固く閉ざしていた自動ドアが開いた。
「おい、何魔法使ってんだよ」
ダイスケはドアが開くと駆け足でエントランスを抜ける。
3階まで階段でのぼり、いくつかある部屋の玄関前を通りすぎ、リナの部屋であると思われる玄関の扉の前で立ち止まり、ドアノブを掴んで引く。
しかし、中から鍵がかかっているのか開かない。
「くそっ!妨害魔法か!?」
「いや、ただ鍵がかかってるだけだろ」
ダイスケは焦る。そして
「パンドラロック!!」
また、勝手に解除する。なんて奴だ。かつて一緒に行動してきた勇者一行の仲間とは思えん行為だ。
あ、でも、ゲームでも勇者は勝手に人の家のタンスとか開けたりアイテム取ったりするんだっけ。
そんな事を脳裏で思いつつ、ダイスケは魔法で開錠した扉のドアノブを引き、中に入る。
「リナ!大丈夫か!?」
俺とダイスケは声をかけるが中は誰もいない。だが、すぐ近くの部屋で物音がした。
そこにリナがいるのか。
「ん!?そこか!」
ダイスケは物音のする部屋のドアを開けるとそこには一糸纏わぬ姿でいる全裸のリナがいた。
「ぬあっ!?」
ダイスケは驚きなのかよくわからない声を思わず発し、その場で静止する。
リナは驚きの表情を見せた後、自分が全裸である事とそれを見られている事に気づき、さっと手で隠しながらダイスケを右手で殴りつけた。平手ではなく、拳だ。
「きゃああ!変態!」
「ぶほべ!」
ダイスケは勢いよく吹っ飛ばされ、床に倒れる。
「元気そう・・・で・・・」
「ちょっと!なんでいきなり来てるのよ!?テレポート!?それにケイタも!?」
リナは赤面しながら俺とダイスケに怒鳴る。
「す、すまん、インターホンで鳴らしても反応がなかったからダイスケがリナの身に何かあったんじゃないかって勝手に盗賊スキルの魔法でロックを解除したんだ」
俺は必死にダイスケのせいにした。
リナはバスタタオルで身体を隠すと赤面しながらぶつぶつ言う。
「お風呂だって・・・。」
「リナ・・・久しぶりだな!」
俺は久しぶりのリナを見て嬉しくなった。
リナも俺の方を見てほほ笑んだ。可愛い。
「うん・・・こんな再開だけど私もケイタに会えて嬉しい。」
俺とリナが見つめ合っているとダイスケが起き上がり、拳で殴られた拍子にずれた眼鏡を直す。
少し赤くなった頬を気にせず、俺とリナを交互に見てくる。
「あ、すまん」
俺はついダイスケに謝ってしまった。
「いや、気にしなくていいよ、このまま続けてくれても・・・」
「いやよ!」
リナが今度はビンタでダイスケの頬を叩く。今度は平手である。
バチィン!!
「ぶぼへ!」
少し後ろによろけた。
「ま、まあ、リナが無事で何よりだ、ここがリナの家なんだな」
俺はリナの顔をみつめながら言うとリナは少し照れながらうんとうなずく。
「現実では初めて会うんだもんね。あっ!私そのまんまでしょ?」
リナは身体に巻いているバスタオル一枚の姿を笑顔いっぱいの表情で両手を拡げてみせてくる。
やっぱり可愛いな。
「ああ、リナは現実でもそのまま・・・その・・・かわ」
話している最中、突然窓ガラスが押し破られる様に何かが跳んできた。
ガシャン!!
「危ない!」
俺はリナを庇うように抱きしめる。
「ぐっ!!」
「ケイタ!大丈夫!?」
リナが慌てて心配する。俺は感触のあった方に目を向けると右腕に一本の矢が刺さっていた。
痛いが今はアドレナリンが出ているせいかそんなに悶えるほどではない。
「くそっ!誰だ!」
ダイスケが慌てて割れた窓の外を見る。
向かい側のマンションの屋上に人影があるのを確認する。
しかし、その瞬間、また一本の矢がダイスケに向かって跳んできた。
「!?」
ダイスケは少し体をずらし、矢を避ける。そして、右をかざし呪文を唱える。
「魔法の矢よ!貫け!マジックアロー!」
ダイスケの手のひらから一本の矢が勢いよく跳んでいき、撃ってきた人影に刺さる。
跳んできた矢よりも何倍もの速さだ。避けきれるわけがない。
「ぐっ!」
人影は後ろによろけ、その場を瞬間移動するように去る。
「逃げたか・・・」
ダイスケはそういうと俺の方を見る。
「ケイタ!大丈夫か?」
俺は刺さった矢を見せながら言う。
「大丈夫だ、とりあえず」
リナは焦りながら心配してくる。
「ちょっと待って、治癒魔法かけるから」
俺たちは長い間、異世界にいた為、戦闘には慣れている。
ダメージを追っても救急車を呼ぶなどの発想はなく、魔法やアイテムで治療しようという行動に出てしまうようになっていた。
「ヒーリングライト」
リナは両手を俺の負傷した腕に向ける。呪文を唱えるとそこから温かい光が出て、一瞬で痛みと刺さった矢が消える。腕が折れたり千切れたりしなければたいていの怪我は治せる魔法だ。
「ありがとうリナ」
俺はリナにお礼を言うとリナが微笑みながらうなずく。
ダイスケは割れた窓に向かって何か魔法を唱える。
「破損した物質を修復せよ、リペアル」
割れた窓と破片が一瞬にして元に戻った。
「ケイタ、リナ、すぐにここを離れよう。」
俺とリナはダイスケの意見に賛成し、すぐに準備を始める。
リナは異世界の時とは違う西洋風の服装ではなく、一般的な純白なフリル付きのワンピース姿になって俺達と合流する。胸には大きな黒いリボンが付いていてなんか可愛い。
俺たち三人はマンションの一階に下り、ロビーの前に停めてある車に向かう。
しかし、予想外な事に車の前にはパトカーが止まっていた。
そして、車の中を覗き込むように警察官二人が立っていた。
「あ・・・」
俺とリナは立ち止まる。
どうしようと少し焦るがダイスケがそのままパトカーの方へ行き堂々とした態度で車の横にいる警官二人に話しかける。
「ここは駐車禁止でしたか?」
警察官二人は物静かにこちらを向き、話始める。
帽子のつばで目元が隠れていて表情がわからない。
「ええ、ここは駐車禁止でして・・・」
「おっとそれは申し訳ないことをした、すぐに退きますので」
ダイスケが警察官二人に平謝りをする。だが、警察官二人は表情を変えずに淡々と話し始める。
「いいえ、そこはそんなに問題ではないです」
「は?」
ダイスケは足を止める。
「問題なのはあなた方「勇者一行」なのです」
警察官二人はそういうと腰につけている拳銃を取りだし、ダイスケと俺に銃口を向けてくる。
「お前ら、もしかして魔王の!?」