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ステータスの引継ぎ

俺はダイスケから魔王たちが元の世界にも来ている事を知らされ驚いている。

「どうして!?魔王は倒したはず!」

「そう、確かに僕たちは魔王を倒した。しかし、この前、変な事件が起きた。」

ダイスケは自分のスマートフォンを取り出し、何やら操作し始める。そして、ダイスケのスマートフォンから何か声が聞こえた。

「はぁ…はぁ。俺を捕まえても無駄だ。いずれ魔王様が全て支配する!しかも、勇者がいない!好都合だ!クケケケケケケ!」

音声はここで止まった。

「これは、半年前に僕がこの世界に帰ってきて間もない頃だった。大宮市のコンビニで強盗事件があり、警察と特殊部隊が対応に向かったんだが全滅した。」

「警察が全滅!?」

「そうだ、全滅だ。この男は初級魔法が使えていた。当然、この現実世界でも魔法が使える人間はいないから対抗できる者がいなくて全滅した。それで僕が直接現場に行って賢者の力を使って取り押さえた。」

「魔法が使えるのか!?てかなんでお前に応援要請来てるんだよ」

ダイスケはスーツの胸ポケットからテレビドラマとかでよく見る手帳を出してきた。

「実は、僕、警察庁の人間なんだ」

エリートかよ!いや、何かしらのエリートなんだろうなとは思っていたが警察庁かよ。

「優秀すぎだろお前」

「まあ、そんな役職とかは置いといて・・・今大事なのはこの国に再び魔王の手が伸びているという事実だ」

「確かにダイスケの言う通りだ。でも、まず俺は魔法が使えている事に驚いている」

「なんだケイタ君。まだ自分の力を確認していなかったのかい?」

「ああ。俺も魔法は使えていたが光系の魔法がほとんどだからな」

「なるほど。日常生活じゃあ使わないから気が付かなかったのか。ちなみに僕は君の考えている事も読み取れるよ」

「え?」

「さっき、案内してきた女の子。君にとってはお尻が好みだったみたいだねぇ」

ダイスケはにやっと笑いながら言う。

「ちちちちち違う!決してそんな事は!あ!さてはお前、魔法が使えるとかいって嘘だな!?」

その時、ダイスケの目の前に巨大な炎が舞い上がった。

「あちっ!」

だが、炎は一瞬にして消えた。

「嘘ではないよ」

ダイスケは再び真顔でケイタに言う。

「確かに…」

「僕の力がそのまま使えるという事はこの世界に帰ってきた人全員のステータスがそのまま引き継がれていることだろうね。ただ、装備品やアイテムは無いだろうけど」

「全員…俺たち以外にも帰ってきた人達…強盗の犯人もか」

「アレは違う」

ダイスケは即答で否定した。

「捕まえた強盗犯の身元を調べたが生まれも出身も普通の学生だった。それに僕たちが戦ってきた相手は人間の身体をしているものはいなかった。人型の魔物はいたが」

確かにダイスケの言う通りだ。じゃあ、なぜこの世界の人間が魔王のことを知っている?

気になる。考えれば考えるほど謎が深まる。

「推測だけど・・・。この世界に来ている魔王たちはもしかすると魂だけかもしれない。全てがそのパターンに当てはまるとは言い切れないがこの強盗犯を参考にするとそういう推測になる。何らかの影響で異世界にいた生物の魂がエクスポートされ、この世界の人間にインポートされてしまった様に感じる」

「確かに。それならば魔王も誰かの身体に乗っ取っているという事か」

「そうなるね…」

なんとなく状況が掴めてきた所で俺はあることに気づく。

「捕まえた犯人というのは今、どこにいる?」

「この近くの警察署の地下留置所で眠らせている。もちろん、催眠魔法で」

「その犯人に会わせることできるか?」

ダイスケは待っていましたかの如く、眼鏡をクイッと上げ、笑顔で言う。

「ご案内しまーす」


俺とダイスケは、近くの警察署に行った。

何も悪いことしてないけどやっぱ警察署に行くのはなんか緊張するな。

ダイスケを先頭に俺は警察署内を歩く。異世界では俺がいつも先頭だったからなんか違和感あるな。

そんな事を考えつつ、歩いているとダイスケは地下の奥にある部屋の扉の前で立ち止まり、見張りらしき、警察官二人に話しかける。

「西和泉だ、この前捕まえた犯人を尋問する」

ダイスケが真顔でそう言うと見張りの警察官二人はビシッと敬礼をするとその場を離れる。

「はっ!どうぞ!」

ダイスケが警察庁の人というのは本当のようだ。

俺は見張りの警察官の横を通り、ダイスケと一緒に部屋に入る。

中は薄暗く、頑丈な透明の板が張られている向こう側に一人の男が椅子に固定されながら眠っていた。

これが強盗犯か。

俺はその男をじっとみつめるとなんとなくだが黒い煙の様なオーラのようなものがみえた。

「あれが犯人か」

「そうだ。今から魔法を解く」

そうダイスケが言うと更にボソッと呪文を唱える。

「スリープオフ」

椅子に縛られている犯人の身体が動き出し、顔が上がる。

人間の顔だが、表情が狂犬のような恐ろしい顔になっている。

「・・・なんだ賢者・・・俺を起こして拷問でもする気か・・・ケッ。俺は口は割らないぜ。ん?横にいるのは誰だ?フン!まさか俺に弁護士でもつけようってか?」

「悪魔風情が弁護士というこの世界の言葉をよく知っているな」

ダイスケが挑発的に言う。

「コイツの身体に入ったときにコイツの記憶が全部染み込むように伝わってきたんだよ。普通の生活してたのにこんな大罪犯しちまってよ!クケケケ」

強盗犯の魔物はにやにやと悪魔の笑みを浮かべながら言う。

「そういうことか。やはり異世界からエクスポートされてきたんだな」

ダイスケはボソボソと何かを考えながら言う。その様子に強盗犯の魔物は苛立ちを感じ始める。

「おい!何ブツブツ言ってんだよ!この後どうするんだ?俺を死刑にでもするか!?コイツも道連れだなぁ!」

魔物は調子に乗りながらダイスケを挑発する。どうやら乗っ取っている人間の身体を人質にしているようだ。何もできまいとニヤニヤと余裕の笑みを浮かべているとダイスケは俺の方を向き何か言ってきた。

「そうだ、ケイタ君。ホーリーライトを唱えてくれないか?」

「え?」

ホーリーライト。俺が異世界で使っていた勇者のみが扱える魔法だ。

邪悪なオーラやゴーストタイプの魔物に効果が絶大だった魔法。

「邪悪なオーラやゴーストを消せたはずだからもしかしたらこの人の身体を乗っ取っている魔物の魂のみを消せるかもしれない」

ダイスケがそう説明すると俺は納得した。

出来そうな気がする。いや、出来る!

俺はよくわからない確信を持ちつつダイスケの前に立ち、魔物をみつめる。

すると、魔物は先ほどまで浮かべていた余裕の笑みが消え、何かを察したかのように急に焦り始める。

「ま、まさかお前・・・勇者!?」

「ああ、そうだ。異世界でお前達の親玉を倒した勇者だ!」

「ま、まじかよ・・・話が違うぜ・・・勇者はこの世界には帰ってきてないって情報が・・・」

「ん?誰がそれを言っていた?」

俺は魔物に問い詰めると魔物は焦る。

「そ、そいつはこの口が裂けても言えないぜ…」

「口が裂ける前にお前の魂が裂けるぞ」

俺は右手の平を魔物に向ける。

「わわわわかった!わかった!…ルシファー様だ!ルシファー様がこの前、言ってたんだ」

ルシファー。魔王軍にいた頭脳派の幹部か。確かあいつも俺が倒したはず。

この世界に転生されているのか。

「ルシファーか。あいつ生きてるのか。」

「ああ、向こうの世界でお前に倒された後、こっちの世界に魂が流れ着いたって言ってたぜ」

流れ着いた?もしかすると倒された魔物は異世界からこちらの世界にたどり着くのか?だとしたら他の魔物達も…。

「ケイタ君。どうやら君と僕の考えが一致したようだね」

お前、ダイスケ。今俺の頭の中無断で読み取っただろ。そこで無駄な魔力使ってんじゃねぇよ。

「お前…まあ、そういう事なんだろうな…。」

「つまり、僕たちの冒険はまだ終わっていないということだね。」

ダイスケは真顔でそういうがどこか楽しそうだった。

「そうだな。」

俺とダイスケが会話をしていると魔物がまた苛立ちをみせる。

「おい!二人で盛り上がるな!!」

「おっと、すまんな。色々とありがとう」

一応、魔物に情報提供の礼を言う。

「でもよお。なんで勇者が戻ってきてるんだ?まさかルシファー様がミスをした?まさかな…」

魔物は少し不思議そうにしながらブツブツ言う。

俺はそんな魔物を見ながらこう言う。

「教えてやろう。」

俺は右手の平を魔物に再び向け、目線を魔物にビシッと向ける。

ダイスケはその様子に「お?」という感じで見る。

「俺はさっきこの世界に帰ってきた。この世界では勇者業はないから地味に派遣でもしながら暮らそうと思っていた。そして、リナをみつけ結婚しようって思ってた。

・・・そして決めた・・・」

魔物は何かを感じたのか急に焦り始める。

「おいおいおいおい、まさか」

「俺は・・・再び勇者になる!」

手のひらから強い光が出始め、魔物に向かって放たれる。

「魔の者よ!勇者の光によりその邪悪な心を浄化せよ!ホーリーライト!!!」

パアアアアアっと強い光が辺り一面に広がり、魔物の身体も覆いつくす。

「やめろおおおおおおおおおおおお!ルシファーーーーーーさまぁあああああああああああ!」

魔物の断末魔と共に魔物が住み着いていた人の身体から黒い煙の様なオーラが溢れ出し、消えていった。

やがて、光も消え、視界が戻る。

魔物が取り付いていた男は眠っていた。

「魔物の気配が消えた」

俺は魔物が男の身体から消え去った事を確認した。

ダイスケも感じ取っていた様だ。

「これでこの世界での魔王軍との戦い方がわかったね」

ダイスケは嬉しそうにそう言うと俺は頷いた。

「ああ。ルシファーを探そう」

俺とダイスケは次の標的をルシファーにした。

そして、警察署を出る。

外に出るとダイスケが急にいつもの口調に戻っていた。

「いやあ、ケイタ君が戻ってきてくれて本当によかったよぉ!」

「うん、まあ。また魔王探しが始まるけどな…それよりリナがどこにいるか知らないか?」

唐突にリナの話をダイスケに振る。

「ん?リナちゃんかい?それなら北本に住んでるよ」

即答かよ。

「は!?なんでお前知ってるの!?」

俺は驚きを隠せず早口でツッコミを入れる。

「いやあ、異世界にいた時にねリナちゃんの生徒手帳を見せてもらったことがあってねぇ。それで警視庁の住所録を使って探さしてもらったよぉ」

気持ち悪!お前やっぱ警察じゃなくて犯罪者だわ!

・・・でも、コイツがいなかったら三千里の旅に出てたかもしれない。

「お前やっぱ犯罪者だろ・・・まあ、場所がわかっただけ大収穫だわ。」

「それじゃあ今から君のフィアンセい会いに行くかい?」

ダイスケは微笑みながら眼鏡をクイッと上げると俺たちの目の前に黒塗りのセダンの車が停車する。

「そうだな」

俺とダイスケは車の後部座席に乗る。

「てかお前マジで偉いんだな」

俺はダイスケの地位の高さに未だに慣れずにいた。

「うんまあ、頑張ったからねぇ。偉い?エロい?うん!似てるね!」

似てねーよ。

こうして、俺たちを乗せた車は北本に向かったのだ。


次回、リナと再会と報酬です

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