第22話 ボケとしてのプライド
カオスがホームシックにかかっていた頃、魔王城ではジアがノアに事情を説明していた。
「えと……じゃあとりあえずは改めて自己紹介するね。あたしの本当の名前はディア・ボス・ティーニ。現大魔王の娘で、次期魔王……みたいな」
「ディアボスティーニ? 何だか集めたくなりそうな名前じゃな?」
「うん。それもよく言われる……んで、あなたの本当の名はノア・ボス・ティーニ。同じく大魔王の娘であたしの実の妹だよ」
「んなっ! ノアボスティーニ……ノアボス……ティー……余だけ何も似てる名前が無いではないかっ!」
「いや、引っかかるとこそこ⁉︎」
「まあそんな戯言はいい! 余はあやつらの元に帰るぞ!」
「ええっ⁉︎ 帰るって、ノアちゃんのお家はここなんだよ?」
「たわけた事を言うな! 余は魔王ノアールで男なんじゃぞ⁉︎ 貴様の妹な訳が無かろう! それにそもそもノアという名はウルの奴が付けたものじゃ。それが何故余の本当の名になるんじゃ! 偶然にしては出来過ぎじゃわい!」
「それは逆だよ? ノアちゃん。ノアという名をもじってノアールにしたんだよ。だからノアって名前を思い付いても全然不思議じゃないよ」
「むぐ……い、いや、名前はともかく、そもそも余は男じゃと言うとろうが!」
「ねえ……ノアちゃんの固有能力って何?」
「え、英雄召喚じゃ! 貴様も知っておろう!」
「うん。じゃあ、男の魔王ノアールの姿が英雄召喚によって変わった姿だったとしたら?」
「な、なんじゃと⁉︎」
「父上によって記憶を操作され、英雄召喚によって魔王ノアールの姿になった……それが真実だよ」
「な……」
頭がパニックになり、思考が停止してしまうノア。
「えと……あの……いや、もしそれが真実だとして、そのクソ親父は何で余の記憶を操作してまで魔王に仕立て上げたんじゃ⁉︎」
「クソ親父は酷いぞ、ノアよ」
「なっ⁉︎」
ふたりの会話を聞いていたであろう男性が部屋に入って来る。
「小さい頃のお前達姉妹はいつもベッタリで、全く魔法の鍛錬をしようとしなかった。だからふたりの記憶を操作し、ディアは人間界に送り、ノアは魔王ノアールとして生まれ変わらせたのだ。そうすれば良い経験になると思ったからな。そしてふたり共十分な強さに達したと判断し、先にディアを呼び戻し、今回ノアを連れ戻したという訳だ」
「父上……」
「長々と説明しおって! そうか……貴様がルイボスティーとやらか!」
「いやルイボスティーでは無い。ルイ・ボス・ティーニだ」
「そんな事はどうでも良いわ! よくもこの魔王ノアール様を誘拐などしおって! じゃが、貴様さえ倒せば全て収まるという寸法じゃな! ならば余が引導を渡してくれるわ! 覚悟せい!」
「え⁉︎ いや、さっきの我の説明聞いて無かったのか?」
「話が長過ぎて全く耳に入って来んわ!」
『英雄しょ……』
ノアが英雄召喚を発動しようとした瞬間、一瞬にして間合いに入った大魔王がノアに当て身を入れて気絶させる。
「なっ⁉︎ は、速い……」
「英雄召喚を使われると、場合によっては中々厄介だからな」
「ノアちゃん……」
気を失ったノアをベッドに寝かせる大魔王。
「聞いて無かろうが納得出来なかろうが、記憶を戻せば簡単な話だ」
眠っているノアをジッと見つめた後振り返り、急にジアに泣き言を言い始める大魔王。
「ねえ聞いたディアちゃん⁉︎ ノアちゃんったら我の事をクソ親父だなんて言うんだよ! 酷くな〜い?」
「いやオネェかっ!」
大魔王がオネェになっていた頃、未だにふたり揃って動けないセラとグロス。
「んもぉ〜! ふたり揃って動けないんじゃ意味無いでしょぉ! そりゃあ他にお仲間が居るんなら凄く有効な能力ですがぁ、一対一では全く無意味ですよぉ〜!」
「うぐっ。ま、まあ実はおいらもそれはちょっと思ったけどよ」
「だったら能力を解いて正々堂々戦いましょうよぉ〜! いやそもそもヒーラーの私がそんなに怖いですかぁ⁉︎」
必死に訴えるセラ。
だがグロスから意外な答えが返って来る。
「ああ怖いな……」
「え⁉︎」
「本当に治癒魔法しか使えないんだったら、それは相手にバレないように誤魔化す筈だ。なのにあんたはその弱点を敢えてさらけ出している。そりゃあ何か隠し球があると思うさ」
グロスの言葉に、うっすらと笑みを浮かべるセラ。
「ンフフ。お馬鹿なように見えて中々鋭いですねぇ? その通りですよぉ。油断させて射程内に入って来た所をドカン! てやるつもりでしたがぁ、見破られたんじゃあ仕方ありませんねぇ」
「また敢えて作戦をバラした……やはり怖い怖い」
そしてまた、動けないふたりの間に沈黙が流れる。
「いや、だからってこのままだと結局何も変わらないでしょお! ……もおっ! 私にツッコませないでって言ってるでしょお‼︎」




