第17話 女性に体重の事を言ってはいけない
メルクがマッドを土下座させていた頃、メリア対シードの戦いも決着しようとしていた。
座り込み、巨大なスイカを抱えながら大きなスプーンで必死に食べているシード。
「ングッングッグッ! グエッ! ゲホゲホ! タ、タネが気管に入っただ! オエッ! ゴホゴホ!」
「だ〜いじょ〜ぶか〜?」
そんな様子を少し離れた場所から、オッサンの様にあぐらをかいて座り込み、顎を手で支えながら呆れた顔で見ているメリア。
「だ、大丈夫ダス。しかしあんた、オラの能力の正体を完全に見破ったのに、何故オラが食べるのをじっと待ってくれてるだ? 今攻撃したら確実にオラを倒せるのに……」
「ん? 攻撃しても良いのか?」
「いや! やっぱり待ってくれダス!」
「今は引退しているが、私の父は王国の騎士でな。特に騎士道精神の強い人だった」
「そ、そうなんダスか」
「その影響もあって、無抵抗な相手を攻撃する事は私の騎士道精神に反するのだ」
「なるほど。ではオラがあんたを攻撃するまでは待っていてくれるという事だな?」
「普段ならな! だが今は盟友であるジアを救う為に来ている。余りに時間がかかる様ならば構わず攻撃させてもらう!」
「も、もうちょっと待つだー‼︎ だ、だがあんた! ジア様のお知り合いだべか?」
危機を感じたシードが精一杯時間稼ぎを始める。
「昔、共に勉学に励んだ仲だ。将来は王国の為、共に戦おうと誓い合ったのにあの馬鹿者がっ! 私に何も告げずにイキナリ姿を消しおって!」
怒りの表情に変わったメリアがゆっくりと立ち上がる。
「そそそ、そうなんダスか〜。ジア様と仲良しだったんダスな〜」
メリアの殺気にビクビクしながら、更に時間稼ぎをするシード。
「仲良くなど無い!」
槍を地面に激しく打ち付けると、槍から放たれた電撃が周りの木に飛び散った。
「ヒイイー!」
「明らかにアイバーンの事が好きな筈なのに中々告白もせずぬるま湯に浸かりおって! わ、私だってアイバーンの事が……そんな事はどうでも良い‼︎」
更に強烈な電撃がほと走る。
「あ、あんたが勝手に言ったんダス〜」
「あの馬鹿者はそんなアイバーンにすら何も告げずに出て行ったと聞く。魔族だから? 関係あるかああー‼︎」
どんどん怒りが増して行くメリアが再び槍を地面に打ち付けると、そこに魔法陣が現れる。
「な、なんダス⁉︎」
「魔装‼︎」
メリアが叫ぶと、魔法陣より電撃が立ち昇りメリアの全身を包み光を放つ。その光が消えると、全身に三國志を思わせる鎧を纏ったメリアが現れる。
三國志風の鎧に龍を象った装飾が施された槍を持つその姿は。
「関羽ダスー‼︎」
「誰が関羽だ!」
痺れを切らしたメリアが身体から電撃を発しながらゆっくりとシードに近付いて行く。
「や、や、やばいダス! 早くスイカを食べきらねぇと!」
必死に残ったスイカを食べるシード。
「よし! 全部食べきったダス! これで恐れるものは何も無いダス! 喰らうダス!」
今までより遥かに威力のあるタネを飛ばすシード。
「フンッ!」
そのタネを槍でいとも簡単に弾き飛ばすメリア。
「んなぁ⁉︎」
「この程度か……これなら避けるまでも無いな」
「ま、まだまだー!」
連続でタネを飛ばすシード。
だがそのタネを、全く無防備のまま鎧で受けながらゆっくりと歩いて行くメリア。
「な、何で避けも防御もしないダスー⁉︎ このおなご、恐過ぎるダスー!」
メリアの迫力に気圧され後ずさりするシード。
「だ、だが! いくら頑丈な鎧でも、ダメージを受け続ければいつかは壊れる筈ダス! タネの一念岩をも通すダスー!」
更に連続でタネを飛ばすシード。
やはりそれを無防備で受けるメリア。
「愚かな……よく見てみるがいい。もっとも、見えたらの話だがな」
「な⁉︎ どういう事ダス?」
「いくら私が傲慢でも、敵の攻撃をわざわざ無防備で受け続けるなどという馬鹿な真似をする訳が無いだろう」
シードが飛ばしたタネはメリアの鎧に当たる前に、全身を覆う薄い電撃により全て蒸発していた。
「全然当たって無いダスー‼︎」
四つん這いで項垂れるシード。
シードの寸前で立ち止まるメリア。
「どうだ? 降参するか? 降参するならば見逃す……まだやると言うのなら、このまま槍で貫く」
「フフフフ……これで勝ったつもりダスか?」
「何⁉︎」
「まんまと射程内に入ったダスな! 喰らうダス! これがオラの奥の手ダス!」
シードが叫んだ瞬間、メリアの足下から無数の植物枝が伸びてメリアの身体を上空へ弾き飛ばす。
「何いっ⁉︎」
「オラの能力がただタネを飛ばすだけと侮ったダスな! この戦いが始まる前に準備をしていたダス! オラのもうひとつの能力は地面に埋めたタネを超高速で育成する事ダス! そのまま地面に叩き付けられてペシャンダスー‼︎」
空高く飛ばされたメリアの身体に無数の枝が絡み付き、凄まじい勢いで地面に引き寄せられる。
激しい爆音と共に地面に落下し、砂埃が舞い上がる。
「完全に落ちたダスな。しかしめちゃくちゃ凄い音がしただが、何だったんダス? あの娘ご、見た目以上に重かったんダスかな?」
勝利を確信して笑うシード。
「誰が重いって〜」
「ドキッ! ダス!」
だんだんと晴れて来た砂埃の中から、全くの無傷なメリアが現れる。
「んなああー‼︎ な、何故無傷なんダスかー⁉︎ 枝を絡ませて叩き付けたから、例え飛翔魔法を使えたとしても逃げられない筈ダスー‼︎」
「私は電撃使い……私の身体と地面に対極となる電気をまとい弾き、衝撃を最小限に抑えたのだ」
「そ、そうか……だから地面に激突する瞬間、あんな爆音がしたんダスか。な、なんて事ダス……こ、これは相性が悪過ぎたダス……」
「ところで貴様……私の体重がどうとか言って無かったか?」
「うにゃああー‼︎ よ、鎧が重いっていう意味ダスー! べ、別にあんたが見た目より重そうだなんて言って無いダスー!」
メリアの全身から凄まじい殺気が溢れ出す。
「こ、降参するダスー‼︎ もうオラに戦う意志は無いダスー‼︎」
「それで……許されると思うなああー‼︎」
メリアより放たれた電撃が、シードの身体を黒焦げにした。
「や、やっぱり恐いおなごダス……ガクッ」
メリアVSシード
メリアの圧勝




