第34話 悪い予感は当たるもの
見事魔族を討ち倒した勇者パーティーを讃える観客達。
「やったー‼︎ 魔族を倒したー‼︎」
「さすがは勇者パーティーだー‼︎」
「この調子で大魔王ディアも倒してくださーい‼︎」
そんな中、意味深な発言をする大人なノア。
「あ、みんなに言っとくね! これからちょっと大変な事が起こるけど……お願い、何があってもノアちゃんを信じてあげて」
「え⁉︎ 大変な事? それってどういう……?」
少し哀しげな表情をした後、光に包まれる大人なノア。
「待って‼︎ まだ話は‼︎」
そして、元に戻ったノアが目を覚ます。
「む? どうやら無事に勝てたようじゃの⁉︎」
「ノアちゃん……え、ええ……」
元に戻ったノアを見て、色々疑問はあるものの、まずは負傷者の手当を始めるニーナ。
(大変な事ってのが何の事かは分からない。すぐにでも魔族の追撃が来る可能性だってある。なら、今の内に少しでも戦力を増やしておかないと)
そんなニーナを見て、同じく負傷者の治療を始めるノア。
『ホー。自ら人助けをするとは、成長したな? ノア』
(む? これだけの死に損ない共を治療すれば、JPを大量ゲットするチャンスじゃからの)
(ホッ⁉︎ ま、まあ動機は不純だが、人助けには違いないから良しとするか……)
近くへ来たニーナに声をかけるクラフト。
「お、おーいニーナ! 俺様にも早く治癒魔法かけてくれー!」
「あんたを治癒したってもうJPを使い果たしてて戦力にならないでしょ⁉︎ そんな役立たずは後回しよ!」
「ひ、酷ぇ! ん? てか、戦力って……もう戦いは終わったじゃねぇか⁉︎」
「バカね! 魔族本隊の追撃がすぐ来る可能性もあるでしょ⁉︎」
「マ、マジか⁉︎ そう言やぁ、まともに戦えそうなのはノアちゃんとジアちゃんくらいか? 確かに今攻め込まれたらヤベーな」
(ん⁉︎ この気配……)
何かを感じたジアが、ノアの側に寄って来る。
「ノアちゃん。あたしも何か手伝うよ。治癒魔法とかは使えないけどさ」
「む、そうか。なら、負傷者共の状態を見て、死にかけてる奴から教えてくれるかの?」
「ん、分かった」
『ホー。言い方』
(……しかし、こんなノアが本当にあんなノアになるのか? 何か変な物でも食べたのか?)
負傷者達の治癒をしていると、何か異様な気配を感じて辺りを見渡すノア。
「何じゃ? この気配は?」
同じく気配を感じたニーナにも、緊張が走る。
「ま、まさか本当に来たって言うの⁉︎」
その時闘技場の空間に、突如真っ黒い巨大なゲートが開く。
「な、何だありゃ⁉︎」
その中から現れる3人の男達。
その瞬間、強大な魔力に押し潰されそうになる観客達。
「な、何だこの魔力は⁉︎」
「い、息が苦しい……」
「おぅおぅ、小娘隊は見事にやられとるわい。情けないのぅ」
年老いた男性の言葉をなぞる少年。
「情けない情けなーい! アハハハハ!」
「うるせーぞガキ。はぁ、めんどくせーなー」
その少年の後ろから気怠そうに現れる男性。
「な、何よあんた達⁉︎」
ニーナの質問を無視するかのように口を開く老人。
「さて、お戯れが過ぎますぞ? ディア様。そろそろお戻りくだされ」
「ディア⁉︎」
老人の口から出たまさかの名前に、緊張感に包まれる闘技場。
「オ、オイニーナ! あのジイさん、今ディアって言わなかったか⁉︎」
「私にもそう聞こえたわ」
「どういう事でしょうか? まさかこの闘技場の中に大魔王ディアが居ると?」
動揺しているニーナ達。
そしてその答えはすぐに分かった。
「あーあ。もう少し遊びたかったんだけどなー。でもまあ、ノアちゃんも見つかった事だし、良しとするかー」
その声の主は何と、ジアであった。
そしてその腕には、気を失っていると思われるノアが抱き抱えられていた。
「え……ま、まさかジアちゃんが……?」
「オ、オイ! 何ふざけてんだよ⁉︎ 今はそんな冗談で笑える状況じゃ無ぇ事ぐらい、この俺様でも分かるぞ⁉︎」
そんなクラフトの言葉を遮るように、残酷な真実を告げる老人。
「無礼だぞ人間‼︎ このお方は我ら七星魔天の主、大魔王ディア様なるぞ‼︎」
「ディア様ディア様ー‼︎」
「なん……だと……⁉︎」
『なななな何とおおおー‼︎ 勇者パーティーの一員であるジアちゃんが、大魔王ディアだったああー⁉︎ こ、これはいったいどういう事なんだああー⁉︎ いや確かにちょっぴり名前が似てるなーとは思っておりましたがー‼︎』
ジアに詰め寄るニーナ。
「どういう事、ジアちゃん⁉︎ あなた……本当に大魔王ディアなの?」
少し哀しげな表情で応えるジア。
「うん、そうだよ。あたしは大魔王ディア……魔族だよ。隠しててゴメンね」
「分からないわ。あなたは何がしたいの? 私達勇者パーティーを抹殺するのが目的なら、いくらでもチャンスはあった筈よ⁉︎」
「ん〜、正直言ってあなた達人間があたし達魔族に危害を加えない限りは、別に人間達なんてどうでもいいのよね〜」
「じゃあいったい何の為に?」
「あたしがこっちに来た理由はただひとつ。ノアちゃんを魔界に連れ帰る為だよ」
「ノアちゃんを⁉︎ いやでも、分かってるの⁉︎ ノアちゃんは……」
ノアが元魔王ノアールである事を周りの人達に知られるのを避ける為、うまく質問出来ないニーナ。
「よく分かってるよ。ノアちゃんはあたし達と同じ魔族で元魔王ノアールで……そして、あたしの妹なんだからさ」
「な⁉︎ いも……うと……⁉︎」
衝撃の事実に絶句するニーナ達。
しかしニーナ達以上に動揺する観客達。
「い、今ノアちゃんが魔族って言ったのか⁉︎」
「いやそれよりも、元魔王ノアールって言わなかったか⁉︎」
「どういう事だ⁉︎ 魔王ノアールってあんな可愛い女の子だったのか?」
「いや、問題はそこじゃ無いだろ⁉︎ もしそれが本当だとしたら、何で魔王ノアールが勇者パーティーの仲間になってんだよ⁉︎」
「勇者パーティーが俺達を騙してたのか?」
動揺する観客達を見て、焦りの色を隠せないニーナ。
(マズいわね。ノアちゃんの正体がバレた。それどころか、このままでは私達の立場まで危うい……いやそれ以前に、今の消耗した私達ではこの場を生き残る可能性すら無いに等しい。どうする……?)
「ジアちゃんが大魔王ディアで、ノアちゃんがその妹……」
「クラフト……あんたまで?」
「魔王ノアールって、元から幼女だったのか⁉︎」
「いやそっち⁉︎」




