第2話 異世界には付き物です
ノア達と別れ、自分の部屋に戻ってベッドの上に仰向けに寝転んでいるクラフト。
「ノアにウル、か……フッ……」
何やら意味深に笑うクラフト。
「いや〜、それにしてもノアちゃんか〜! めちゃくちゃ可愛いかったな〜! お友達になってくんねぇかな〜!」
布団を抱きしめながら身悶えるクラフト。
やはりただのロリコンだったようだ。
「ヒッ!」
同じく部屋に戻っていたノアが身震いをする。
『どうした?』
「今、強烈に寒気を感じたんじゃが、何者かの魔法攻撃じゃないのか?」
『ホッ。湯冷めでもしたんだろ?』
そして一夜明けて。
食堂で朝食を取りながら、今日の予定を考えているノアとウル。
(さて、どうするかの〜。行きたくはないが、また昨日の店に行ってJPを稼ぐかの〜)
とても嫌そうなノアに、ウルがある提案をする。
『ホウ。ならば、クエストを受けてみたらどうだ?』
(クエストじゃと?)
『そうだ。とは言ってもひとりで行くのではなく、誰かと一時的にパーティーを組んで、お前は魔法でメンバーのサポート役に徹するのだ。感謝により増えるJPが魔法で消費するJPを上回って行けば、どんどんオーラを溜めていく事が出来るという訳だ』
しかしウルの提案に反論するノア。
(確かにうまい方法じゃが、忘れたのか? 余のJPは全て消えてしまったのじゃろう? どうやって魔法を使えと言うんじゃ)
『ホウ。お前が調子に乗るといけないので黙っていたんだが』
(な、何じゃ?)
『実は昨日クラフトと握手をした時、お前のJPは60まで回復していたのだ』
「何じゃとおお⁉︎」
驚きのあまり、声に出してしまうノア。
「な、何だ何だ⁉︎」
周りに居た客達が、その声にざわつく。
頬を赤くしながらメニューで顔を隠すノア。
「し、失礼したニャン!」
(どういう事じゃ? まさか奴たったひとりから、それ程のオーラを受けたと言うのか?)
『本来オーラとは、精神力や肉体が強い者程発するオーラの量も多いものだ。クラフトは俺が認めた程の歴戦の勇士。発するオーラも並大抵ではない。だからこその先程の提案だ』
(クエスト、か?)
『ホウ。クラフト程ではないにせよ、冒険者であれば一般市民よりも平均的にオーラは強い。よりJPを稼ぎ易いという訳だ。これはまあ、俺の経験上だがな』
少し呆れた表情でウルを見るノア。
『何だ?』
(いや〜。勇者ともあろう者が、意外に打算的なんじゃな〜と思っての)
『何の見返りも求めずに人助けをする人間なんて、ほんのひと握りだよ』
(世知辛い世の中じゃのう)
ウルの提案に同意したノアが、残ったお金で転移石や回復薬等を購入してから、冒険者ギルドに向かって歩いていた。
左肩には勿論、ウルが乗っている。
(しかし冒険者達が集まるギルドとなると、昨日のあやつもおるのではないのか?)
『クラフトか? 可能性はあるな』
(出来れば、会いたくは無いんじゃがのう)
『お前の正体さえバレなければ問題ない』
(いや、それもあるんじゃが……)
『何だ?』
(あやつのあの人を舐め回すように見てくる目が、どうも苦手でのう)
『お前の見た目が、奴のどストライクだからな』
(気持ちの悪い事を言うでないっ!)
『心配するな。クラフトは確かにロリコンだが、あくまで遠くから眺めているだけだ。決して触れたりはしない』
(昨日、おもいっきり手を握られたぞ?)
「ホッ⁉︎」
顔を背けるウル。
(オイ。何とか言わんか)
自分の背中が見えるぐらいに、更に首をひねるウル。
(一周する気かっ⁉︎)
クラフトに警戒しつつギルドに到着したノア達。
ギルドの中を見回し、クラフトが居ない事を確認するノア。
(奴は……おらんようじゃの)
『あいつは基本、夜型だからな。今はまだ寝ている頃だろう』
(そうか。ならばさっさと済ませるぞい。どうすればよいのじゃ?)
『まずはカウンターに行って、冒険者名簿に登録するんだ』
(うむ)
『何度も言うが言葉使いと、何より魔王である事を悟られないように気を付けるんだぞ?』
(分かっておるわ! 何度も言うでないっ!)
カウンターへ行き、受付嬢に話しかけるノア。
「余は大魔王ノアーああああーいっ‼︎」
当然のウルズクローが炸裂して、カウンターの前に座り込むノア。
『今言ったばかりだよな⁉︎ わざとか⁉︎ もしかしてわざとやっているのか⁉︎』
(緊張してパニックになっただけじゃ〜)
「お嬢ちゃん、大丈夫?」
受付嬢が心配して覗き込む。
治癒魔法を自分にかけ、何事も無かったようにスッと立ち上がるノア。
「問題無い。慣れておる」
『いや、慣れるなよ』
そして、ノアの猫かぶりモードが発動する。
「私はノア! ギルドに来るのは初めて。だから登録お願いニャン!」
しかしノアのその幼い見た目に、受付嬢は戸惑っていた。
「え⁉︎ 登録? お嬢ちゃん、歳はいくつ? ここは子供の来る所じゃないわよ?」
子供扱いされ、怒るノア。
「貴様! 貴様も余を子供扱いするかっ! 余は大魔王にゃああああー‼︎」
再びウルズクローをくらい、座り込むノア。
『お前には学習能力が無いのか?』
(ぐぬぬぬぬぬー)
再び治癒魔法をかけ、立ち上がって来るノア。
「じょ、冗談ニャン! 私、こう見えて20歳! だから登録してニャン!」
「えっ⁉︎ あ、ハイ。で、ではこちらの用紙にご記入をお願いします」
「分かったニャン」
ノアの様子に戸惑いながらも、仕事を進める受付嬢。
「書けたニャン」
「ハイ、ありがとうございます。では確認させて頂き……」
途中で固まる受付嬢。
「もう! お嬢ちゃん⁉︎ ふざけるんならお家に帰りなさいね!」
「ホウ⁉︎」
気になったウルが用紙を見ると、そこに書かれていたのは。
名前ーーノア
年齢ーー昨日産まれたばかり
性別ーーおそらく人間のメス
住所ーー魔王城
職種ーー大魔王
登録目的ーー人間を下僕にして、オーラを搾り取る為
『このおおー! 大馬鹿者があああーっ‼︎』
全身を大きく振りかぶり、クチバシによる渾身の一撃を放つ必殺技、《ウルズインパクト》が、ノアの側頭部に炸裂した。
「ぐはああああっ‼︎」
そしてノアは、ギルドを追い出された。
戦国無双クロニクルとは関係ございません。




